「んーっ!!…はぁ」
あれから早くも五日が経った…過ぎた?
あの後、らっだぁ達の家であるこの洋館へ案内してもらい、部屋と服と色々な物を用意してもらった。
そこそこ馴染めてきたし、仲も良くなった。
そんな順調に妖世界を歩んでいる今日この頃。俺にはいくつか悩みがあった。
悩みと言っても、そう大した事じゃあない。
いつものように朝日で目を覚まし、ぼーっとする頭でリビングへ向かう。
朝早く起きると、それよりも早い時間に目を覚まして朝食の用意をしているレウ。
「みんなを起こして来てもらってもいい?」
「んー。ええでぇ…」
なんて返事をしてみんなを起こしに行くのが俺の朝の仕事となっていた。
まずらっだぁ、コンちゃんを起こし、最後に悩みのタネである緑色の部屋の扉をノックする。
「どりみー…入るで?」
シンとした部屋からは物音一つ聞こえない。
…ガチャリ
ベッドの上で猫のように丸まって眠る彼の体を、声をかけながらそっとゆする。
「どりみー、朝やで?起きてー…」
「ン”ン”ン”…」
そう。おわかりいただけただろうか…この男すごく寝覚めが悪い。
仕方なく抱き上げてリビングの椅子の上に座らせてもウンウン唸りながら寝る。
これは朝食が置けないからすごく困る。
昼頃になり、仕事でずっと部屋にいるコンちゃんに軽食を渡しに行く。
私に行く途中でどりみーにエンカウントしてしまうと、“つまみ食い”と称して軽食を食べられてしまう。
軽食を持って行かないとコンちゃんが空腹に気づかず仕事を進めてぶっ倒れるので、これもまたすごく困る。
これは一番の困り事。
俺は…どりみーに嫌われている。
目があってもプイッ。 話しかけてもプイッ。
「ぁ”あ”〜……」
ことごとく顔を背けられて、相手が妖だという事も忘れて危うく手が出そうになる。
はあ。端的に言えばストレス。
何が気に食わないんやろか…顔?いや、そうだとしても俺にどうしろと??
そんな風に一杯一杯の生活していると、普段との“違い”なんて気づかないもので。
「は?なんやコレ…羽と…光る輪っか??」
翌朝、背中から異物が生えて、頭の上に異物が浮いてた。
そういえば肩甲骨の付け根辺りがヘンだったよなぁ、とか。あー…ここ最近こめかみらへんずっと痛かったんだよなぁ、とか。
後々気づくことって誰にでもある訳で。
「だから、自分は悪くないです。とでも?」
コンちゃんにニコニコと黒い笑みを向けられて、ウッ…と言葉に詰まる。
「ここでのルールその12は?」
「身体に少しでも“異変”を感じたらすぐ運営の誰かに報告する事……デス 」
助けを求めてらっだぁを見れば、コンちゃんよりも恐ろしい暗黒の笑みを浮かべていた。
心臓がキュッと縮こまると同時に畳まれた羽もキュッと内側に縮こまる。
変なとこ空気読みやがってっ…この羽っ!!
レウの瞳は“うん、きょーさんが悪いね!ちゃんと叱られて反省しなさい!!”というレウの思いを雄弁に語っていた。
「スミマセンデシタ…」
“目は口ほどに物を言う”というのは真実だったようだ。
「はあ、いっそのこと妖になれば?」
「え?」
「だから。どうせはなっから“混じってる”訳だし、いっそのこと妖になっちゃえば?」
そういえば…ずっと気になってる。
「その“混じってる”って…なんのこと?」
「…妖ノ血ガ混ジッテルッテコト」
「は?…妖?俺に?何で?」
つか、妖って人間との間に子供産めんのか?
「さぁ…?とにかく親族の誰かが妖だった、ってことは確かだね」
「で?妖になる?」
いやいや、その前に。
「妖になるのに対してのメリットデメリットはないんか?」
「……」
いや、沈黙せんでくれる?
「…メリットデメリットに関しては俺達よりみどりのが詳しいんじゃない?」
らっだぁの言葉にはあ、と大きくため息を付くと、くるりと椅子を回して立ち上がった。
壁の隅から引っ張り出してきたホワイトボードにペンで文字を書いていく。
文字が書かれていくにつれ、自分の知らない事が次々と明らかになっていった。
どうも、チェシャで御座います。
妖になるメリットとデメリットとは!?
普通の妖とらっだぁ達との違いとは?
みどりくんがきょーさんに冷たい理由とは?
また次回。
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