前回の続きです
どうぞ
だがしかし、ぺいんとには、らっだぁと離れたい理由が、もう一つあった。
それは、【実は初恋の相手であるらっだぁへの恋心を、本人に知られることなく封印したかった】
からである。
ただの幼馴染、ただの友達――幼い頃は、ずっとそう思っていたけれど、
らっだぁが笑っている時の顔は本当にかっこよくて、らっだぁに会うたび惹かれずにいられなかった。
それに、いつもはからかってくるくせに、その実、優しい奴で――
だから、ぺいんとは、そんならっだぁに恋をした。けれど、その恋は突然、終わりを告げる。
高校一年の冬、偶然のタイミングで、らっだぁが友人にこう言われているのを聞いたのだ。
『なあ、あのぺいんとって子、何なん?お前にしちゃ、随分距離近いけど、弟みたいに思ってるから?
それとも、――」
最後のほうはあまり聞き取れ無かったがその言葉に、らっだぁが、「そう見る?」と答え、「見える見える」と笑った友人の声を聞いたぺいんとは、
気付かれないようその場を去った。弟なんて、周りの人間にそんな風に思われていたことがショックだった。
(確かに、男が男を好きなんて普通に考えて気持ち悪いよね…)
でも、そうか、学校一の美少女から告白されてもOKしないらっだぁが、ぺいんとと一緒にいるのは、
【意識していないから】だと考えれば、至極納得がいく。
しかも、その後のバレンタインで、らっだぁにチョコを渡そうとしたとある女子が、
「本命がいる」という理由で断られたというのだ。それは、落ち込んでいたぺいんとにとって、
さらに追い打ちをかける出来事だった。
らっだぁに本命――?そんなの、全然知らなかった。
確かめたくても勇気がもてず、時間ばかり過ぎる中、らっだぁが社長になることが決定し――
互いの距離が遠く離れてようやく、ぺいんとは、これで本当に諦められると、
安心と悲しみが残った
(なのに、情けないよね……)
らっだぁがいなくなって4年以上経った今でも、ぺいんとは、初恋を忘れられずにいた。
インターネットが普及した現在、どれだけ遠く離れても、今の彼を知ることができるし、
どんどん強く恰好良くなっていく姿を見る度、悔しいけれど、胸が高鳴った。
今や世界にその名を馳せる社長となった彼は、もう雲の上の人だ。幼馴染という関係だって、
そのうち消えてなくなるに違いない。
分かっているのに、忘れるためだと自分に言い聞かせて何度かチャンレンジした新しい恋へのステップは、いつも途中で踏み外し、彼女いない歴〇年をひたすら更新し続けている自分に、いっそらっだぁの幼馴染じゃなきゃ、こんなことにはならなかったのにと詮無い恨み言を呟く始末だった。
(向こうはもう、美女モデルの彼女とかいるかもしれないのにさ)
社長行きが恋の妨げとなったのか、バレンタインの時の本命とは、結局何もなく終わったようだが、
今はもう彼女がいてもおかしくも何ともないだろう。むしろ、いない方がおかしい。
自分が知らないだけで、絶対いるはず――
だんだんと家に近付く間にも、そんなことをずっと考えながら歩いていると、ふいに、
「よぉ」という声が降ってきた。ぺいんとが、驚いて顔を上げる。
「ぇ……ら、らっだぁ!?」
何で、ここに。目の前に立つ長身の男を、まじまじと見つめる。
「待って、嘘、ほんとにらっだぁ?何でここにいるの?」
「なんでそんなに驚いてんのwwww」
「そりゃ、驚くでしょw」
「いつここきたの?」
「2時間くらい前?」
って、ついさっきじゃん
「そうなんだ……でも、どうして今頃」
目の前のらっだぁは、いつもの、お金持ちとは思えない青ニット帽、
赤色の市松模様のマフラー、青の布地に黄色の裾や袖の上着を羽織っている。
思わず、誰かにバレて追いかけ回されないかと辺りを見回してしまうぺいんとだったが、
当の本人は、周囲のことなど、何も気にしていないようだった。
「久しぶりの休みだから。久しぶりにぺいんとの顔が見たくなって来た」
――家族と、ついでに自分のことも?
「元気そうだなw」
「あ、ぅ、うん……おかげ様で」
あまりに急すぎて頭が追い付かない。最後に会ったのは、いつだろう。
去年の……いや、もっと前か?すぐには思い出せない程度には、時間が経っているということだ。
「バイト帰りなんだろ?おばさんに聞いた」
「お母さんに?」
「ああ。バイト終わったなら、ヒマだよな。少し付き合って」
「どこ行くの」
暇って勝手に決めるなと思いつつも、足は自然とらっだぁに付いていく。
家の近所の道を並んで歩くなんて、高校の時以来かもしれない。
はい!!
ここで区切ります
まだまだ書きたいんですけど文字数がちょっとあれなんで💦
見てくださりありがとうございました!!