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「コレ、いいヤツだからあげるって、京香からもらったコンドームを、隼人君に渡したことあるよね、隼人君?」
「え?あ、なんか甘い匂いのやつ?キャンディみたいなラッピングの、アレ?」
佐々木夫婦はお互いの顔を見て、何やらわかったようだ。
「だから……きっと…ごめんなさい……隼人くん」
「いいよ、ちゃんと準備してなかった俺も悪いんだし。俺、舞香と結婚できたことは後悔してないし、子どもが生まれることも楽しみだよ」
まるで子どもをあやすように、舞花の頭をぽんぽんと撫でる佐々木は、私の予想以上に舞花を思っていることがわかる。
_____隙あらば女遊びでもするんじゃないか?
なんて危惧していたけど、それは私の思い過ごしだったのかもしれない。
「なんだ、二人にとってはこんなことどうでもいいことなんだね。これ、マジで京香ちゃん?二人の結婚式にも来てたし、あ、グループLINEもあるでしょ?」
結婚式の日に、みんなでやり取りするのに便利だからとグループ登録したLINE。
結局、結婚式の写真を載せたくらいで誰も特になにもコメントしてないけれど。
舞花と仲がいい友達なんだと認識してたんだけど、違うのだろうか。
「舞花ちゃんの仲がいい友達だと思ってんだけど、違うの?結婚式にも招待してたんだし」
「仲良し……ということでもないかな。なんかいつも私にくっついてきてる感じ。結婚式も、別な友達を招待したら絶対行きたいって京香から言ってきたの。他の子に言われたんだけど、京香は結婚式の参加者にいい男がいないか探しに参加してるんだよって」
「えっ!男を物色してたってことなの?舞花ちゃんたちの結婚式なのに?」
「……そうらしいです。でも結婚式も二次会でも何もなかったから、ほっとしてたんだけど」
舞花の話を聞きながら、京香かもしれないSNSをスクロールして見ていく。
写真は舞花のアカウントのものを勝手に使ってるようだけど、つけてあるコメントに棘がある。
誕生日にパパに買ってもらったバッグの写真に、舞花は『パパありがとう、大事にするね』とのコメントなのに、京香らしいアカウントのコメントには『もっと上のランクのやつが欲しかったんだけどな。飽きたら誰かにあげるから欲しい人手をあげて』と書いてある。
欲しいというコメントに対しては『あんたじゃ買えないもんね?アパレルじゃ給料少ないし』なんて返事まで。
_____舞花のことが羨ましくて妬んでこんなことをやってるのかも?
よくある“女が女を妬む”というやつか。
「この京香ちゃんって、舞花ちゃんのことがうらやましくて妬んでこんなことやってるのかもね。でも、コンドームの話はまた別だと思うんだけど。どうする?確認してみる?」
「どうすれば……、もう直接訊いたほうがいいですよね。杏奈さんたちも聞いていてください」
舞花はスピーカーにして、京香に電話をかける。
「そうね、ちゃんと答えるか、それはわからないけど。私たちは声を出さないようにしていましょ」
「うん」
「……あ、あー、そうだな」
雅史の目線が泳ぎまくってる。
_____もしかして、京香から直接この裏垢のことを聞いたってこと?それとも?
「どうしたの?」
あまりにも挙動不審なので、声をかけたら慌てて立ち上がった雅史。
「ご、ごめん、腹の調子がちょっと。トイレ!」
「もう、何でこんな時に!」
急いでトイレに向かう雅史が、ポケットからスマホを取り出しているのが見えた。
_____京香に不倫したことを口止めでもするのだろうか?
私のスマホには、京香から送られてきたあの写真が保存してある。
あれだけでは酔ってふざけてキスしたことしかわからないけれど、雅史の行動を見ていると関係を持ったのは明らかだ。
『……もしもし?』
「あ、京香?今いい?」
『何の用事?せっかくの休みだから昼寝してたんだけど?』
「ちょっと訊きたいことがあって。ねぇ、身に覚えのない私の裏垢があること、京香は知ってる?」
『えっ!知らないけど、そんなのやってるの?』
舞花が私たちを見る。
「知らないならいいんだ。ちょっとね、酷い内容だから発信者を特定してもらおうと思ってるの。京香は心当たりないかな?」
『い、いや……ないよ。でも犯罪にもなってないなら調べようがないんじゃない?』
「普通はね。でも、そこはパパに頼んでやってもらうつもり。弁護士にも警察関係にもお友達はたくさんいるから。誰かわかったら損害賠償請求するつもりなの」
『そうなんだ、みつかるといいね』
「ありがと。京香も何かわかったら教えてくれる?」
『うん、もちろん!だって大事な友達のためだもん。じゃ』
そこで電話は切れた。
舞花はさっきのアカウントの写真を撮れるだけ撮っていた。
「あっ!」
舞花の指が止まった。
「どうしたの?」
「やっぱり京香だったみたい、ほら」
そう言われてスマホを見たら、裏垢らしいアカウントがたった今、削除されていた。