テラーノベル
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帰宅すると彼女は早速ご飯の準備に取り掛かっている 。「適当に待ってて〜」という声を耳に、部屋の中を見渡す。整った部屋に可愛らしい家具。無造作に置かれている洋服には、何故だか愛おしさまで感じられた。部屋中は彼女のふわふわとした雰囲気で埋め尽くされている。俺なんかが、この空間に居ていいのか…!?今まで見ていただけの彼女のちょっとした内面を知れて心が弾んだ。
彼女の料理中、俺はずっと居たたまれずにいた。だって一目惚れした女の子の家に入れて、その子が俺にご飯を作ってくれてるなんて……そんなの夢みたいだ。頭の中が好奇心でいっぱいになる反面、彼女のことをもっと知りたい、とも考えるようになっていた。
彼女が机に料理を並べると同時に俺たちは手を合わせた。もぐもぐと料理を咀嚼する彼女。そんなOFF状態の可愛い彼女を見ていると自然と口角が上がっていた。可愛い…。
(こんな姿俺が横で見ていいんすかね?でも彼女が俺に心を許してくれてるってことっすよね、)
勝手な解釈を1人で交わし、今は目の前の幸せを噛み締めようと思った。
「ふふっ…ついてるよ」
そのとき、彼女に頬に付いていた米粒を指先で拾い上げられた。彼女に夢中で思考を巡らせていたからか気が付けなかった。自分で気がつけなかった事に加え、彼女に軽く触れられた感触だけで徐々に体温が上がっていくのがわかる。
すると彼女が突然立ち上がり飲み物を入れに行ってくれた。俺…変じゃなかったよね、?先程の出来事を思い出し、両手で顔を覆ってしまう。心を落ち着かせるために一人で深呼吸をする。
キッチンの方へ目をやると彼女が冷蔵庫の前に立っている様子が目に映る。好奇心が勝ってしまった俺は彼女の足跡を辿った。
彼女の後ろ姿を見つけると、視界にとあるものが入った。
「…お酒!?○○好きなんすか?」
様々な酒感が冷蔵庫に並んでいる。俺、実は酒を飲む事が趣味なんだ。もしかして…好きな人と飲み交わせるのか…!?胸の中で期待を弾ませながら彼女を誘いかけた。
「いいよ。一緒に飲も!」
可愛い笑顔を浮かべた彼女は、両手に酒缶を抱えて机へと向かって行く。腰を下ろして、缶に手を伸ばす二人。カシュッとブルタブを開ける音が手元から広がった。
「「かんぱーーーい!!」」
お互いのドリンクの縁を軽く当てて、久々の酒を流し込んだ。
「お酒、よく飲むんすか?」
先程の大量の酒缶が気になった俺は彼女にそう問いかけた。しかし彼女はぎこちない様子で口ごもっていた。俺、変なこと聞いちゃったすかね…。少々胸騒ぎが起こって俺も目線を外してしまう。
「ご、ごめんね?ちょっと言いずらくて…笑」
「無理しないでくださいっすよ、?」
「ゆっくりでいいんで…」
彼女の無理した笑い方がどうしても許せなくて、何処か悔しくて。寄り添うように彼女の顔を覗き込む。
俺の気持ちに察しがついたのか、彼女も少しずつ何があったのか話してくれた。
「実はこの間ね…」
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