テラーノベル
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司会者の笑い声が、校内へ響く。
湊は奥歯を強く噛み締めた。
朧の鬼気は限界寸前だった。
このままでは、本当に校舎ごと吹き飛ばしかねない。
だが――。
「朧」
湊が呼ぶ。
低く。
静かに。
鬼の赤い瞳がこちらを向いた。
「娘を助けるのが先」
その言葉に、朧はゆっくり息を吐く。
怒りを押し殺している。
爪が掌へ食い込み、血が滴っていた。
司会者はそんな二人を見て、心底嬉しそうに笑った。
『いいですねぇ〜……!』
『でも、その顔がどこまで保てますかね?』
パチン、と指が鳴る。
瞬間。
校舎全体の電気が消えた。
真っ暗。
次の瞬間――。
ギィィィ……
廊下の奥から、何かを引きずる音が聞こえる。
湊の背筋が凍る。
赤い非常灯だけが点滅する中、“それ”は現れた。
人間だったもの。
だが身体は異常にねじ曲がり、四つん這いで天井を這っている。
首だけが真後ろへ曲がっていた。
『失敗作でーす♪』
司会者が笑う。
『鬼化途中で壊れちゃったんですよねぇ』
化け物は、ゆっくりこちらを向く。
真っ赤な目。
裂けた口。
そして――。
「……たす、け……て……」
女の声だった。
湊の顔が青ざめる。
まだ意識がある。
だが次の瞬間。
化け物が絶叫した。
「アアアアアアアッ!!!!」
天井を這いながら突っ込んでくる。
速い。
人間じゃない。
湊が動けずにいた瞬間――。
ドンッ!!!
朧が前へ出た。
拳一発。
化け物の頭が壁へ叩きつけられる。
校舎が揺れた。
だが化け物は死なない。
壊れた首を揺らしながら、笑っている。
「い……たい……い……たい……」
司会者は拍手した。
『素晴らしい!! これが鬼と人間の融合です!!』
湊の胃が捻れる。
狂ってる。
全部。
司会者はさらに笑顔を深めた。
『娘さんも、きっと素敵になりますよ♪』
その瞬間。
朧の理性が切れた。
鬼気が爆発する。
ドゴォォンッ!!!!
廊下の壁が吹き飛んだ。
朧の姿が消える。
次の瞬間には、司会者の目の前。
司会者の首を掴み、壁へ叩きつけていた。
「……貴様」
低い声。
鬼そのものの声だった。
司会者の顔から、初めて笑みが消える。
朧の爪が、ゆっくり首へ食い込む。
血が流れる。
湊は息を呑んだ。
殺せる。
今なら終わる。
だがその時――。
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