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核爆弾
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#創作
むノー
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## 第59話:『追撃の冷空』
荒野の赤茶けた大地は、北上を重ねるにつれて徐々にその色彩を失っていった。
黒ずんだ岩肌と枯れた低木がまばらに広がる寒冷地帯。移動母艦ゼストの外部センサーが示す外気象データは、刻一刻と気温が下がっていることを示している。
中央政府のもう一つの重要拠点――極北の要塞を目指し、ゼストは寒風が吹き荒ぶ荒野をひた進んでいた。要塞に到達するまでには、なお数日の懸航と幾多の危険が予想されていた。
一進一退の緊張感が漂う艦内の中で、中央食堂だけは暖かな照明と湯気に包まれ、束の間の憩いの場となっていた。
大型テーブルを囲んでいるのは、ゼストの主力パイロットたち――ゼロ、セレス、ジュード、そしてカイルの四人だ。
「……ふわぁぁ、なんか急に寒くなってこなかったか? 空調が壊れてんのかと思ったぜ」
ゼロは温かいスープの入ったクピを両手で包み込みながら、大袈裟に身震いしてみせた。首元にはガドルフ特製の新しい寒冷地用ネックウォーマーが巻かれている。
「バカ言わないでよ。北へ向かっているんだから当たり前でしょ」
セレスはホットティーのカップを優雅に傾けながら、呆れたように微笑んだ。
「ミラの言っていた『冷たい風』……ただの比喩かと思ってたけど、気候的にも本当に寒くなっていくなんてね」
「だが、油断は禁物だ」
ジュードは義手となった右手の指先を静かに擦り合わせ、重厚な声を響かせた。
「ヘリオスを失ったルカスが、このまま引き下がるとは到底思えない。ミラの予兆通りなら、奴は我々が北の要塞に到達する前に、持てる最高の戦力をぶつけてくるはずだ」
「ああ、そうだな」
カイルは愛機の整備記録データが映し出されたタブレットから視線を上げ、力強い眼差しで頷いた。
「僕のバスターヴァイスも、リンさんと一緒に砲撃管制システムの再調整を済ませてある。遠距離からの奇襲であっても、僕が真っ先に撃ち落としてみせるよ」
「へっ、頼もしいねぇカイル! でもよ、一番おいしいところを持っていくのは俺とウイングエックスだけどな!」
ゼロはニシシと生意気な笑みを浮かべ、胸を張った。
「あなたねぇ……少しは重傷から復帰したばかりの病み上がりだって自覚を持ちなさいよ」
セレスが肘でゼロの脇腹を小突き、食堂内に一瞬だけ和やかな空気が流れた。
だが、その平和な時間は突如として切り裂かれた。
『――全機緊急出撃! 敵機接近! 繰り返す、全機緊急出撃!』
艦内に響き渡る真っ赤な警報灯と、オペレーターの悲鳴に近いアナウンス。
同時に、食堂の空気すら一瞬で凍りつかせるような、凄まじい「圧力」が艦全体を揺らした。
「来たか……!」
ジュードが立ち上がる。四人の表情から冗談めかした空気は消え去り、一瞬にして戦士の顔へと変わった。
「寒気どころの騒ぎじゃねえな……ぞくぞくして来やがった!」
ゼロはスープを一気に飲み干すと、リニアシートへ向かって真っ先に走り出した。
ゼストの上部カタパルトデッキ。
ハッチが開かれた瞬間、猛烈な吹雪のような凍てつく寒風がカタパルト内に吹き込んできた。
だが、それ以上に恐ろしいのは、寒空の向こうから接近してくる一機の影だった。
『ルカス軍新鋭試作MS――ヴィルベルヴィンド!!』
圧倒的な出力を誇る大型パワージェネレーターを全身に増設し、極限まで機体性能を「身体強化(チューンナップ)」された殺戮兵器。機体から放たれる冷酷な威圧感が、大気を物理的に凍りつかせるかのように漂っている。
「野郎ども! ひとっ走り行って、あの氷のポンコツを揉んでやろうぜ!」
ゼロのウイングエックス・ディバイダーが、カタパルトから一番手に飛び出した。
続いて、セレスのヴィヴァーチェ、ジュードのシャドウエッジ、そしてカイルのバスターヴァイスが矢継ぎ早に荒野へと滑り出していく。
「バスターヴァイス、目標を捕捉! 牽制射撃を開始する!」
カイルの叫びと共に、バスターヴァイスの背部に懸架された大型ビームランチャーから高出力の光線が放たれた。
ドゴォォォンッ!
だが、ヴィルベルヴィンドは凄まじい機動力で空間をスライドし、カイルの正確な狙撃を紙一重で回避。そのまま異常な加速速度でウイングエックスへと肉薄してきた。
「速え……!? だが、読めてんだよッ!」
ゼロはハモニカ砲を前面に構え、迎撃体制をとる。
極北の要塞へと続く極寒の大地で、ゼストの運命をかけた4機のガンダムと、執念の刺客ヴィルベルヴィンドによる激闘の火蓋が、いま切って落とされた。
**次回予告**
圧倒的な機動性と猛威を振るうヴィルベルヴィンドの前に、苦戦を強いられるゼスト隊!
カイルのバスターヴァイスが狙われたその時、ゼロはパンク寸前のウイングエックスで決死のカバーに入る!
凍てつく荒野に交錯する砲火と刃! 寒空を打ち破る勝利の鍵とは!?
次回、『氷原の狂刃』
**「どれだけ冷たい風が吹こうとも、俺たちの熱い魂は消せやしない!!」**
コメント
1件
わあ、第59話…食堂の温かい雰囲気から一転、あの警報と「圧力」でゾッとしました。ヴィルベルヴィンドの速さと冷たさ、カイルの牽制射撃もかっこよかったです。ゼロたちの息の合った掛け合い、寒空に響く戦闘、次回が気になって仕方ないです!🔥