テラーノベル
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髪を乾かし終えて、ドライヤーをオフにする。
ドライヤーの音が止まると、壱月は急に私の手首を掴まえた。
「なに? 私、ドライヤー置きに……」
「そんなの後でいい。ここに来て」
そう言うと、壱月は自分の膝の間をポンポンと叩く。
「えっ!?」
「あー……眠いならいい」
「いや、そうじゃないけど……」
「じゃあ、来て」
言われるがまま、ドキドキと高鳴る心臓とともに壱月の膝の間に座る。
すると、後ろから壱月の両手が伸びてきた。
「これ、シートベルト、な」
壱月はそう言って、私のお腹の前でしっかりと腕を組んだ。
え? 急に!?
ちょっと待って!
このままでは、ドキドキし過ぎて失神してしまいそうだ。
甘い予感に、落ち着け落ち着けと必死に心臓に言い聞かせ、それから無理やりに笑顔を貼り付ける。
「なんのシートベルト?」
「愛音が逃げないようにするために、決まっているだろう」
その壱月の言葉に、頬、おでこ、耳までも、どんどんと熱を帯びていく。
このままじゃ本当に沸騰して死んじゃう~!
と思っていると、壱月はポスッと、自身の顎を私の頭に乗せた。
「痛っ!」
「さっき、『覚えてろよ』って言ったろう?」
……これは、もしや、つむじに?
あーーーー、ドキドキして損した!
はぁ、とため息をもらすと、頭上からケラケラ笑う声が聞こえた。
壱月が私の頭に顎を置いて、どのくらい経っただろう。
私はお腹に回された壱月の腕に自分の手を乗せ、気づけばだいぶ寛いでいた。
「壱月、これいつまでやるの?」
「んー、気が済むまで」
そう言う壱月は、なんだかかわいい。
「嫌?」
「嫌っていうか……そろそろつむじが痛いかも」
そう言うと、ケラケラ笑いながら「ごめん」と壱月は言った。
「でも、やめないんだ」
「やめてほしい?」
その聞き方は、ズルい。
「……ううん」
「だろう?」
静かなコテージに、暖炉の火がパチパチと弾ける音が響く。
とても温かな、幸せの音だ。
だって、今、私、すごく──
「幸せ」
「俺も」
「えっ!?」
心の声が漏れていたらしい。
思わず振り返ると、壱月は一瞬目をパチクリさせてから、ケラケラ笑った。
「……ごめん」
やってしまった。ムード、台無し。
けれど、そんな私の頭を、壱月は優しく撫でる。
「愛音らしいな」
「……そう?」
恥ずかしくて、言いながら前に向き直った。
お風呂を上がってからもうかなり時間が経ったはずなのに、頭から湯気が出そうだ。
「うん、好き」
その壱月の一言で、前言撤回。
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Elle
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これは湯気じゃ済まない。蒸発しちゃう!
押し黙った私のお腹に、壱月はもう一度手を回した。
すると、今度は温かななにかが首もとに触れた。
「ん……」
くすぐったくて思わず声をもらすと、壱月は私の肩口に顔を埋めた。
ドクンと、心臓が高鳴る。
「ずっと、愛音とこうやってくっつきたかった」
「え?」
「花斗いると、あんまりできないだろう?」
壱月は私の肩口に頭を乗せたまま、そう言う。
彼の髪がふわふわと揺れて、少しくすぐったい。だけど、そのくすぐったさも、全部愛しいと思ってしまう。
私は顔を真っ赤にしたまま、壱月を感じていた。
「愛音は?」
甘えるようなその声色に、心臓が爆発しそうになる。
「……私も、こうしたかった」
やっと絞り出した声は、思いの外小さく、震えていた。
きっと、この暴れすぎている心臓のせいだ。
壱月は「ははっ」と笑って、お腹に回していた腕を解き、私の頭を撫でる。
背後からこちらを覗き込んだ笑顔。それを好きだなぁ、と思うと、自然と頬が緩む。
けれど、そんなことを口にしたら、きっと今度こそ本当に心臓が持たない。
なんて考えていると、恋人ってこういうことなんだなぁと、ふと冷静になった。
幸せな時間を、ただなんとなく共有する。それが、一番恋人らしいことなのかもしれない。
いつもは花斗が一番で、いつでもどこでも花斗が優先だから、気づかなかった。
もしかして、壱月はこういう時間も過ごそうと計画してくれてたの?
そう思ったら、急に愛しさがあふれだした。
「壱月……ありがとう」
私はそう言いながら、衝動的に目の前の壱月の唇を塞いでいた。
自分の行動に驚きつつ、顔を伏せる。
「ごめん、急に」
「そういう奇想天外なところも、愛音らしくて好きだ」
そう言って、今度は壱月が私の唇を塞いだ。
今度は、長く長く、幸せを分かち合うように。
苦しくなって顔を離すと、壱月はへへっと照れ笑いを浮かべた。
「もっかい、したい」
「……いいよ」
そう言うと、今度は早急に口付けられた。
深く、深く、私の中を、全部探るように。
「んん……」
「愛音……好きだ」
キスの合間に、囁かれた愛の言葉が私の脳を蕩けさせる。
夢中になって壱月の首に両手を回すと、そのままふわんと体が浮いた。
「壱月……?」
「ずいぶん前だけど……あの時の続き、しないか?」
コメント
1件
え〜!もう!もう!心臓もたんわ!!🫣💕 「シートベルト」からの顎乗せ攻撃、ずるすぎるでしょ壱月くん!気が済むまでって…ずっとこの幸せ空間にいてくれ。愛音ちゃんの「幸せ」が漏れちゃうところとか、もう完全にこっちまで照れるわ。ラストの「あの時の続き」って!続きが気になりすぎて夜しか眠れん。尊さで蒸発しそう〜🔥