「 はッ 、 はッ 、 」
息が苦しい。もう走る気力も残っていない。何処かで休まないと。
【 家出 】
「 颯太!! アンタ 一寸 弟らのこと 見とって !! 」
母は二階に居る僕に向かってそう叫ぶ。何処か買い物にでも行くのだろう。今は周りに大人が沢山居るじゃないか。その人に頼めばいいのに。
そんなことは口に出せず、その代わり、「 はーい。 」と言う言葉が出てきてしまう。
「 お兄ちゃん 遊ぼ 〜 !! 」
「 アカンで!! お兄ちゃんは 俺と 遊ぶもん !! 」
「 嫌や!! そーたくんは私らと 遊ぶの!! 」
下へ降りると、 弟や、従姉妹たちから遊ぼう。と口々に言われる。
「 うん、 一寸 待ってね、 みんなで遊ぼうか、 」
小学生や幼稚園児の世話は心底疲れる。他の人も手伝う気がないように話をする。
少しくらい手伝ってくれてもいいじゃないか。
これだから大人は嫌いだ。何時も僕が面倒を見ることになっている。その間呑気に酒を飲みくだらない会話をべらべらと話す。
此方を見ることすらもしない。そんな毎日に疲れた。
……家出をしよう、
ふと僕の頭に過った家出と言う言葉。
そうか、嫌なら出ればいい。タイミングはいつにしようか。
そんなことを考えていたら、
「 お兄ちゃん、 何ぼーっと してるん? 」
「 はよ遊ぼや! 」
と言われてしまった。
咄嗟に「 いいよ。 遊ぼうか。 」 と返してしまった。
夜。 皆が 寝静まり、 静かな部屋が より一層 静かになる。
僕は 部屋の明かりを 静かに 付け、 家出の準備を した。
ケータイ。ゲーム。財布。 貴重品を 全部カバンに詰めて。
いらないものは もう使わないから 壊して行こう。
あの 親族みんなで 撮った 仲の良さそうな 写真も。 大人になったら 見返そうと思っていた あの日記も。
今となれば 全て どうでもいい。
『 今まで 有難う。 大好きだったよ。 颯太より 』
この 置き手紙を 残して僕は、 家を 出た。
お金は あった。 小学生から 貯めていた 貯金が。
小学生から 貯め始めたので、 現在では 10万は 余裕で 超えていた。 思いのほか あり、 自分でも 驚いている。
暫くは 宿泊先には 困らなさそうだな。
そう思い 僕は リュックを 背負いながら 夜の街に 身を眩ませた。
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