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いつまで泣いていたかわからない。気づいたらもう朝だった。でもまだ私の涙は収まらなくてお腹がすいていても何も食べられなくて。食えと怒られるたびにおばあちゃんを思い出してしまい、とっくに涙は枯れているのに、立ち直れずにいる。
この際自分から命を絶っておばあちゃんに会いに行こうと思ったが、今の私がおばあちゃんに会う資格なんてない。そう考えればそう考えるほどその現実に涙が止まらなくて。
ご飯が喉に通らないまま二日は経ってしまい二人に無理やり食べさせられそうになっても、戻しそうになって。やっぱり涙が止まらない。
でもお腹がすいて泣く気力もなくなってきている。
「 なぁ、これ食ってくれよ。 」
「 本当ですよ、貴方が食べてくれないと怒られるのは僕達なんですから。 」
「 あ…、あ。 」
いつもこんな調子だ。毎日こんな会話をして、毎日食べれなくて。おばあちゃんが恋しい、おばあちゃんのご飯が食べたい。
「 おばあちゃ…。 」
今日はとても眠かった。泣き疲れていたのかわからないが二日ぶりの深い眠りについた。夢の中で私はおばあちゃんに会った。
前と変わらず優しい笑顔で、でもどこか心配そうな瞳を私に向けて。でも私はおばあちゃんに合わせる顔もないから、下を向く。そんな時におばあちゃんが言った。
「 雨夜のせいじゃない。おばあちゃんは雨夜と一緒に居たくてわざとこの世に残ってたんだよ。だから雨夜が悩むことじゃないからね。 」
その言葉で私は飛び起きた。私はきっとこの言葉をずっと待っていたんだろう。私のせいじゃない、私のためだって言って欲しかった。私の名前を呼んで欲しかった…!
「 私は、雨夜…。月影雨夜(つきかげあまよ)何で忘れていたんだ。おばあちゃんが考えてくれたこの大好きだった名前を…。」
今日は静かに声を出さずに泣いた。翌日にはもしかしたら忘れているかもしれない。自分の名前もおばあちゃんの言葉も。でも今だけはおばあちゃんが戻ってきてくれたような気がして少し嬉しかった。
そんな幸せな夢を見た日から一週間が経った、言葉も名前もまだちゃんと覚えている。二人のおかげでご飯もお粥なら喉を通るようになってきた。衰弱していた頃の記憶はあんまりないけれど、今もぽっかり心に穴があいている。
まだ完璧に立ち直るには時間が必要だろう。だが確実に回復はしてきている。
「 回復してきたな。 」
「 えぇ、本当によかったです。 」
二人の会話が聞こえる。何を言っているのかはあまり聞こえないが、私にご飯を食べさせてくれているからありがたいとは思っている。でもおばあちゃんを退治したことに関してはやっぱり許せない。
でも、おばあちゃんと約束したから、現実から目を逸らさない。おばあちゃんが居なくなっても大丈夫だって胸張って言えるようにならないといけない。
「 あ、ありがとう。 」
「 別に。悪いのは俺らだし。 」
「 そうですよ、悪いとは思ってます。 」
そうか、人の感情がないのかと思っていたが別にそんなことはなかったんだな。そういえばこの二人の名前聞いてなかった気がするな。
「 なぁ、二人名前は? 」
「 俺は黒星凪(くろぼしなぎ)。 」
「 僕は宵闇光(よいやみこう)です。 」
凪と光か。ずっと双子か何かだと思っていたが、苗字が違うと言うことは双子とかではないみたいだな。じゃあお泊まりするほどの仲なんだな。
「 いいな…。 」
「 …?何がだよ。 」
しまった、声に出てしまっていた!さぁ、どう言い訳しようか。
「 いや、あ。これは別に 」
よし、言い訳は諦めよう。話を逸らせばきっと忘れてくれるだろう。とりあえず私は今目の前にあるご飯を平げなければならない。
それにしても、これ赤の他人からみたら私妹扱いされてるみたいな…。なんという屈辱!
「 なぁ、私自分でご飯食べる。 」
「 はぁ?なんだよ急に。 」
「 凪にやられるのが嫌だったんじゃないですか?ここは僕が…。 」
「 どっちも恥ずかしいからやめろ。 」
なぜか空気が少し冷たくなったような気がしたが気にしない。とりあえず私はこの恥ずかしい状況から逃げ出したい。
「 仕方ねぇな。 」
「 礼を言おう。 」
受け取ったはいいものの見られててご飯を食べるのに集中できない。でも見ないでと言うのも何か違う気がする。後ろを向いて食べよう。
な、なんだ?手が…。手が震える。あ、これ落ちる…。
「 危ないですね、この人…。 」
「 あ、すまない。本当。 」
光くんがキャッチしてくれなかったらまた恥をかくところだった。なんだ、意外と優しいところもあるんだな。
第二話 『 回復までの道のり 』