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#地雷系
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オフィスに入って行くと藤子が色んな書類の上にかがみこんでいた、小さな会社なので社長の豊と、役員数人が個室を持っている以外は大きなフロアで皆一緒に仕事をしていた
買収の噂が流れ出してからは、役員達は姿を消し出勤してこなくなった、噂では買収会社の役員のポストを与えられているということだ
なんて卑劣な奴らだ、兄を窮地へ追い込んでおきながら、自分達はまだ大企業へ乗り移って甘い汁を吸おうとしている
いつもへらへらとジェニに愛想を振っていた常務企画部長の佐竹も、ここ一週間ばかり姿を消している、あの笑顔の表面の陰にかなり質の悪いものが隠れている気がして、ジェニは何度も兄の豊に佐竹をクビにするように訴えて来た
今までもどうにも気の赦せない佐竹が、今回の買収の首謀者なのではとジェニは睨んでいた
「遅いわよ!ジェニ逃げ出したのかと思ったわ、さっき新しいボスが来たわよ!最上階の会議室に入って行ったの見たわ 」
ジェニは今日の藤子の淡いライラックと、クリーム色のツートンのワンピースをみて小さく吐息をついた、藤子はどんな時もしゃれていて素敵な自慢の同僚だ
以前、いつも余裕のある完璧ないで立ちの準備をするのに朝何時に起きるのかと聞いた所、出勤3時間前には起きて、エクササイズとシャワーをしてから、顔の手入れと身支度をするらしい
そんなの当たり前じゃないとでもいう藤子を見て、ジェニは自分には無理だとぐるりと目を回した
藤子の心配げな顔を無視して、ジェニは眠い眼をこすりながらデスクにドカッと座り、ノートPCを開いて起動させた
「逃げるわけないわ!ちょっと来るときに接触事後をしただけ」
「接触事故?まぁ!大丈夫だったの?」
藤子が心配そうな顔をしてテイクアウトのコーヒーを、ジェニの前に置いた、オフィスのコーヒーはまずくて飲まないという藤子のお勧めのコーヒーショップのモノだ
ちなみにサイズはベンティ、豆はカルフォルニアローストのブレンドで、ミルクじゃなくソイラテのバニラクリーム添えらしいが、ジェニにしたら、味の何が違うのかさっぱりわからなかった、コーヒーはコーヒーだ
「会議まであと30分しかないわ!もっと早く来るはずだったのに!」
ジェニは慌ててノートPCを立ち上げ、レーザーポインターを持って自分の話す所と、ページをスライドするタイミングを合わせる最終チェックに入っている
「大丈夫!落ち着いて!」
藤子がどこからともなく太巻きのヘアアイロンを取り出し、ジェニの髪をセットし出した、相変わらず藤子の髪は今日もバッチリ決まっている、綺麗にジェルネイルされた指で、器用にジェニの髪をヘアアイロンに挟んで巻いて行く
「題して「勝利の女神ヘア」よ!きっと上手く行くわよ!期待しているわ、あなたがこの社員の運命を握ってるなんてそうとうなプレッシャーだと思う、同情するわ、私なら無理!でも大げさに考えないでね、リラックスして「メビウスホールディングス」の「松下竜馬」ときたら会社をつぶすことが好きで、とても恐ろしくて、社員の首を切ることを趣味としてるクビ切り屋よ!とんだ企業に目を付けられたものね 」
「藤子!」
「きっとプレゼンでも突っ込んでくるはず、あなたのプレゼン内容によっては、私達全員今日中に荷物をまとめなきゃいけなくなるかも、そうなったら職業安定所に直行ね、私にも養わないといけない家族がいるのよ、猫二匹の餌代もバカにならないわ、それにあの子達の美容院のカット代も値上げしたのよ、でもそうならないように祈ってるわ、なんたってあの松下竜馬は噂では薄情で無慈悲で、融通が利かなくて、権力欲が強くてがめつい男で― 」
「ふ~じこ!それ以上言わないでくれる?あなたのせいで緊張がピークに達したわ」
スルスルとジェニの髪を巻いて藤子がきょとんっ?として顔を斜めにして言う
「あら!ごめんなさい 」
ジェニは髪を藤子の好きにさせてメールの返信を次から次へと高速タイピングで打つ
今朝だけでもうメールが80件だ、いったい皆いつ寝ているんだろう、画面をスクロールしながら今日の予定表に予定を書き込む、どんどん予定表が真っ黒に埋め込まれて行く
「鳳凰堂が金曜日の打ち合わせの時間を夜に変更してほしいと言ってきたわ、行ける?なんなら私が行きましょうか?」
「あそこの社長はあなたでは無理よ!足元を見てくるから、あのエロ爺いでも敵には回せないわ、大丈夫!私が行くわ、彼の好みは知り尽くしてる」
「分かったわ、新幹線のチケットの手配をしておくわ」
「そんなの鈴木君で行くわよ、経費が高くつくわ、前日の夜に出れば大丈夫 」
藤子が心配そうに言う
「でも、それじゃ疲れない?」
「大丈夫!車移動は疲れたら寝むれるのが醍醐味よ、それと例の「ファンタスティック色白」のプロモーションの件は進んでる?」
ジェニは書き上げたメールを一斉送信しながら藤子に尋ねた
藤子が机の引き出しからニンマリとして哺乳瓶の形のした日焼け止め乳液を出した、ラベルに「ファンタスティック色白」と書かれている
「まかせてよ!こんなに売れるとは思わなかったわ、限定数は全部完売よ、これから再販に向けて工場はフル稼働よ、今頃クライアントは小躍りしてるわ、きっと」
「今回はインフルエンサー達がとても良い仕事をしてくれたわ、それと真紀ちゃんがね 」
藤子がうっとりとため息をついて言う
「あれだけの切り取り動画に、字幕をつけるのは大変だったと思うわ・・・彼女はシングルマザーなのに、本当によく頑張ってくれているわ 」
ジェニも真紀の仕事ぶりを思い出してほほ笑む
「本当に・・・この会社のメンバー誰一人として解雇なんかさせないんだから 」
「あの役員連中はどうなったの? もうすでにメビウスの代表の松下竜馬に取り入ってるのかしら、いまいましいっ!」
藤子が鼻をしかめる
「あなたのお兄さんを見捨ててなんて乗り換えるのがうまい事! 本当に信じられない! さんざんうちの会社の甘い汁を吸っていたのに」
ジェニが自分のデスクに飾っている 父と兄の写真をじっと見る、父が生きていた頃の会社の忘年会の時のだ、父も兄も酔っ払って真っ赤になって幸せそうにこっちを見て笑っている
「・・・それに関しては一番ダメなのは兄よ・・・・ 信じられる?父さんの大切な会社が乗っ取られるというのに雲隠れしたままよ」
「豊さんから連絡は?まだないの? 」
藤子がジェニに同情して聞く
「うん・・・でも大丈夫、このプレゼンテーションで企画部長の佐竹部長達はじめ、他の役員連中もいかに会社の経費を使いまくっていたかを全部暴露してやるから、絶対上手く行くはず!」
ジェニが、また通知が来たメールを開いて、藤子に尋ねた
「それよりこの暖房メーカーなんだけど、彼らが広告に使いたいっていうデザインが最悪なの、どうしたら説得できるかしら?」
藤子がジェニのグレーのジャケットを持って来た、ジェニが羽織る時にせっかく綺麗に仕上げた髪が崩れないように、後ろで持ち上げた
「真紀ちゃんに言って、何個かセンスのあるデザインをサンプルに持って行くといいわ、彼らはセンスというものを知らないだけだから、こちらが教えてあげれば乗ってくるはず、案外あなたって松下竜馬と気が合うかもね、彼も仕事の虫らしいわよ、あとお化粧も― 」
「もういいわよ、時間がないわ 」
「そのタイツよく似合っているわ」
会議用のスーツに着替えるジェニに、藤子がジェニのミニスカートから伸びている、グレーのラメ柄にハート模様の網タイツを指さした
「タイツの伸びがいまいちよ メモしておいて 」
「オッケー!」
「あっ!鈴木君に靴を忘れて来たわ! 取ってくる!」
「急いで!あと少しで会議が始まるわよ」
ジェニはエレベーターに向かって走り出し、茶色の瞳を怒りに燃え上がらせて言った
コメント
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第4話、めっちゃ面白かったわ!ジェニの奮闘っぷりに応援したくなるし、藤子のツンデレな気遣いと猫の餌代の話に笑わせてもらった。松下竜馬がどんなクソ野郎か気になりすぎる。プレゼン本番、絶対成功してほしい!