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ついに俺は奏(そう)ちゃんの塾がある日には、迎えに行くまでになった。


あの女、相沢先輩と塾で毎日一緒って不安要素しかないだろ。


そして、何よりもあの女の言葉が俺の心にトゲになって刺さっていた。



あたしに取られないようにね。



まぁ、そこはあまり心配していないんだけど。



同性の藤村くんを選んだんだから。



この゛同性゛と言う言葉が引っ掛かっていた。


奏ちゃんは元彼もいたから、たぶん同性愛者だ。


もし、もし俺が男じゃなかったら。

女だったら、好きになってもらえなかったんじゃないか。

そもそもあの女と同じ土俵に立てていない。

勝ったつもりになって、同性ということで俺の方が有利になってんだ。

それが悔しくて不安だった。


奏ちゃんの恋愛対象が女だったら、相沢先輩を選んだか?

俺が女だったら選んでくれたか?

考えてもどうしようもないことで自分で自分を苦しめていた。


そもそも塾まで迎えに行く時点で、俺と奏ちゃんの絆ってすごく脆いものだよ、と言わしめているようなもんだ。


それでも奏ちゃんに会いに行かずにはいられなかった。

そのうち、愛が重くて捨てられるかな俺。


「あっ、また彼女が迎えに来てるよ!」


きたきた、俺の不安要素が。

相沢先輩と一緒に奏ちゃんが現れた。

何で二人で出てくるんだよ。


「響、待たせてごめんね」


奏ちゃんはいつだって優しい。

迷惑になってない?俺の束縛。

俺の自分勝手な愛情。



不安要素が俺の近くに来て耳元で話す。


「ねえ、こんな毎日会ってたら恋愛寿命縮むよ?」


ほんっとーに痛いとこついてくる女だな!

しかも正論だから言い返せないんだよ。


「奏ちゃん、相沢先輩がいじめてくる…」


俺は奏ちゃんの側に弱々しく寄っていった。


「相沢さん、響に何言ったの?」


「えー、毎日会って仲良くて羨ましいなって!」


「奏ちゃん、あの女が嘘ついてます…」


「相沢さん、響に嫌なことするなら勉強教えたりとかもうしないって約束したよね?」


えっ、そんな約束してくれたんだ。

奏ちゃんが俺を守ってくれている。

嬉しい。


「わかってるー。それよりこのあと二人は時間ある?」


「ありません。奏ちゃんとデートするんで」

俺は奏ちゃんの腕を組んで言う。


「君の友達も来るけど一緒にお茶でもしない?」

相沢先輩が指さした先には、あさ美がいた。


「え、何であさ美が来てんの!?」


「この間、ファミレスで私たち2人置いて君達先に帰ったでしょ?あの後、あさ美ちゃんと盛り上がって友達になったの」


「えーマジで…。先輩、あさ美にまで手出してなに企んでるんですか」


「ホントーに気が合っただけなんだって!響くんの目には私どんな悪党に映っているわけ?」


俺の心の奥の憂鬱を掻き出してくる悪魔。

愛を試してくる意地悪な神様。

どっちにも見えるよ。


そうこうしていると、あさ美の方から気付いて俺たちの方に走ってきた。


「相沢先輩!あれ?響達も一緒なの?」

あさ美が俺と奏ちゃんを交互に見て言う。


「おい、あさ美。この女と本当に友達になったの?」

「え、うん。この間さ、ファミレスで響達が帰ったあと4時間くらい相沢先輩と恋バナで盛り上がっちゃって。仲良くなっちゃった!」


「ほらね〜嘘じゃないでしょ?響くん」

相沢先輩がふんぞり返って言った。


「まぁ…あさ美が楽しいならいいけど」


言ったあと「あ、ちょっとまずった」と思って奏ちゃんの顔を見る。


「ほら、響くんまた女に期待させてる!そうゆう言葉を息をするように言うからダメ男なんだよ」

相沢先輩が俺に指摘する。


「俺は本当に思ったことを言ってるだけで…」


あ、これもまずい?


「それそれ!心から思ってる時点で女に勘違いさせるから余計にダメなの」


おい、この女を黙らせてくれ。


「相沢さん、響は本当に優しいから。他意はないと思うよ」

奏ちゃんが助け舟を出す。


「うん、相沢先輩。私もそう思いますよ、響は優しいけど藤村先輩のこと一番大事にしてるのも分かっているから。私はもう勘違いとかしないから大丈夫です」


あさ美、よくぞ言ってくれた。


「なんか、私だけ悪者じゃん」

不貞腐れながら相沢先輩が言う。


「今頃気づいたんですか、相沢先輩」

俺は勝ち誇ったように言う。


「まぁまぁ、相沢先輩は本当に良い人だよ?この間なんて私の失恋話聞いて一緒に泣いてくれたもん」

あさ美の言葉に驚いた。


「私はあさ美ちゃんの味方よ♡このコを傷付ける男子は許さないからね」


もしかしてだから、俺に当たり強いの?

あさ美を振ったから。


「というわけで皆でお茶しよ!」

相沢先輩の申し出に

「いや、俺達は遠慮しておきます」

と俺は即答した。


「え〜響と藤村先輩も行こうよ〜皆で恋バナしよー。あたし、夏休み暇すぎて死にそうなんだもん」


あさ美に言われるとなぁ。まだ相沢先輩のこと信頼しきれないし二人にするのも…。


「俺はいいよ、別に」

意外にも奏ちゃんは乗り気だった。


えー奏ちゃん、俺と早く二人きりになりたくないの?なんだかショック。


「恋バナも聞いてみたいし、ね?響」


え、奏ちゃん怒ってる?

俺の心見透かされてる?

一瞬でもあさ美のこと心配してしまった俺を。


「藤村くん、嫉妬は百害あって一利無しよ!さあ、皆で仲良くお茶しよ」


相沢先輩、お前はエスパーなのか。

奏ちゃんの一瞬ムッとした顔を見て俺は目を伏せた。


この四人でお茶って嫌な予感しかしないぜ、と思いながら俺達はファミレスに向かった。

《恋人編》アダムとイヴの物語

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