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碧瑠(みどる)&理雨
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最近100カノ読み始めました。
…1、2、10人目のヒロインがどタイプ過ぎんのよ(興奮)
九月に入ってから、急に朝晩が冷え込むようになった。夏の名残がまだ日中には居座っているのに、日が落ちた途端に空気が入れ替わる。そういう季節の変わり目に限って、体は正直に音を上げるものらしい。
ポートマフィアの準幹部ともあろう者が、風邪ごときで仕事を休むなんて。中原中也は自分でそう毒づきながら、朝から重たい頭を抱えて出勤した。だが喉の痛みと悪寒は思ったより頑固で、昼を待たずに限界が来た。
上司である尾崎紅葉に、体調不良で早退したい旨を伝える。事情を話すと、紅葉は珍しく渋い顔もせず、あっさりと頷いた。
「無理して倒れられる方が困る。今日はもう帰って寝ていろ」と言うのが要旨。
その言葉に甘えて、中也はふらつく足取りでマンションへ戻った。玄関で靴を脱ぐのもやっとで、着替えを済ませ、冷えピタを額に貼ってベッドに潜り込む。
布団の中は思ったより落ち着かなかった。ベッドサイドに置いてある、包帯をぐるぐる巻きにした黒猫のぬいぐるみを引き寄せて抱きしめる。太宰からもらったものだ。趣味が悪いと文句を言いながらも、結局手放せずにずっとそこに置いてある。
こういう時に限って眠れないのは、どういう理屈なのか。天井を見上げてぼんやりしていると、どうでもいいことばかり頭に浮かんでくる。
——皿、洗い忘れてた。
——そういえばここ数日雨続きで、洗濯物が溜まったままだ。
頭痛が脈打つようにひどくなって、思考がまとまらない。
「……あー、くそ」
誰に聞かせるでもなく、掠れた声で悪態をついた。
結局眠りにつけないまま、天井のわずかな凹みの数を無意味に数え始めて、二十個を過ぎたあたりでスマートフォンが鳴った。
薄暗い部屋の中でブルーライトに目を眇めながら画面を確認する。太宰だった。
『ドアの前いるから鍵開けれる?』
は、と間の抜けた声が漏れた。何を言っているのか一瞬理解できなかったが、もう一度メッセージを見返しても内容は変わらない。慌てて布団から這い出し、覚束ない足取りで玄関へ向かい、鍵を開ける。
そこには、ビニール袋を持った太宰が立っていた。
「やあ、中也。具合はどう?」
相変わらず軽薄で飄々とした態度で、見ているだけで少し腹が立つのに、同時にどこかほっとしてしまう。そういう男だった。
「お前、なんでここに……仕事は」
痛む喉を無理に張り上げて問い詰めると、太宰はへらりと笑って靴を脱いだ。
「妻が病気なので看病するって言っておいた」
「はぁ?」
冗談めかした口調のくせに、それ以上の説明をする気は毛頭ないらしい。「妻」という単語だけが耳の奥で反響して、中也は頭痛も忘れて顔を赤くした。誰が妻だ、と言い返そうとしたが、うまく声が出ない。
「っあ”、ぅ”、…っ」
太宰は勝手知ったる様子で家に上がり込むと、そのまま小柄な中也の体をひょいと抱き上げた。
「はーい、ベッド戻るよー」
「お、下ろせ! 自分で歩ける!」
抗議もむなしく、あっさりベッドまで運ばれて寝かされる。抵抗する元気も体力もなかったことが、なんだか悔しい。
床に落ちていた黒猫のぬいぐるみを拾い上げ、太宰がそれを差し出してくる。
「はい、落ちてたよ」
素直に受け取りながらも、中也の頭の中では警戒心がむくむくと膨らんでいた。——人の家に勝手に上がり込んで、一体何をする気だ。もし変なものでも仕込まれたら、今の自分では何もできない。もし妙な悪戯を仕掛けられても、今の自分では抵抗する体力がない。
そんな益体もないことを考えながら、ぬいぐるみを盾のように抱きしめて太宰を睨む。
当の太宰は気にする素振りも見せず、買ってきたらしいポカリスエットとゼリー飲料をナイトテーブルに並べる。
「お粥作ってくるね」
そう言い残して、慣れた足取りでキッチンへ消えていった。
しばらくすると、鍋を持った太宰が「お待たせー」と戻ってくる。差し出された器から立ち上る湯気を見て、思っていたより空腹だったことに気づいた。おそるおそる口に運ぶと、拍子抜けするほど普通に美味しい。
「……お前、こんなこともできたのか」
「傷つくなあ。これでも一応、一通りは仕込まれてるんだよ」
そんな軽口を叩きながらも、その後の甲斐甲斐しさは尋常ではなかった。額の冷えピタをこまめに替え、水を用意し、体温を確認し、薬を飲むタイミングまで気を配ってくる。自分を散々振り回されてきた男の、思いがけない一面だった。
さすがに「汗かいてるね。お風呂入る?」と冗談交じりにシャツの襟元へ手を伸ばされた時は、本気で焦って布団の中に逃げ込んだが。
「冗談キツいんだよ、お前は……」
「冗談半分、本気半分かな」
しれっと返されて、それ以上何も言えなくなる。付き合い始めてから、いや、それ以上に踏み込んだ関係になってからも、この男の距離の詰め方には未だに慣れない。慣れないまま、結局は受け入れてしまう自分がいるのも事実だったが。
夜が更けても、太宰はソファで適当に丸まりながらも、律儀に様子を見に来ては水を替えてくれた。うるさいくらいに世話を焼かれて、うっとうしいと思うのに、いつの間にか眠りに落ちていた。
翌朝、目を覚ますと嘘のように体が軽かった。熱も引き、頭痛もない。布団から起き上がって、放置していたキッチンの惨状を思い出し、青ざめる。
「皿、腐ってるかな……洗濯物もカビ生えてるだろうな……」
独り言のようにぼやきながらリビングへ出ると、キッチンはすっかり片付けられていた。シンクには一枚の皿も残っておらず、溜まっていたはずの洗濯物もきちんと畳まれてクローゼットの前に積まれている。
ソファでは太宰が寝息を立てていた。昨夜、看病の合間にこっそりこなしてくれたらしい。
その寝顔をしばらく見下ろしてから、中也はぽつりと呟いた。
「……今度、何か奢ってやらねぇとな」
素直に礼を言うのは癪だから、その分は飯代で返そう。そう決めて、中也はそっと毛布を持ってきて、太宰の肩にかけてやった。
コメント
9件
好きな展開×好きな書いてる人=神 全部してくれるだざさん凄すぎんか?? ちゅやはずっと看病されててほしい(((
原作でも、めちゃ元気な中也が体調不良!? しかも、風邪をひくなんて貴重な展開でした。 そして、当たり前のようにコ看病をする太宰さんが神すぎる!! 看病だけじゃなくて、家事も終わらせとく所が中也への想いが詰まった行動に感じました!! めちゃくちゃ贅沢かもですが、中太ver.書いてくれると嬉しいです
最近100カノ読み始めたんですね!私もあの作品好きです〜特に1人目・2人目・10人目、わかりますよその気持ち!(笑) そして本編、中也が風邪で弱ってるところ新鮮でした…いつも強気なのに「ぬいぐるみ抱きしめて寝てる」とか可愛すぎませんか?太宰の看病が妙に丁寧で、でも「冗談半分本気半分」って言いながらシャツに手を伸ばすとこ、反則級に甘かったです…最後に中也が毛布かけに行くシーンでじわっと来ました。素直じゃないけど、ちゃんと優しさ返せるところが好きです🥀🤍