テラーノベル
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きぃぃ、と豪奢な扉が開く。
中は清潔でひとしきり揃っていて、金で飾られた化粧鏡や美しい絵画が飾られている。
窓の枠にもクローゼットの裏にも、カーテンの裏にも埃一つない。
前回の部屋とは違って、今回与えられた部屋は恐らく屋敷の中でも綺麗なものだろう。
目が眩みそうになるほど美しいその部屋は、復讐に命を賭ける者には相応しくないと思わせるほどだ。
「へぇ。随分と豪奢になってるじゃない」
にやりと私は笑う。
態度を少し変えるだけで、こんなにも愛を注がれる。
前々から私が努力して、お母様に愛想を振りまいて。
そうしていれば、私は愛されていたのかしら。ライラが死ぬこともなかったのかしら。
そう思えば思うほど、なぜか驚くほど笑みが浮かんだ。
「お嬢様、如何致しましたか?」
レインが私に訊いた。
「いいえ。何も」
そう言うものの、どうしてか笑いが止まらない。
きっと、いいえ。絶対に。
私が愛されることはなかったわ。だって、今、私が愛されているのは、復讐のための力だもの。
復讐のためじゃなかったら、きっとこんなに努力はできない。
「失礼します」
コンコン、と扉が叩かれる。
「入っていいわよ」
にこにこと愛想笑いを浮かべ、私は扉を叩いた人間を歓迎する。
「お嬢様、公女さまがお呼びでございます」
可笑しいわね。急に私を呼ぶなんて。
「すぐ行くわ」
私はそう返事をすると、目でレインに視線を送り扉を開けさせる。
「可笑しいですね」
扉を開けながらレインはくつくつと笑う。
「貴方もそう思ったのね」
「はい。公女さまが何の予告もなしにお呼びになるとは、礼儀がなっていません」
くすりと私は笑った。
その後隣でレインが作った笑みを浮かべる。
「貴方は花を持ってきなさい」
「分かりました」
そう返事をして、すっとレインは廊下の窓を開ける。
何をするのかと思えば、レインは窓から外に飛び降りた。
「…へぇ」
にぃ、と思わず唇が吊り上がる。
「面白い」
窓枠から視線を外し、私はダイニングルームへと向かう。
――
「お母様っ!お待たせしてすみません」
苦笑するように私は公女に笑みを向ける。
いつもより、机が二つ多かった。
「今日はお客さんがいるんですかっ?」
「ふふ、掛け替えのないものだって言ったでしょう?」
なるほど?掛け替えのないもの、ね。いいじゃない。面白くなってきたわね。
ちょうどその時、きいぃ、と音をさせ扉が開く。
「ご機嫌よう、お姉様」
「ご機嫌よう」
幼い二つの声が聞こえる。
一人は私より背の高い男の子。
もう一人は私より年下と見える少女だ。
「…えっ……?」
まるで予想だにしていない、といった顔をして、私は疑問を露わにする。
「アリア、紹介するわ。今日からあなたの兄と妹よ」
にこりと公女は優しく笑う。
「ロイドです。宜しく」
少し優しい笑みを浮かべて少年は私に握手を求める。
「うん!宜しくね、お兄様」
その握手に応じると、妹の方を見る。
「私、ライラっていうの」
「……………は?」
「これから宜しくね、お姉様」
その少女は笑みを浮かべ、私に向かって笑った。
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