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やがて孔明は決心した。
馬謖を処刑せよ、との命令を下した。
孔明は幾度も迷って、身を切られる思いであった。
獄中で馬謖は孔明に手紙を書いていた。
自分の慢心が招いた悲劇を、身を持って償う覚悟は出来ていた。
ただ、もっと長く孔明の傍で、孔明の為に働きたかった。
「明公は私を我が子のように思って下さり、私も明公を父のように思っておりました。
私の家族だけは、どうか罰せずにおいて下さいますように。
それが叶いますなら、何も心残りはございませぬ。
明公と過ごした日々、馬謖は幸せでございました。」
こう書かれた馬謖の手紙には、涙の跡があった。
五月の、若葉の芽吹き始めたある日、刑は執行された。
馬謖はその三十八年の短い生涯を閉じた。
馬謖の死後、手紙を受け取った孔明は、悲しみのあまり、誰とも口を聞かずに、物を食べることも無かった。
(馬謖よ。
私を恨め。
愛するお前を失って、私はこの先、何の喜びがあろうか。)
痩せ衰えた孔明の躰を、春の風が吹き抜けていった。
蜀の為に尽くすべき運命からは、逃れられないのだと孔明は悟った。
完
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