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電月ゆうあ💫
131
朝。
スマホの画面に表示された時刻は、午前七時十五分。
ロゼはいつものように、らいとへメッセージを送った。
「起きてる?」
既読はつかない。
珍しいな。
普段なら五分もしないうちに、
「起きてるよ!」
と返ってくる。
十分。
二十分。
三十分。
……返事がない。
「……。」
嫌な予感がした。
電話をかける。
プルル……
プルル……
何度目かのコールのあと、小さな声が聞こえた。
「……もしもし……。」
かすれていた。
いつもの元気ならいとの声じゃない。
「らいと?」
「……ロゼ……?」
「お前、その声。」
「ごめん……ちょっと……。」
途中で咳き込む。
ゴホッ……
ゴホッ……
ロゼはすぐに立ち上がった。
「熱ある?」
「分かんない……。」
「今行く。」
「え、でも。」
「十分。」
電話を切った。
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十分後。
インターホンを鳴らすと、ゆっくり扉が開く。
「……ロゼ。」
らいとの顔は真っ赤だった。
前髪は汗で額に張り付き、目も潤んでいる。
「……ひどい。」
ロゼは額へ手を当てた。
「熱い。」
「平気……。」
「平気なやつは立ってられない。」
ふらり。
らいとの体が揺れる。
ロゼは慌てて抱き支えた。
「危ない。」
「ご、ごめ……。」
「謝らない!。」
そのまま肩を貸してベッドまで連れて行く。
「寝てて。」
「うん……。」
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体温計。
39.2℃。
ロゼは思わず眉をひそめた。
「高すぎる。」
「そんなある……?」
「ある。」
「うそ……。」
「嘘つく理由ない。」
らいとは情けなく笑った。
「頭……痛い。」
「薬飲める?」
「たぶん……。」
ロゼは水を持ってきて、薬を渡す。
「ゆっくり。」
らいとは震える手で薬を飲んだ。
「えらい。」
ぽん、と頭を撫でられる。
「子どもじゃない……。」
「今日は病人。」
「……。」
少し嬉しかった。
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昼。
おかゆを作る。
らいとはほとんど食欲がない。
「いらない……。」
「一口。」
「食べれない。」
「一口だけ。」
「……。」
ロゼはスプーンですくう。
「はい。」
「恥ずかしい……。」
「熱ある時くらい甘えろ。」
「……。」
らいとは小さく口を開けた。
「……おいしい。」
「よかった。」
少しずつ。
少しずつ。
一杯のおかゆを時間をかけて食べた。
「全部食べた。」
「頑張ったな。」
また頭を撫でられる。
「……。」
らいとは照れ笑いを浮かべた。
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夕方。
薬が効いて少し眠くなる。
「ロゼ。」
「ん?」
「帰らないの?」
「帰る理由ある?」
「だって。」
「今日はいる。」
「迷惑じゃ……。」
「誰が。」
「……。」
「お前。」
ロゼは少し困ったように笑った。
「一人にできない。」
その言葉だけで十分だった。
らいとの目に涙が滲む。
「え。」
「なんで泣くの。」
「分かんない……。」
熱のせい。
そう思いたかった。
でも違う。
優しくされるたび、胸がいっぱいになる。
「ごめ……。」
「謝るなって。」
ロゼはティッシュで涙を拭く。
「泣いていい。」
その一言で、
「っ……。」
らいとはとうとう泣き出してしまった。
「怖かった……。」
「何が?」
「一人で……。」
「……。」
「朝起きたら苦しくて……。」
「うん。」
「誰もいなくて……。」
ロゼは何も言わなかった。
ただ静かに、
ぎゅっと抱きしめた。
「もう一人じゃない。」
「……。」
「俺がいる。」
らいとは震えながらロゼの服を掴む。
「……うん。」
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夜。
熱は38℃まで下がった。
「少し楽。」
「顔色もいい。」
「ロゼのおかげ。」
「薬のおかげ。」
「違う。」
「?」
「ロゼが来てくれたから。」
その一言に、
ロゼは少しだけ目を丸くした。
「……。」
「ありがとう。」
照れくさそうに笑うらいと。
ロゼはふっと息をついて、
「礼なんかいらない。」
「え?」
「心配するの、当たり前だから。」
その言葉が嬉しくて、
らいとはまた泣きそうになる。
「泣くな。」
「泣いてない……。」
「嘘。」
「……ちょっとだけ。」
二人で笑った。
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深夜。
らいとは眠っていた。
寝苦しそうに眉を寄せるたび、ロゼは濡れタオルを替え、水を飲ませ、布団を整えた。
「……。」
眠れなくてもいい。
このまま朝まで起きていてもいい。
ただ、らいとが苦しまなければ、それでいい。
眠るらいとの手が、無意識にロゼの袖を掴む。
「……行かないで。」
小さな寝言。
ロゼは優しく笑った。
「行かない。」
その手をそっと握り返す。
「朝までここにいる。」
らいとは安心したように微笑み、
再び静かな寝息を立て始めた。
ロゼはその寝顔を見つめながら、小さくつぶやく。
「……もっと頼れ。」
「元気な時も。」
窓の外では、夜明け前の静かな風が木々を揺らしていた。
二人の間には、言葉にしなくても伝わるぬくもり
があった。
──熱が下がる頃には、らいとの心も少しだけ軽くなっていた。
コメント
1件
読了しました〜っ!!🌙✨ このエピソード、ほんとに優しくて温かくて……心がぎゅっとなりました。 らいとが熱で弱ってるところにロゼが駆けつけて、看病しながら「一人にできない」って言うのがもう……。 特に「泣いていい」って言葉と、最後の「もっと頼れ」って台詞にやられました…。 元気な時は言えない本音が、熱のせいとか関係なく溢れちゃう感じ、すごくリアルで好きです。 二人の距離がじわじわ縮まってくのが伝わってきて、続きが気になります!! 素敵なお話をありがとうございます🖤