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うめぼっち

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#恋愛
水無月 京
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彼女が車から降り、エントランスの中に吸い込まれていく。数メートルの間に彼女の身に危険が起こるような地域ではないけれど、なんとなく華奢な背を見つめる。
何かあったら寝覚めが悪いから、という安っぽい理由とともに。
「いくか」
誰もいない車内に、ポツリとこぼして。再び車を滑らせて国道に戻る。
夜の国道はそこそこの交通量を保っているが、走っているのは物流トラックとタクシーが大半だ。
その流れに乗っていて、ふと車内のパネルを見れば22時半過ぎ。早い。
まっすぐ帰ることに幾分抵抗感を覚えた時、タイミングよく視界に入る緑色の看板。なんとなく魔が差してそちらにハンドルを切って進入していく。
久々の首都高。
緩やかに合流し、ギアを上げていく。
「なーにしてんの、俺」
無心で追い越し車線を飛ばしながら、脳裏に先ほどまでの記憶がフラッシュバックして、羞恥心で容易に窒息しそうになる。
なぜ言った。
なぜ…
命の安全のために、明日ファシリをする予定の会議の論点でも詰めるか、と脳内を切り替えようとしたのに。
「…」
柔らかい笑顔と、凛とした声と。
その姿が瞼から離れないのは。
「なんで?」
背後から猛スピードでスポーツカーが迫ってくる。ゆっくりと中央車線に戻り、しばらくそのまま進んでジャンクションを通過する。
「なんで、でしょうなあ」
自問自答しているその先に、実は答えが見えていたとしても。
「流石に、それはなくない?」
もう簡単に恋だ好きだに浮かれる年齢はとっくに過ぎている。久しぶりの少し浮いた場面に、自分の理性が揺らいでいるだけだろう…だとしたら本能は理性にあっさり打ち勝つことが証明されて情けないけれど。
「困っちゃうよねぇ」
これだから日照りのおじさんは。
狭い車内に大きくため息を吐き出せば、確実に二酸化炭素濃度が上昇して、またひとつ息苦しくなった気がする。
この車内では吸うまいと決めていたけれどそれも今日は無かったことにする。胸ポケットからタバコを取り出し、窓を開けて火をつける。
「そーゆーことに拘ってる暇はね、ないんですよおじさんは」
そんな歪みから足元を掬われることなんて、よくわかってる。
だから、今はこの話を考えるだけ無駄で。
このドライブの終着点が、この気の迷いに終止符を打つ時なのは間違いない。