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月影の羅針盤 下
「…あれ?」
気がつくと、私はソファの上で眠っていた。
私、何してたんだろう?
何か、大切な物を忘れた感覚に陥る。
ふと、時計を見る。
ーー10時か。
あの人は、まだ帰ってこないの?
どうしてなの?
嫌いになっちゃったの?
その時、
ーープルルルル。
電話が鳴った。
誰からだろうか。
スマホの画面に表示されたのは、
「嘘…公正?」
長年会ってない、幼馴染だった。
「…はい。」
「あっ…愛?」
懐かしい声だ。
公正の声だ。
「…こ、公正。」
「愛、今、時間良い?」
「…うん。大丈夫。」
電話越しに会話を続ける。
「公正、どうしたの?」
「……愛。今から言うこと、ちゃんと聞ける?」
「…どういうこと?何があったの?」
「…お前の夫、浮気してる。」
ーーえ?
どういうこと?
「公正、何言ってるの?嘘…でしょ?」
そうだ、公正が嘘をついてるだけだ。
「本当なんだ。灯台で、女性と一緒にいるところ、見たんだ。」
灯台…って。
私たちの思い出の場所だ。
「嘘つかないで!」
「愛!!本当だ!」
「違う…!だって、あの人は…は、遥斗は…あの灯台で…!」
そうよ。遥斗は…。
「私のこと…幸せにするって、言ったのよ。」
「愛……。」
「あそこで、一緒に、海を眺めて…。そう言っの。」
私の人生で、1番嬉しかった瞬間。
「だから…嘘、でしょ?」
「愛……。本当、なんだ。」
嘘だ。嘘に決まってる。
でも、公正が、そこまで言うのなら…。
「…私も、その灯台に今から行く。嘘って、確かめる。」
そう言って、私は一方的に電話を切った。
靴を履いて、家を飛び出し、走って灯台へ向かった。
はぁ、はぁ、と息を切らしながら。
無我夢中で走り続けた。
どれくらい、時間がたったのだろうか?
私は、灯台へたどり着いた。
怖かった。
でも、遥斗は、そんなことしないって、この目で確かめなければ。
私は、深呼吸して、灯台を登った。
「遥斗…。」
1番上に登って、名前を呼んだときだった。
遥斗は、海を前に、私じゃない、女性と
ーー抱きしめ合っていた。
「は、ると?」
掠れた声で呼びかけると、2人はビクッと体を震わせ、こちらを向いた。
「愛……。」
遥斗が呟いた。
それから、はぁぁ、と溜息をついた。
「遥斗っ!どういうこと、なの?」
「見てわかるだろ。俺、愛のこと好きじゃないんだ。こいつ…、綾音のことが好きなんだ。」
そう、あっさりと告げたのだ。
「…え?」
「もう、好きじゃないって言ってんの。」
そう、遥斗は言って、私との婚約指輪を海へ投げ捨てた。
私が唖然としていると、
「…最低だな。」
そう、怒りに燃えた低い声がした。
振り返ると、
「こ…公正。」
公正がいた。
「最低だ、遥斗。」
「…公正か。」
「お前、愛を傷つけるなよ。お前が、大切にするって、言ったから、愛は、お前のこと信じたんだぞ?」
そう、公正は言った。
「あの時は、愛のこと好きだった。でも、もう愛には飽きたんだ。」
遥斗…。何で、そんなこと言うの?
「遥斗…。」
「お前っ!最低だな!愛のこと、飽きたら捨てるのかよ!愛は、おもちゃじゃないんだぞ!」
「俺にとってはおもちゃなんだよ。」
その言葉で、私は、自分が何をするべきか、分かった。
「公正…もういい。遥斗、私もあなたのこと、嫌いになった。」
そう、告げた。
遥斗は微笑んで、
「じゃあ、愛さようなら。」
と、だけ告げて、綾音さんと灯台を去っていった。
ーーどれくらい、私は立ちすくんでいたのか?
「愛。」
公正に名前を呼ばれて、我に帰った。
「…。ありがと。公正。助けてくれて。」
公正に礼を伝える。
「別に…。俺にとって、愛は大切で大好きな人だからな。…当たり前だ。」
「そう。…は?」
今、爆弾発言したよね?
驚く私をよそに、公正は微笑んで、
「愛、行くよ。」
と、手を引いた。
公正の手の温もりを感じながら、私は、公正なら…。と、思った。
この傷は癒えない。でも、公正と一緒なら…。いつか、また、前みたいに笑える日がくるかもしれない。
公正と、一緒にいたい。
ーーそう、強く思った。
その様子を、夢路は水晶玉から覗いていた。
「愛の形も、人それぞれ。」
帳が夢路の膝の上にのる。
「…依頼解決…かな?」
夢路は帳に問いかける。
「にゃあお。」
と、帳は鳴く。
それを夢路は肯定と受け取る。
「…。帳、次の依頼者、連れてきて。」
コメント
1件
やっと読んだよ〜〜!!😭💦 第8話、衝撃と切なさがすごすぎて胸がギュッてなった…。灯台で遥斗が指輪を海に投げるシーン、まじで「えっ…」って声出たよ。でも公正が現れて「愛はおもちゃじゃない」って言ってくれたところ、めっちゃグッときた…🔥✨ 愛が「公正なら…」って思える終わり方、新しい希望が見えた感じで好き。次の依頼も気になるし、続きが待ちきれないよ〜!🌸