阿部が出前を取り、食べていたら、中から調理する時に使ったであろう手袋の欠片が出てきた。半分くらい食べてしまった。
だが、いい気分じゃない。
悩んだが、お店に電話した。
店長が、「返金します。」と言って金額の確認をした。
しばらくすると、チャイムが鳴る。カメラで確認したら、どう見ても店長じゃなく、女子大生くらいの女の子。
オートロックを解除するか考える。
もう一度チャイムが鳴る。
返金に来ただけ。
待っていると、部屋のチャイムが鳴る。
女の子ー◯◯店から、返金に来ました。
阿部ーありがとう。
女の子ー店長から、すみませんでしたとのことです。
阿部ー今度から気をつけてねって。
女の子ーはい、すみませんでした。
この店は、阿部の好みがたくさんある。週に2〜3回は頼む。
ところが、あの日から注文した食事は、あの女の子が持ってくるようになった。
適度な距離を取るし、余計なことは言わないし。
阿部は気にしなくなった。
時々、「もう少し野菜摂った方が良いですよ」とか、「おすすめのチラシ入れてます」とか話す程度だ。
目黒ー野菜を勧めてくれるの、嬉しいね。
阿部ーめめの料理が1番だけど、そこも美味しいんだ。
目黒ー今度、阿部ちゃんの家に行って、そのお店のご飯食べたいね。
阿部ーいつでもいいよ〜。
機会は意外に早くやって来た。
目黒と2人でメニューから選んでいる。2人分を彼女が1人で持ってくるのだろうか?
チャイムが鳴って、カメラを見ると、もう1人女の子がいた。
2人でやってきた。
チャイムが鳴ってドアを開ける。
料理を受け取ろうとした。
女の子2ーうわっ!阿部ちゃん!
女の子1ーお客様に失礼だよ。
女の子2ー私、ファンなんです!
女の子1ーすみません。はい、金額はちょうどですね、ありがとうございました。ほら、帰るよ?
女の子2ー今度から私が来る!
女の子1ーだめ。迷惑かけるから。
女の子2ーあんただけいい思いして!
阿部ー俺も、今まで通りがいい。ファンになってくれて嬉しいけど、私生活はそっとしておいてくれる?
女の子2ーいいじゃん、食事持って来て顔見れるし。
女の子1ーそれがだめなの。とにかく来ちゃだめ。
女の子2ーふん!店長に頼むし!
2人は喧嘩しながら帰って行った。
次から誰が来るのだろう。
声は目黒にも聞こえていた。
ちょっと心配そうに料理を受け取る。
目黒ー大丈夫?
阿部ー店長に電話しとくよ。
目黒ー騒ぎにならなきゃいいけど。
阿部ーん〜。
幸い、店長は理解のある人で、お客様の迷惑になることは好まない。
今まで通りの女の子が料理を持ってくる。
阿部ーありがとうね、あの人はどうなった?
女の子1ー厨房担当になりました。
阿部ーじゃあ、配達はしないの?
女の子1ーはい、店長が許可しません。
阿部ー助かった。ありがとうって言ってくれる?
女の子1ーはい、分かりました。いつもご贔屓、ありがとうございます。
礼儀正しく彼女は帰って行った。
厨房担当になった彼女は、阿部からの注文が入ると、写真に撮り、自分のインスタに「阿部ちゃんの晩ご飯」とタイトルを付けてアップしている。
阿部もそのアカウントの写真を見た。確かに自分が食べた料理が映ってる。
だが、被害がないので、放っておいている。
目黒ーもうちょっと野菜食べなきゃ。
阿部ー配達の彼女にも言われる。
目黒ー阿部ちゃんが何が好きか分かるね。
阿部ー作ってくれる?
目黒ー作らせていただきます。
阿部ーふふふ。
厨房担当になった彼女が黙っているはずがない。
わざとビニールの欠片を入れた。
阿部が店に電話する。
返金には、いつもの彼女が来る。深く頭を下げて謝罪してくれる。
そういうことが2〜3回続いて、流石に阿部もキツく注意した。
いつもの彼女が来て、厨房担当になった彼女は辞めさせられたと言う。阿部は、ちょっと申し訳ない気持ちだったけど、配達の彼女が言う。
女の子1ー相手が誰でも、やっていいことと悪いことがあります。阿部さんは気にしないでください。
阿部ーあなた、しっかりしてるね。
女の子1ーお金もらって仕事しているんです。当たり前です。
阿部ーこれからも、よろしくお願いします。
女の子1ーこちらこそよろしくお願いします。失礼します。
阿部はソファに座っている目黒に抱きついた。
目黒が優しくキスをする。
阿部ーあの子いい子でしょ?
目黒ーいい出会いがあったね。
阿部ー真面目ないい子だね。
目黒ー皆んなああいう風に、きちんと距離を取ってくれると嬉しいね。
阿部ー美味しいし、あの子は礼儀正しいし、あの店のファンになった。
目黒ー俺の晩ご飯も食べてね。
阿部ーもちろん!
目黒の晩ご飯を食べる機会は実際にはあまり取れない。
阿部はいつもの店の出前を取る。
礼儀正しい彼女とも、少し話をする。馴れ馴れしくしない彼女にも好感が持てる。
女の子1ーありがとうございました。
阿部ーおすすめ、美味しかったです。
女の子1ー私、メニューも店長と一緒に考えてるんです。阿部さんも楽しみにしてくださいね。
阿部ー頑張り屋だね、これからも、よろしく。
いい出会いがあり、美味しい料理があり、阿部は幸せだと思う。
目黒と2人で出前を取る時にはサービスで、ちょっとしたお惣菜が付いている。電話すると、お得意様だから、気にしないでくださいと言われる。
目黒ー嬉しいね。
阿部ー美味しい!
目黒ーお店に負けない!
阿部ー当たり前じゃない、めめが1番だから。
目黒ーじゃあ、もっと食べに来て?
阿部ー疲れてるのに、悪いし。
目黒ーお店に負けたくないの。
阿部ー子供みたいなこと言わない!
目黒が阿部を押し倒す。
阿部が「まだ食べさせて」と言う。
目黒がしぶしぶ阿部を解放する。
目黒ー早く食べてね。
阿部ーめめのエッチ。
目黒ー普通だと思うけど?
食事の後には、ゆっくりしたい阿部だが、目黒が押かかってくる。
阿部ーんっ・・まだ・・食べたばかり。
聞いてない。目黒は阿部の服を脱がしていく。
阿部も本気で抵抗しない。
阿部ーはぁ・・いい・・。
高みに高みに阿部を押し上げていく。可愛い声だけ響く部屋。
阿部ーもっと・・あぁ・・だめ・・。
激しく腰を振り昇り詰める阿部。
目黒は硬く抱きしめてキスをする。
目黒ーごちそうさま。
阿部ーばか。
目黒ー可愛いかった。
美味しい料理を食べ、阿部を食べ、目黒は上機嫌である。
阿部は目黒を軽く叩く。
気にしない目黒。可愛い阿部を抱きしめて笑っている。
完
コメント
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素敵な出会いですね🥰