テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#恋愛
アウラウラ
98
#キャラ崩壊注意
neko_Moka
2,102
※フィクションです!
私がいじめを受けてから一番嫌いになった人。それは、教師に叱られたから謝罪をし、後になって陰口を言いまくることしかできない主謀者でも、仲良くする大切さ、などという的外れなことをほざき救ってくれなかった教師でも、陰から一部始終を見てほくそ笑んでいた傍観者でもなく、
――他でもない自分自身だった。
この世は弱肉強食で成り立っている。中学校に入ってすぐ、私はそれを痛感した。少しでも隙を見せたら終わり。すぐに狩りの対象にされる。強いものが狩りを楽しむ権利を持ち、弱いものは獲物になるしかない。
私は特に『群れ』をつくらなかった。だから、毎日をいらいらしていてはけ口が欲しかったあいつらにとって、私はとても都合のいい標的だったらしい。私はどれだけ差別や暴力、暴言を浴びさせられようと、ただひたすら黙りつづけた。それが一層奴らにとって都合の良いことだったし、同級生からは「感情ないんじゃない?少しは言い返せばいいのにね」と陰口を言われることとなった。
――そう思うなら、そう思った人が代わりに言えばいいのに。
親に相談をしてみると、「お前の心が弱いからこうなるんだ。甘えるな」と怒鳴られ、「何でお前はこんなに弱いんだ…」と嘆かれた。
そう言われる度、自分の弱さを痛感して嫌気がさした。こんな弱い自分は嫌だ。私は耐えることすらできなかった。そして、私はもう――
――終わらせる、ことにした。
時刻は真夜中、私はこっそりと最低限の荷物を持って家を出る。きっと初めてで、最後になる家出。向かう先は海。ここにした理由は、誰にも迷惑なんてかけたくなかったからという消極的な理由。どうせ最後だから、迷惑なんてかけたって関係ないのに。
そんなことを考えながら、私は電車に乗り込んだ。
「……」
静かだ。音楽でも聴こうかと思ったが、イヤホンを持ってきていないこと思い出す。別に、それほど聴きたくもなかったけど。
私以外誰もいないこの静寂な空間が破られたのは、私が乗ってから10分くらい経ったころだった。
「ふ~、ギリギリセーフ…ってうわっ」
1人の女の子が電車内に乗ってきた。何もない場所でつまずいている。彼女は恥ずかしそうにあたりを見回して、すぐに私を見つけた。
「ああー…へへ、こんにちはー」
「……、」
私は会釈だけをしてすぐ窓を見る。見るからに明るそうな可愛い子だ。
きっと私とは見てきた世界が違う、苦しみなんて感じてきたことなんてない子――。
彼女はなぜか「えー素っ気ない!」と会話を続け、「せっかくだしなんか話しましょうよー。何歳?」と隣に座ってきた。
「……じゅう、よん」
戸惑いながらも答えるとなぜだか彼女はその人懐っこそうな顔をさらに明るくして話を続けた。
「えー、私も14歳!何かの縁だろうし、タメ口にしない?よろしく!」
「……分かった」
彼女はうみ、と名乗った。私も自己紹介をすると、彼女は「名前すごく可愛い!」と屈託のない笑顔で笑った。その純粋な瞳に思わず目をそらす。…悪意のない笑みを向けられるのが、とても久しぶりだったから、だ。
「きみはどこまで行くの?」
「……終点まで」
「えっ、私も!すごい偶然、私のこと下の名前で呼んでね!」
「……うみ?」
「はいっ!」
名前をためしに呼んでみたらものすごく嬉しそうな顔をしている。犬みたいだ、と思った。
……何だか、慣れない。
そして、彼女が次に言った言葉に、私は絶句することになる。
「私、病院から家出してきたんだ!」
……うみの言葉が一瞬、理解できなかった。彼女は私の様子など気にも留めず話し続ける。
「私昔から心臓が弱くてさー?入院中!」
「……そこじゃ、なくて……家出、」
あぁ、とうみは笑った。
……全然、笑うとこじゃない…。
すぅ、と彼女は息を吸って、
「入院生活、本当につまんないの!」
いきなり文句から始まった。
「こ、声が大き…」
「先生も、看護師さんも、親までもがさ⁉みんなみんな、愛想笑いばっか私にしてくるし、毎日同じ部屋眺めているのも、もういい加減飽きたし……だから、」
うみは変わらず笑顔で続ける。
「――自由に、外に、出たくて抜け出したの」
「……」
……私、さっき、何を思っていたのだろう。
『私とは見てきた世界が違う、苦しみなんて感じてきたことなんてない子』?
確かに違う。でも、痛みや苦しみは、私の何倍、何十倍感じてきたんだろう。
空気が重くなる。こういう時にかけるべき言葉が見つからない。でも、
「……すごい、ね」
「え?」
「あ、えっと、その……こう、外に出たいって望んで、……絶対、怖いはずなのに、努力するの……すごいって、思う……」
途中からは早口になって、最後のほうはたぶん聞こえなかったと思う。でも、何とか、伝えることができた。
うみの目がゆっくりと瞬きをした。ぱちぱち、と音が出そうだ。
「……あり、がとう。」
「うん…ってごめん、なんかものすごく偉そうに語っちゃって……」
うつむきがちにそう告げると、彼女はぶんぶんと首を横に振った。
「そんなことないよ!私のこと、そうやって言ってくれる人、初めて……」
「「……」」
2人そろって黙ってしまう。ふいに、ぽつりとうみが言った。
「……ねえ、なんで……自殺とかって、するのかな?」
……えっ……
バレたのか、と思った。しかし、そうではないらしい。
「テレビとかでよく流れるじゃん、自殺未遂、とか自殺願望、とか……」
彼女は怒っているように見えた。いや、実際に、怒っているかもしれなかった。
「……なんで、自分から命を捨てるんだろうな、って……時々、思っちゃう」
……そんなの、
「……苦しみたくないから、」
「……え、……?」
うみの視線がこっちに向けられた。彼女のまっすぐな瞳が私を射抜く。
「……これ以上、苦しさを、味わいたく、ないから。……もう、つかれたくないから……っ」
私は目をそらす。うみを、見たくなかった。
「……」
彼女は私から一向に目視線をそらそうとしない。気まずい沈黙が流れた。
「……それって、きみの思っていること、そのもの……?」
「……」
「答えて」
「……まあ。」
淡々と答えると、彼女は私をゆっくりと見つめなおしてきた。
「自殺……するの?」
「……そのつもり」
「この電車に、乗っているのって、……」
「……」
はぐらかすことしかできない。でも、彼女は私の表情を見て、そういうことかと理解したようだった。
「…………だってっ……」
何を言われるのかが怖くて、声をしぼりだす。
この世界は弱肉強食。弱いものは強いものの獲物。
あいつらはいつも残酷に、楽しそうに弱い私を遊ぶ玩具にする。
そのことに何度、傷つき、苦しんだだろう。
何度も、その度に、弱い自分が悪いんだと思ってしまうことしかできなかった。
あいつらはとても楽しそうで、自分がこうされるのは、当然のことなのかもしれない。
どうせ、弱者はどんなにあがいても救われない。
あいつらの立ち振る舞い方はそう思わせてくる。
だから、私はずっと痛みに耐え続けるしかない?ずっとあいつらの奴隷のようにいればいい?
そんなの、嫌に決まっている……私は、もう、
「もうこれ以上、傷つきたくないから……」
心からの願いだった。
……早く楽にさせて、はやく楽にさせて、はやく楽にさせて、はやくらくにさせて、はやくらくにさせて、はやくらくにさせて、はやく、はやく、はやく、はやく、はやく、はやく、はやく、はやく、はやく、はやく、はやく、はやく、はやく、はやく、はやく、はやく、はやく……
――助けて。
そんなことをずっと心の中で唱えてきた。
「……そっか」
声が聞こえた。思わず身構える。何と、言われるだろう?今日初めて知り合って、
今日以降二度とかかわりを持たないはずの――彼女の発言が妙に気になった。
「……私、余命が……あと、1ヶ月なんだ」
「⁈」
余命…?
突然告げられた新しい情報に、頭が追い付かない。彼女は私の反応を予測していたのだろう、特に気にせず話を続ける。
「だから、きみが羨ましい。私は、選ぶことさえできないから――、自分で死ぬか生きるか、なんて決めることができるきみが、ものすごく……羨ましい」
すぅ、と息をのみこんだ。彼女は、生を望んでいる人。そして私は…死を、望んでいる人。
あまりにも対極していた。何の運命の悪戯だろうと思う。
「……もし、私がきみだったら」
うつむいていた顔を上げた。
「絶対に、死、なんて選ばない」
まあ当たり前か、と彼女は苦笑いをする。
それは当然だ。生きたい普通の人にとっては私の行動なんて酷く馬鹿らしく見えるだろう。
……でも、私の気持ちが分かるの?
「――いらないんだったら、頂戴……って、言いたい」
口を開きかけた私をうみは制した。
――頂戴。それは……
「私に、そんな価値なんて――ない、よ?」
そう思ったことに何の感情もなかった。本気でそうだと思ったから、言った。
それだけだった。
だけど……うみは、違った。
次の瞬間、私の頬には平手がとんできた。
「――――バカ……っ!!」
コメント
1件
ゆのさん、第1話読みました。冒頭の「一番嫌いになったのは自分自身」という一文に、もう胸がぎゅっとなりました。弱肉強食の世界で傷つき続けてきた主人公と、余命1ヶ月でも生きることを選んだうみ。対極の二人が電車で出会う偶然が、すごく運命的でドキドキしました。最後の平手には私も「あっ」と声が出ました。この出会いがどう転ぶのか、続きが気になります…!