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部屋に帰ったとき、すみれは黙って私を抱きしめた。
そのまま、何も言わずにしばらく固まっていた。
「……帰ってきた」
「当たり前でしょ」
「ほんとに、怖かった」
すみれの手が震えていた。
呼吸も浅く、目元は赤い。
「じゃあもう、外行かないで。
食べなくても、死なないなら、それでいいから」
「……死ぬよ」
「でも、いなくなられるよりマシ」
それは、冗談なんかじゃなかった。
すみれにとっての“生きる”は、
私といることだった。
それ以外のすべては、どうでもいいことになっていた。
私も同じだった。