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#6 静かな屋根の下で
wki side
同じ屋根の下で過ごすようになってから、もう一週間ほどが経った。
朝、俺が目を覚ますと、台所から聞こえてくる音に気づく。 包丁のリズム、味噌汁の香り。
眠たげにリビングに顔を出すと、大森さんがエプロン姿で振り返った。
「おはようございます、若井さん」
「……なんか、夢みたいだな」
「何がです?」
「 大森さんが俺んちで味噌汁作ってること」
思わず笑うと、彼も肩をすくめて笑った。
その笑顔が朝日よりまぶしくて、心の奥がじんわり温まる。
昼間、大森さんはバイトを探したり、面接に行ったりしている。 夜になると、彼は「セリーヌ」で当たり前のように俺を手伝うようになった。
不器用なくせに一生懸命で、その姿に俺は何度も笑みをこぼしてしまう。
気づけば、彼が隣にいることが自然になっていた。 皿を洗う姿も、コーヒー豆を挽く仕草も、全部。
「……こうして二人で店やってると、夫婦みたいですね」
彼がぼそっと言う。
その言葉に耳が熱くなる。 返事をする代わりに、そっとカウンターの下で彼の手を握った。
客が途絶え、店を閉め、帰宅する。
アパートのドアを閉めた瞬間、空気が少し変わる。
「……お疲れさま」
そう言って背中に抱きついてくる大森さん。
温もりが広がり、胸が高鳴る。
眼鏡を外すと、彼の顔がぼんやりと滲む。 でも、その曖昧な輪郭さえ愛おしい。
「若井さん、やっぱり眼鏡外した顔が好きです」
「……どうして?」
「無防備で、かわいいから」
唇が触れ合う。
最初は軽く、確かめるように。 けれどすぐに熱を帯びて、深く重なっていく。
ベッドに押し倒され、指先が頬から首筋、胸元へと滑る。 触れるたびに身体が熱を帯び、声が零れる。
彼の視線は真っ直ぐで、逃げられない。
「……溺れていいですよ、俺に」
囁く声が、甘く耳を震わせる。
その言葉のまま、俺は彼に溺れていく。夜が深まるほどに、互いの身体と心は溶け合い、ただ二人だけの世界になった。
目を覚ますと、隣に眠る彼の寝顔があった。
静かな寝息、温かな体温。
「……大森さん」
囁いても返事はなく、ただ無防備に眠り続けている。 その姿を見ながら、思った。
_もう一人じゃない。
これからは、この人と生きていく。
深夜の喫茶店「セリーヌ」には、今日も柔らかな灯りがともる。
二人で紡ぐ時間が、これからも続いていく。
短くてすまん!
コメント
4件
続きありがとうございます😭もう最高♡ もう二人は早く結婚しようね💙❤️
えやってるじゃん(? うはぁ…もう夫婦だろー!!!!😽😽 是非壁になりたい。壁になりたすぎて…🙄🙄