「死ぬ前に、俺と付き合わない?」
某ドラマや漫画にある、某台詞と全く一緒の事を言われる日が来るなんて、予想していなかった。
「そんなこと、急に言われても。」
海岸沿いの、ある柵の上。一歩踏み出せば、落ちて海の藻屑となるかもしれない。
「もう俺に、生きる意味なんて無いから。放っておいてや。」
「こんな人目が付くような場所で自殺しようとしてる人を、黙って見届けるだけなんてできないよ。」
何て正義感の強い青年なんだ。その言葉に、思わず『死にたくない。』なんて口走ってしまうところだった。
そのエメラルドグリーンと、そこに映った夕日が、あまりにも綺麗だったから。この柵を降りて、ずっと眺めていたいって思ってしまった。
「どうして泣いてるの?」
その問いかけに、少しだけ戸惑う。
「泣いてなんか…」
そう言いかけて触れた彼の手が、あまりにも暖かくて視界がぼやける。
「俺と一緒にもうちょっとだけ、頑張ってみない?」
そう言って差し出された手に、少し間をおいて考える。
「俺なんか生きてたってなんも出来へんし、才能無いし…。俺一人減ったところで、そんなに世界変わらんから。」
「俺には必要だよ。」
たぶん、いや、ずっと欲しかった。それが、例え赤の他人でも。
初めてもらったその言葉は、ちゃんと俺の事を認めてくれた気がした。
久々に、懐かしい夢を見た。
今、俺を認めてくれた彼は、隣で俺にくっつきながら寝ている。
「…ありがと。じゃぱぱ。」
そう言って、彼に触れるだけのキスをした。
「うわぁ!」
今起きたのか、それとも狸寝入りだったのか。よく分からないが、馬乗りにされてしまった。
「何がありがとう?」
にやにやしながら近づいてきた彼はたぶん、『そんなの当たり前だよ。だって好きだし。』とか言いそうだ。
だからあえて教えない。あの時泣いた理由だけは。
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