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月曜日の朝、美咲さんと駅の改札口で別れた。僕の周りを現実社会が流れていく。
スーツ姿のサラリーマンや学生が、大きな口を開けた魔物という社会に呑まれは消えていく。
僕だってその中のひとつだ。
美咲さんの背中を見ながら、僕は叫んでしまった。
彼女の真っ直ぐな瞳が心に突き刺さる。
僕は。
「ううん。なんでもない」
って笑ったけど内心は違っていた。
『またね』
と言って欲しかった。
美咲さんは微笑みながら。
「ばいばい」
と言ってくれた。
それで良かったんだと思う。
これ以上、卑怯者にはなりたくはなかったから。
僕はスーツの襟を正して深呼吸をした。
そして、いつもと同じ様に人混みに紛れては消えていった。
一欠片の想いをしまい込んで。
おしまい。