テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
生きててよかった!
生きててよかった!
1話 死にたい
ナレーション(高部):俺の名前は高部賢ニ。44歳•妻子持ちのごく普通のサラリーマンだ。
これだけ聞くと、幸せな家庭に見えるだろう。
はっきり言う。
死にたい。
え?なんでって?俺の1日を見ればわかるよ。
────
上司「だからぁぁあ、何度言ったらわかるの?学習していこうよお、高部くーーん??」
社員1「また上司が高部いじめてるよ…」
社員2「また結婚してるからって嫉妬していびってるの?可哀想…」
上司「大体お前はなぜ妻がいるんだ?俺よりブスで、仕事もできなくて─」
───
高部(何もしたくない。なんの気力も湧いてこない。湧くのは明日も仕事に行かなければならないという絶望感だけ。だからと言って家にも帰りたくない。もう…)
高部「ただい…」
高部妻「早くご飯作って。風呂掃除して、洗濯物畳んで。」
ナレーション:これが俺の妻。美人では無かったけど、可愛い顔立ちしてて、優しくて…なのに結婚した途端に我儘になって何もしてないのに太ったんだ。「お前の料理が悪い」って。お前家で食ってるの朝の焼いた食パンと晩飯だけだろうが。
高部妻「今日もあまり美味くないわね。私の方が上手く作れるわ。」
高部(ああ…昔の俺なら「お前料理一度も作ったことないだろ」って言い返してただろうなぁ…もうそんな胆力も無いなぁ…言い返したら叫んで皿投げてその皿が割れたことに怒り始めるし…はぁ…昔に戻りたい…)
────
高部「はあ…風呂掃除終わらせて、食器も洗った。あとは洗濯物を─」
そこにいたのはタオル姿の娘。
高部「あ、ごめ─」
娘「は?覗いてくんな。キモ。早く自分の部屋行って寝てろ。」
唯一の癒しであった娘の真美も、反抗期で俺に当たる始末。
これで分かったろ?俺が死にたいって思う理由。
家にも会社にも居場所が無い。
ただ感謝もしてくれない家族のために馬車馬のように働く毎日。
腰が痛い。
首が痛い。
痛風で膝が痛い。
ドライアイで目が乾く。
犬歯が一本欠けた。
最近涙が自然に溢れてくる。
そんな中働いてる。
でも誰も労ってくれない。
皆俺に鞭を振る。
一つの間違いを全員が笑う。
間違えていなくても怒られる。
俺はどうしたらいい?
喜びも楽しみも生き甲斐もない。
あるのはこの虚無感だけ。
いつも頭で”自殺”って言葉が渦巻いてる。
頭の奥が痛い。
呼吸すらしんどい。
目頭が熱い。
死にたいけど、そんな度胸も無い。
もういっそ誰か俺を殺してくれ。
─ん?これは前に先輩に買わされた宝くじ…抽選発表してるのか。
ダメ元で見てみるか…。確か財布に…ん?9X0829?俺の…9X0829…は?一等…15億円?
高部「…は?」
これは、虚無だった俺の人生で、俺が生きててよかったって思うための物語。