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「零番」「あら。もう来られたのですか早いですね」
「別に午後でも良かったんだけどすぐ夜になっちゃうからさ」
などと適当に言い訳をして零の元へ向かう。一方の零は今日、花子に立花家に三女がいることを話そうとしていた。これからのことを考えた時にその方が良いと考えたからだ。
「そうですか。昨日の話の続き…と参りたいところですが、今回は私の、立花家についてお話させて頂きたいのですが」
「んー……ま、いいよ。零番のことだから、何か考えがあってのことだろ?」
話のわかる人で良かったと思いながら人魂に自分の境界の奥まで連れて行く。
「さ、おかけ下さい。長話になりますので」
二つの椅子。まるで面接のような雰囲気になってしまったが、長話だとかと言っていたためしょうがないことだろう。
────────────
「────立花家というのは由緒正しき祓い屋の一つであり、実力は高いものでした。…私達が生前の頃は極たまに源家と怪異を祓いに行くこともあったり…特に、源輝なんかは姉と任務に出ることが多くありまして…顔が割れてる私達は怪異になっていると悟られないために色々工夫していたんですが……」
ここまで語って、苦虫を噛み潰したような顔をしながらも続きを話した。
「…どうも輝の弟、光に勘づかれましてね。記憶は一応消したはずなんですがどうだか…」
あー…あの時土籠に会いに行かなければ良かったーなどど反省している。
「……っと、話を戻しましょう。私達の妹。三女の立花煌神。母を含め私達が死ぬ前に産んだ子です。まだメイド役である侍妾がいるので生活は大丈夫なようですが」
「その三女ってさ、この学園にいたりする?」
「ええ。バッチリ。なんなら、あのお嬢様と同じクラスですよ?」
ピシッと固まる音がしたが気にしないようにした。花子お得意のポーカーフェイスもさすがに出来ないようで。
「…今日の放課後あたりにでも貴方を祓いに来るんじゃないんですかね?まあ、知りませんけど」
ちなみに性格は、私光神と姉影神を足して二で割ったような感じです。と付け足される。
「ああ……そう」
うげーマジかー…と思ってる花子の心の中を読んだのか、零はこう続けた。
「ちなみに。姉の私が言うのもなんですが、…かなり強いですよ。父に鍛えられたというのももちろん、才能も開花し始めたようなので、油断はしない方がいいと思います」
「大丈夫さ。さすがにそんなヤワじゃない」
ニヤリと、不敵な笑みをひとつ。怯えるといったことはなく逆に楽しみな気配を感じた。ま、確かにそうですよね…と零は謎の納得をしてしまった。花子は七不思議の首魅。到底負けるとは思えない。
「……水杖代、扉を閉じて、彼岸へ移動して」
急な展開に追いつくのが少し遅れてしまったが、水杖代を呼んだということは何かあるという事で。
「どうした?零番」
「どうやら、姉が来たそうなので。こちらに入られると少々面倒な事になるので、一刻ほど彼岸で待っててもらいます」
「え、二時間も?まー…良いけどさ。……零番の境界なんだからあっち勝ち目ないと思うけど?」
「それもそうなんですが、どうにかして制御権を取ろうとしているものなので」
困った姉です。と優雅に紅茶を飲んでいる。こんな優雅でいいのか?と疑問が浮かぶがこの際無視する。
「それに、どうやらあのバカ強い姉は七番様を狙っているようなので」
「え俺?」
「はい。それに、貴方の弟であるつかさとやらにこの境界に入られたら殺されかねませんので」
サラッとグロテクスな事を言うが事実なのでしょうがないだろう。それに零は未来を見るのが得意だ。あるべき未来になかったであろう未来まで……生前の頃もこれを特技に怪異を祓っていた。怪異になった今でもその名残が残っているのか、そんなこともサラリと言えるのである。
「はは…確かに」
「まあ、そこら辺フラフラしといてください。ただ、扉の前には行かないでくださいね。何が起きるのか分からないので」
りょーかいーと言い、部屋からフッと消えた。
***
(……逃げられたわね)
影神は廊下の前に立ち、ステンドグラスの扉に手をかけたが消えた。これは光神が境界を一時的にどこかへ移転させた証拠だ。
「影神ーどお?」
「……逃げられたわ。どうやら私の気配に気付いたようね」
光神は未来を見ることが出来る。同時に勘が良い。どうしようかしらと考えているうちにつかさがこう言った。
「んー……彼岸にあるみたいだよ?行ってみる?」
「は、貴方なに「よーし、行こう!」
ちょっと、私まだ同意してない…という呟きは見事にスルーされ、溜息をつきながらも彼岸へ移動した。そこは運良く零の境界の中だった。
(ここ、光神の…)
「はあ……今日はやけに運が悪いわ」
漆黒の目を閉じ、煩わしそうにそう言ったのだった。
────────────
一刻という微妙な時間を待つ間、学園の見張りをしていた。彼岸にいても境界であれば見張ることが出来るという便利さ。こういうものは花子にも負けないだろう。しかし、突然妙な気配を感じた。
「っ…!水杖代!」
すぐさま水杖代を呼び、戦闘態勢に入った。零お気に入りの侍妾達もそれになる。
零の叫ぶような声に気が付いた花子は元いた零の部屋に入った。
「どうした?……まさかとは思うけど」
「……そのまさかですよ」
白杖代。と外套を纏う。どうやら察したようだ。他の水杖代に境界の移動を頼んでいるがもう入られている可能性が高いため意味ない行動となってしまっている。
「光神。貴女毎度毎度爪が甘いのよ」
カツカツと、ヒールの音と共になんとも痛いところを突かれる。
「影神…そう言う貴女も、殺気というものを消したらどう?祓い任務の時も消すようにって言われてるでしょ?」
「……心外」
この場合の立花姉妹は何を言っても無駄だ。取り敢えず死闘してからでは無いと落ち着かない。すると、別の殺気を感じた。
「あー!あまねだー!」
そう言うやいなや早速花子に飛びつく。相変わらずの力の強さで毎回死にそうになるのは間違いじゃないはず。そして、花子とって、今、一番会いたくない人物でもあった。
「ちょ、つかさ、やめ、」
「えー?なんで?」
分かっているのか、いないのか…それは本人しか知らないこと。花子はつかさに会うと完全に戦闘意思を失う。多く語らずとも、生前時はめちゃくちゃだった。仕方ない。
もうこうなってしまえば戦闘は避けられない。取り敢えず相手との距離を取り零は花子にこう言った。
「……申し訳ないですが、腹括ってください。ここは私の境界ですので七番様の力も増幅しておきましたから」
「……言われなくても」
若干手は震えているが正気ではあるらしい。戦闘道具である包丁を構え直した。
「さ。お話は終わったかしら」
「もう、終わってますけど。耳遠くなったのかしら」
「……デリカシー無さすぎ」
「言っておくけど。ここは私の境界。貴方達に勝ち目ないわよ」
水晶玉を左手にそう啖呵を切った。
「はいはい。判ってるわよ」
そう言うと同時に、手に水を纏い剣にする。そこから、床を氷漬けにする。
「久々の姉妹喧嘩ねー」
呑気にそんなことを言っているが、まあまあ…いや結構激しめの戦いだ。壊れるはずはないが境界壊れない?と心配になってしまうが。
「あまねー隙だらけだよー?どうしたのさー」
背後から平手打ちをかましたがギリギリで避けられる。相手がつかさというのもありなんとなく戦いづらくなってしまう。
「っぐ、」
「ねーもうちょっと遊ぼーよ」
また、背後から迫られ上手く躱せずに拘束された。
「……っ、白杖代!」
「あ!ちょっと!」
花子に気を取られていたつかさは白杖代に気付かすそのまま強制的に花子から距離を置かれた。ふと視界にはいった。そう、立花姉妹の戦闘が。
(うわ立花姉妹やべー…)
愉しそうに笑いながら戦っている。まるで狂気…と思っているがこの双子のことも人の事は言えないだろう。床を見てみれば氷。感じないはずの寒さも感じてきた。それほど愉快なのだろう。
「あ……」
「どうしたのよ」
突然の戦闘喪失に少々狼狽えた零だったが罠かもしれないと警戒する。しかし、その思いは虚しく。
「つかさ、貴方桜に呼ばれてなかった?」
と。皆がいっせいにつかさの方を見る。
「あ、そういえばそうだった!それじゃ今日は終わりー待ったね〜」
言うが早いつかさ。気付いた時にはもういなかった。
「ちょっと、影神…貴女、どういうこと」
「ふふっ。何も無いわよ?それじゃ私も仕事があるので。それじゃ。愉しかったわ、光神♡」
「うわ……」
引き気味の零を横目に境界を去った。
「……そろそろ此岸に戻りますか」
水杖代。と一言。どうやらかもめ学園に戻ったそうだ。気付けばもう午後。やはり時間は経つのは早いと再度思う。
「それじゃ、零番。俺は戻るよ」
「はーいお気を付けて…」
***
────時は放課後。
花子は屋上にて寝ていた。境界での戦いで知らずうちに疲れが溜まっていたのだろう。
「あ、いた!」
いつもの元気な声で目を覚ました。いつの間にか寝てたのか…とまだはっきりしない頭でそんなことを思っていた。
「屋上にいたのね!」
「あーうん、まあね……」
はぐらかしつつ話をしているとまた声が聞こえた。
「花子!それに先輩まで!」
少年──光も屋上に来たようだ。
他愛も無い話をしているうちに屋上の扉の開く音がした。二人はそれぞれの武器を構える。さすがに、人間だった時用に光は雷霆状を構える準備をしていた。
「……へえ……噂の怪異ってのは、貴方のことかしら?
──七不思議が七番目、トイレの花子さん」