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「同級生」
夏休みが終わり新学期に入った。
今日は2学期の始業式で、僕が学校に着くと 先に山内と岩田が席に着いていた。
「やばい、やばい!!」と山内が嘆いている。
「何してんの?」
僕が尋ねると代わりに岩田が答えてくれた。
「山内のやろうまだ課題終わってねぇらしいぜ。馬鹿だよなwww。」
「何だまたか。ゴールデンウィークもそうだったし。」と僕と岩田が山内に呆れて話していると、教室の前の扉が開いて担任が入って来た。
担任が入って来たのを認識した山内は顔色がみるみると真っ青になった。
「終わった。先生にめっちゃくちゃ怒られる未来しか見えない。」
課題の手を止め、希望を無くした山内は「助けて」と言わんばかりの表情でこちらを見てくる。
「そうだ、晴斗と一緒に先生に報告すれば良いじゃん。」
「何を言い出すかと思ったら。」と岩田が呆れた様子で言う。
「なぁ、一生お願いだからさ。頼むよ晴斗!! お前と行けば絶対怒られないからさ。」
正直言うと嫌だが友人の頼みなどで僕は快く受け入れる。
まぁ、僕が着いていこうとも変わんないと思うけど。
やっぱり僕の予想通り山内はこっぴどく怒られた。
何故か僕まで。
その後、体育館で始業式が行われた。
始業式を終えて、僕達が教室に戻ろうとしているところで一人の女子に声をかけられた。
「あの、晴斗くん。終礼の後中庭に来てくれる?」
僕にそう告げた彼女は長い髪を一つ結びにしているクラスの中でも明るいクラスメイトだった。
僕はなんとなく、彼女の表情から用件を察した。
「うん、良いよ。」
僕が了承の意を伝えると、彼女は「ありがとう」と一言だけ告げて、足早に教室に向かって歩いて行った。
「はぁ、また晴斗ばかり。」と山内が言う。
終礼を終えると、僕は荷物をまとめて中庭に向かった。
中庭に着くと彼女は先に来ていて僕が来たこと気づくと、恥ずかしそうに目を逸らす。
こんな暑いなら来るんじゃなかった。
「は、晴斗くん。来てくれてありがとう。」
「うん。」
「あのね。もう気づいてると思うけどさ。私、晴斗くんのことが好きなんだ。ずっと前から。覚えて無いと思うけど。」
「ううん、覚えてるよ。」
僕は彼女の勇気を尊重して、無駄なことを言わないようにする。
「そっか、良かった。」
彼女はゆっくりと深呼吸をする。
「だからさ、もしよかったらで良いんだけど、私と付き合わない?」
その場の空気が重くなるのが分かっていたので、あまり時間を掛け過ぎずに答える。
「ごめん。君とは付き合えない。」
彼女はしばらく沈黙し、下を向いたまま「そっか。」と一言だけ答えた。
「でも、僕なんかより良い人は沢山居るし、君ならそんな人とすぐに出会えると思うよ。」
これは自分の立場を守るための言葉じゃない、彼女が僕のことなんか忘れて次のスタートをきるための言葉だ。
彼女は「また明日ね。」と明るく振る舞うが上手く笑うことが出来ていなかった。
僕は彼女が居なくなったのを確認すると、荷物を持ち中庭を後にしようと歩き出す。
すると、聞き覚えのある声の聞き覚えのある言葉が前方から聞こえてくる。
「優しいね。」
少し茶色掛かったショートヘアに、大きな目、はっきりした顔付きで、またにっこりとこちらを見てくる。
「なんだ、佐藤さんか。」
「『なんだ。』って酷くない?」
彼女は小さな顔を一生懸命に膨らませる。
「そんなことより、何なのそれ。毎度毎度、僕のこと優しいって意味分かんないだけど。」
「そんなことって!!まぁ良いわ。私は君と違って大人だからね。それと、君は優しいよ。最後の言葉だってあの子のことを思って言ってたと思うし、まぁ女の子を泣かすのはどうかとは思うけど。」
「君が大人なのかは知らないけど、僕は優しくないよ。それに泣かしていない。」
これは僕の本音だ。
僕はちっとも優しくない実際、彼女を傷つけた。
「また、そうやって自分を低く見る所は良くないと思うよ。」
それから、彼女は饒舌に喋り続けた。
こうなると僕でも手をつけられない。
「じゃあ帰るね。」
「うっそ、早くない?まだ話終わって無いんだけど。」
「僕はもう君と話すことは無いよ。」
「そっか、じゃあ一緒に帰る?」
「嫌だよ。君と居ると目立つし。」
「良いじゃん。」
彼女はそれから引かなかった。
結局、僕は彼女にお気に入りの「大福くん」のぬいぐるみを奪われ、「水溜まりに落とすよ。」と軽く脅され、彼女の言う事を聞かなければならなくなった。
それから、引き続き彼女に例のぬいぐるみを人質にとられ、僕は仕方なく彼女の言うことを聞いた。
僕達二人は並んで校門を出た後、坂を下る。
「でさ、私の友達がさ~…って聞いてる?」
彼女が一方的に喋ってくる。
「お~い。晴斗く~ん。」
今日はとても疲れた。