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会社で、ふと手すきになった際に、
「──ねぇ、さやちゃん、新しい香水を作ってみない?」
菜子さんからそう声をかけられて、にわかに色めき立つ気持ちを隠し切れずに、
「えっ、いいんですか⁉」
と、とっさに問い返した。
「いいも何も、あなたの企画した猫の香水──『陽だまりの猫』は、大ヒットだったじゃない。今は主力商品にもなっているし、ぜひまたその企画力を活かしてもらえたらって」
「そんな……うれしすぎます!」
私のお母さんと共に”KATZE”を立ち上げた、調香師のプロフェッサーでもある菜子さんに、自身を認めてもらえて、まるで亡くなった母にも褒められているような気がした。
「社長の方にはもう話を通してあるから、さやちゃんが自由に作ってくれていいから」
「はい!」と、感無量で答えて、「全力で頑張りますね!」と、拳をぐっと握り締める。
「気負いすぎないで、頑張ってくれればいいのよ」
菜子さんが笑顔を向けて、私の肩をぽんと叩いた。
「あまり急がなくてもいいのだけれど、新しい香水の案は、何かあるかしら?」
菜子さんから尋ねられて、「そう、ですね……」と、しばし考え込む。
頬杖をついて頭を巡らせていると、ピコンと閃いたことがあった。
「一つ、作ってみたいものがあって……。ブランド名も、今思いついたんですが……」
「まぁ、もうブランド名まで?」
驚いた様子の菜子さんに、
「男性向けのトワレで、『オリエンタル・プリンス』と──」
とっさの閃きを伝えた。
「あらそれって……やっぱりモデルさんがいるわよね」
ふふっと笑われて、「はい……」と、はにかんで肯定をした。
以前、貴仁さんにオリジナルの香水を作ったことを思い出して、メンズトワレを精製してみたくなった。
「いいわね、あの彼のイメージなら、とても素敵な香りになりそうだもの。私も楽しみにしてるわね」
発破をかけられて俄然やる気が湧いてくるようで、もう一度「ハイ!」と、勢いづいて返事をした。