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元貴いい、元貴じゃなきゃやだとかもう世界一可愛い我儘だわ…
🤦🏻♀️🤦🏻♀️🤦🏻♀️🤦🏻♀️
その日は朝から涼ちゃんが少し顔が赤くてぼおっとしていた。
ピアノを弾いているときはいつも通りの演奏だったけど、明らかにいつもより口数が少ない。
「涼ちゃん、今日体調悪い?」
「ううん、大丈夫。さぁ、続きも頑張ろう」
何回かそう聞いても大丈夫といい続ける涼ちゃんを気にしつつも無事今日の仕事を終える。
片付けていると若井の声とスタッフの小さい悲鳴が聞こえた。
「涼ちゃん?!どうしたの?!」
目をやると涼ちゃんが倒れかけて若井がなんとか受け止めて、けど耐えかねてしゃがみ込もうというところだった。
「涼ちゃん?ってあつ!これ熱ある!元貴どうしよ?!」
オロオロする若井のもとに駆けつけて涼ちゃんに触れると確かに熱い。
やっぱり熱あったのに我慢してたんだ···。
「だから体調悪いかって聞いたのに!なんで無理すんの!」
責める口調の俺に若井が怒る。
「元貴落ち着けって!それより早く病院!」
「···ごめん、ちょっとふらっとしただけ。病院は行って色々検査もしたよ、ただの熱だけで薬飲んだら下がってたんだもん···」
「だからって···!早く帰って休まなきゃ、車お願いしてくるから! 」
マネージャーにお願いしてすぐに送 ってもらうことにする。
けどふらつく涼ちゃんをひとりでは帰らせない。
「俺送っていくよ。帰ろう、涼ちゃん」
若井が、よいしょと涼ちゃんの腕を自分の肩に回して支えながら歩く。
車に着いて乗り込もうとするとき、涼ちゃんが俺の服の裾を掴んだ。
「元貴がいい···元貴じゃなきゃやだ···」
熱で苦しいのか目に涙を溜めてこちらを見ている。 若井が俺を見た。たぶん俺のこのあとの仕事を心配してるんだろう。
「···俺が連れて帰るよ。片付けとか頼む。後のことはなんとかするし」
「うん···わかった。あーあ、フラれちゃったな、じゃ涼ちゃんのことよろしく」
そういうと若井は残って見送ってくれた。何があったって涼ちゃんが一番大事だから、あとはなんとでも頑張れば大丈夫。隣で目を閉じて肩にもたれかかる涼ちゃんの頭をそっと撫でた。
部屋についてなんとか服を着替えさせて薬を飲ませて寝かせる。氷枕やゼリーなど必要そうなものをマネージャーにお願いして買ってきてもらい、あとの仕事の打ち合わせを簡単にして先に帰ってもらった。
「もとき···ごめんね···」
弱々しく喋る涼ちゃんの側に座る。
「···無理しちゃだめでしょ?身体が一番大事なんだから···」
「けどみんな忙しいのに。ねぇ、今日のピアノちゃんと弾けてた?」
「ばっちりだったよ、だめなら俺ちゃんと言うし···」
そう、ピアノを弾いてるときの涼ちゃんはいつも通りの技術で弾いていた。だから大丈夫を信じて気づけなかった。
「だからゆっくり休んで」
「···ごめんね、忙しいのに我儘言って···けどどうしても元貴が良かったの···ありがとう···」
そういうと涼ちゃんはスヤスヤと、眠りだした。薬が効いてきたのか少しだけ熱も下がったみたいだ。
涼ちゃん、不謹慎だけど俺、すごく嬉しかったよ。俺じゃなきゃ嫌だって言ってくれて、本当に嬉しかった。
まだ少し熱いおでこにキスをして、しばらく見守ってから仕事に戻ることにした。涼ちゃんの部屋の鍵を借りて、仕事を片付けたらすぐに帰ってくるからね、とメモを残して。