テラーノベル
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秋の気配が少しずつ色濃くなり始めた頃。
高度育成高等学校では、次の大きな行事――体育祭の準備が始まっていた。
教室のあちこちで、参加種目やクラスの作戦についての話し合いが行われている。
そんな中、ひなは自分の席で配られた資料を見つめていた。
「ひな、どの種目に出る予定?」
背後から身を乗り出してきたのは、軽井沢恵だった。
「えっと……まだ決めてなくて」
「ひなは小柄だから、障害物競走とか似合いそう!」
隣では桔梗ちゃんがにこにこと笑っている。
「確かにー!一位狙えちゃうも!応援してるよー!!」
「もう、二人とも……」
からかわれながらも、
ひなはくすぐったい気持ちで笑った。
昼休みになると、
平田洋介を中心に、
クラス全体で出場種目の最終確認が行われた。
以前なら、大勢の輪の中に入るだけで緊張していた。
けれど今は違う。
隣には恵ちゃんと桔梗ちゃんがいて、
少し離れた場所には、静かに資料を読んでいる 綾小路清隆 がいる。
その存在だけで、不思議と安心できた。
放課後。
恵ちゃんの提案で、
三人は けやきモール のカフェへ向かった。
テーブルいっぱいに並ぶスイーツを前に、
自然と話題は恋愛へと移っていく。
「で、最近綾小路とはどうなの?」
恵ちゃんの率直な質問に、
ひなの頬は一瞬で赤くなった。
「えっ……?」
「最近、図書室まで迎えに来てくれるんでしょ?」
桔梗ちゃんも楽しそうに身を乗り出す。
ひなは照れながら、
最近の出来事を少しずつ話し始めた。
「それって完全に特別扱いじゃん!」
恵ちゃんが目を輝かせる。
「綾小路ってわかりにくいけど、ひなのことすごく大事にしてるよ」
「うんうん。見てると伝わってくるよ〜」
二人の言葉に、
ひなの胸の奥がじんわりと温かくなった。
「……そうだといいな」
小さく呟くと、
恵ちゃんは優しく笑った。
「大丈夫。あいつの視線、ひなに向くとちょっとだけ柔らかくなるから」
その言葉に、
ひなの心臓はどきんと大きく跳ねた。
夕方。
寮に戻ると、
ロビーのソファに 綾小路清隆 が座っていた。
「綾小路くん?」
「待っていた」
たった一言なのに、
胸の奥が甘く震える。
二人で並んでエレベーターに乗る。
静かな密室で、
ひなは照れながら口を開いた。
「今日ね、恵ちゃんと桔梗ちゃんと……綾小路くんの話をしてたの」
「……そうか」
「二人とも、綾小路くんは私のことを特別に思ってるって言ってくれた」
沈黙。
そして、彼は静かにひなを見つめた。
「間違ってはない」
その一言に、
ひなの呼吸が止まりそうになる。
「ひなは、俺にとって特別だ」
いつもと変わらない落ち着いた声。
けれど、その言葉の重みは何よりも真っ直ぐだった。
「どれだけ友達が増えても、
どれだけお前の世界が広がっても――」
綾小路くんはそっとひなの手を取る。
「俺の隣にいることだけは、変わらないでいてほしい」
ひなの瞳に涙が滲んだ。
「……うん」
声にならないほど嬉しかった。
彼はひなの額にそっと触れるように、
優しく髪を撫でた。
「体育祭も、無理をするな」
「うん」
「もし緊張したら、俺を見ろ」
ひなは涙を浮かべたまま、ふわりと笑った。
「見たら、もっと緊張しちゃうかも」
その言葉に、
綾小路くんの口元にほんのわずかな笑みが浮かんだ。
放課後の作戦会議。
親友たちの応援。
そして、確かに伝えられた「特別」という言葉。
友情に背中を押されて、
恋は少しずつ確かな形になっていく。
ひなの青春は、
たくさんの優しさに包まれながら、
静かに、そして幸せに進んでいくのだった。
夜久瀬
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コメント
1件
うわー、この回めっちゃ良かった!体育祭の準備が背景にあるけど、本筋は完全に綾小路くんの「特別」宣言だよね…!「間違ってはない」からの「俺の隣にいることだけは変わらないでいてほしい」って、あの綾小路がそこまで言うとか胸熱すぎるし、髪撫でる仕草がもう尊すぎてやばい。恵ちゃんと桔梗ちゃんの親友ポジもいい味出してて、青春の甘さと温かさがぎゅっと詰まった話だったわ。続き気になる🔥