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朝、 家を出るとき
気がつくと、元貴の家がある方向を見てしまっていた
迎えに行かないと決めたのは、俺なのに
胸の奥が、ちくっとした
学校までの道
いつもより、少し長く感じる
教室に入ると
元貴は、もう席に座っていた
目が合う
ほんの一瞬
すぐに、そらされた
……昨日と同じだ
気まずい
でも、嫌じゃない
隣の席に座る
声は、かけなかった
今は
無理に近づくのは、違う気がした
授業が始まる
黒板を見る
ノートを書く
それなのに
視界の端で、元貴が動くたび
そっちに意識が引っ張られる
ペンを落としたとき
同時に顔を上げて
また、目が合った
元貴は、逃げなかった
少しだけ
困ったみたいな顔で、こっちを見てた
それだけで
胸の奥が、あったかくなる
……なんでだよ
休み時間
クラスのやつらに囲まれる
「サッカー部入るの?」
「今日は遊べる?」
適当に答しながら
無意識に、教室の端を見る
元貴は
ひとりで、席に座っていた
前なら
それを見て
放っておけないって思ってた
でも今は
ちがう
誰かが
元貴のところに行かないか
そればっかり気になってた
昼休み
少し迷ってから
元貴の席に向かう
声は、かけない
ただ
教科書を置いて
隣に座る
元貴も
なにも言わなかった
けど、
少しだけ、こっちを気にしているようだった
それだけで
十分だった
午後の授業
ふとした拍子に
前の席のやつが、元貴に話しかけた
「それさ、どこ書くんだっけ?」
元貴は
少し戸惑いながら
答えていた
……なんだよ
胸の奥が
ぎゅっとする
別に
元貴は悪くない
俺だって
クラスのやつと話してる
それなのに
なんでこんな気分になるんだ
放課後
帰る準備をする
元貴は
立ち上がらない
先に帰るのか
それとも、待ってくれてるのか
わからない
結局
俺は、隣を歩いた
少しだけ歩く速さを合わせた
言葉は、ない
でも
たしかにそこにいる
曲がり角に着く
立ち止まる
元貴が
「また、明日」って言った
その一言で
胸の奥が、強く鳴った
家に帰ってからも
その感覚が消えない
ベッドに倒れ込んで
天井を見る
今日一日
元貴のこと
何回考えただろう
放っておけない
じゃない
同情
でもない
もし、 明日
元貴が
誰かと笑ってたら
その想像だけで
胸が、ざわつく
……ああ
これ
やばいやつだ
ようやく
気づいてしまった
俺は
元貴を
「特別」だって思ってる
でも、 まだ
言葉にするのは、怖い
だって、
相手は男だ
友達だ
だから、 せめて
明日も
隣にいられますように
この気持ちは、ばれませんように
そんなことを考えてる自分に
苦笑しながら
俺は
目を閉じた