テラーノベル
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「…んだよ、ここ」
さすがは廃墟と言ったところか。薄暗いし汚いし、今にも崩れてきそうなくらい朽ちている。
「はぁ…」
本当だったら映画でも見てゴロゴロしてたはずなのに、俺は今暗い森の中に佇む廃れた劇場に足を踏み入れようとしている。はぁ、いったい俺は何をやってるんだ。
吉岡「おぉい神谷!ボーッとしてると床抜けんぞ」
「うるせー」
仕事仲間の吉岡真吾。表向きは真面目だが、中身は怠け者だ。怖いものが苦手で、よく俺がホラー映画を見させているのだが、いつもいつも青ざめて震えている。
「お前は神経質すぎんだよ」
吉岡「っるせーよ!怖ぇものは怖ぇんだよ」
立ち止まれば聞こえるカタカタ音。なんでコイツはこんなに震えてんだよ。
「何が怖いんだか」
吉岡「ヒェッ!?!?」
「あぁ?うるっせぇな、なんだよ」
吉岡「いぃい今なんかひかって、」
「は?」
後ろで誰の声かもわからないような悲鳴が聞こえ、振り返ると、吉岡が目をこれでもかと開いてへたり込んでいた。
吉岡の見つめる部屋を見る。半開きの扉を半ば壊すようにこじ開け、部屋を見回す。
すると、奥に大きな鏡が佇んでいた。
ぞわり、
なんだ、この違和感は。
吉岡「えッ!?おまッ、行くのかよ!」
後ろで喚く吉岡を置いて進む進む。近づけば近づくほど、違和感が募る。
目の前に立ったとき、やっと違和感の正体に気づく。
この鏡、廃墟にあるくせにヒビひとつ見つからねぇ。
どこか醸し出される不思議な雰囲気に引き込まれ、鏡を覗き込む。
そこには、満員の観客席が広がっていた。
「鏡裏の観客」
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