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うぐいす
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眠れない夜
俺は一人車に乗り山へやって来た
どうせ眠らないなら花でも摘みに行こう
いつもそうやって一人ここにやって来る
山はいつも荒らされた跡がある
山だけじゃない
この街に俺達ギャングと半グレ
それ以外の誰かが出入りしている
どれだけ手練なのか、正体がわからない
街の人々は物騒になったこの街で怯えて過ごす様になっている
俺はとりあえず白花が咲く丘にやって来た
犯罪の勝率が上がって来たとはいえ、人数も増えたLycorisはまだ資金が潤っている訳ではない
ならば少しでも薬を売って資金を貯めていきたい
見渡す丘の上
何故だか今日はよく見える
ふと空を見上げた
そりゃそのはずだ
雲一つない夜空にはまん丸の満月が真上に出ていた
その時俺の鼻先を甘い香りが掠める
こんな山中で似つかわしくない
辺りに人が居るのかと警戒したが、そんな事はないみたいだ
だったらこの香りはどこから?
微風の中、匂いの出所を探す
大きな楠の根本
匂いを辿るとそこには白花の背丈の半分程のその花とは違う白い花
でも待てよ
この花‥‥自ら光ってる?
俺は自分の影ができる様にその花に覆い被さる
ほんの少しではあるが、やはりこの花は発光しているみたいだ
俺は手のひらでその花びらを包むと、俺が触れた動きで甘い香りがその場に充満し始める
「‥‥まさかこの花」
あの噂の花ではなかろうか?
だったらこれを頂いて帰ったら‥‥
そう思い、その花の茎に手を添えた時だった
急に息が苦しくなる
そして開いているはずの目が暗くなり始めた
俺の体はどうしてしまったのか‥‥
慌てて立ちあがろうとした時、ペタンと地面に座ってしまった
そしてすぐに頭が地面についた様な感覚がした
だがもうその感覚もわからない
そのまますぐに真っ暗な闇が俺を包むと意識がプツリと途絶えた
体が重くて息苦しい
目もまだ開かないし俺はどうなったんだ
近くで誰かの話し声が聞こえる
その声もまるで風呂場で聞く様な篭った声
「次はこの薬を入れてみよう。どこまで効くかは時間経過で見ていく」
「相当強くないと効かないみたいですけど‥‥」
「だから今実験してるだろ?次は10mg飲ませてみろ」
「でももっと飲ませた方が良いのでは‥‥死んでしまいませんか?」
「だから早く飲ませろ」
「はい‥‥」
俺は気付かない振りをしたまま、その薬を口に入れられた
そして口から薬が無くなった確認をされると、男達は部屋を出て行った
「‥‥っ」
まだ重い体を起こす
そして手に付いた点滴の管を思い切り自分の腕から引き抜いた
ここはどこだ?
床に足を着くと手すりに掴まった
辺りを見ても俺の服がない
白い病院服の様な物を身に纏ったまま俺は扉を開けた
暗い通路
寂れた建物はとても広く感じた
素足で歩く足の裏は砂利や廃材の破片で痛み始める
それでもここから逃げないと‥‥
俺は花を摘みに来ていただけだったはず
なのになんでこんな所に‥‥
通路を何度も曲がり、一つの扉が目に入った
小さな窓から光が漏れている
ここからなら逃げられるかも
その扉に近づいた時、遠くから人の声が聞こえた
俺が慌てて振り向こうとした時
誰かに目を塞がれてしまった
「‥‥っ誰だ⁈」
「‥‥‥‥」
声を出した途端に唇を塞がれる
宥める様に‥‥
そして後ろからガチャっと鍵が開く音が聞こえた瞬間、俺は建物の中から体を外へ放り出された
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