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コメント
2件
これからどーなるのか楽しみ! 今回の新作もめっちゃ面白かった✨
第一話 失踪
「四季が消えた」
そんなはずはない、と思った。
四季はいつも誰かのそばにいたし、誰かが放っておくような存在じゃなかったから。
最後に見た四季の姿を、はっきり覚えている。
廊下の角で誰かに呼び止められて、少しだけ困ったように笑っていた。
大丈夫だよ、と言うみたいに、軽く手を振ってから――それきりだった。
皇后崎「冗談…言うなよ」
無陀野「事実だ。報告も受けた」
皇后崎は、すぐに言い返せなかった。
冗談だと言ってくれれば、それで済んだはずなのに。
無陀野の声には、そういう逃げ道が一切なかった。
「……散歩だぞ?」
絞り出すように言った皇后崎の言葉を、無陀野は否定もしなかった。
「だからだ」
短く、それだけを返す。
四季は、いつも許可を取るように出かけた。
一人で行動すること自体が、珍しかった。
それを知っているはずの無陀野が、表情一つ変えずに立っている。
――本当に、消えたのだと。
そう告げられている気がした。
「……お前は、何も思わねぇのかよ」
皇后崎の声は、低く荒れていた。
無陀野を睨みつけるその目だけが、はっきりと怒っている。
「四季だぞ。あいつがいなくなったって言ってんだぞ」
一拍、間があった。
無陀野はすぐには答えなかった。
「思わないわけがない」
静かな声だった。
感情を抑えているというより、最初から大きく揺らがない声音。
「俺は、四季が好きだ」
皇后崎が息を詰める。
「だからこそ、騒がない」
「四季は――大丈夫だ」
断定するような言い方だった。
まるで、四季の行動を最初から把握しているみたいに。
「誰かに何も言わずに消えるようなやつじゃない」
「もしそうしたなら、それは……そうする理由があっただけだ」
皇后崎は、言葉を失った。
“好き”という言葉が、こんなふうに使われるとは思っていなかった。