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ネオンだけが光っているベッドの上。
ずぅっと欲しかったこの子を抱きながら、優越感に浸っていた。
「やっぱりあいつより俺の方がいいでしょ?」
「当たり前だろ!顔がいいから付き合ってるだけだし。」
「ひどw」
放課後の誰もいなくなった教室に響く笑い声。
忘れ物を取りに教室に向かっているとき、俺が一生片思いで終わると思っていたあの子の彼氏が浮気している現場を見てしまった。
今すぐに殴りたかった。でも、部外者の俺がいきなり教室に怒鳴り込みに行ってしまえば、軽くあしらわれて終わるだろう。だから無音カメラで写真を撮って帰ってきた。
家に帰ってきてから、良くないとは分かっているが、笑いがこらえられずに声が漏れる。
「うまくいけば、ずっと好きだったあの可愛い可愛い天使を俺のものにできる。」
そんな考えが脳裏をよぎる。
そう思うだけで体中がえずく。とはいっても、あの子の悲しむ顔は見たくはない。
どうやって成敗しようか。
昼休み、俺は彼氏面のくそ野郎を屋上に呼び出した。
「話ってなんだよ。」
怪訝そうにこちらを一瞥した後、一度も目を合わせようとしない彼の態度に、余計な怒りが沸々と湧き上がってくる。
「お前、⚡と付き合ってるよな?」
一応まだ別れてはいないという事を確認するために、少しだけ謙虚に聞いてみた。だけど。
「だったら何?⚡は渡さねーよ?w」
小馬鹿にしたような含み笑いに、一ミリも滲み出さない様にしていた感情が一気に溢れてしまいそうになって、痛いくらいに拳を握る。
「そっか。ならいいんだ。」
絞り出すようにやっと言えたその小さな一言は、相手に届いていたのかどうかすら分からない。とにかく今にでも溢れてしまいそうなこの憎悪を抑えるのに必死だった。
「じゃぱぱ?」
いつの間にか屋上から教室に戻って、⚡の目の前に来ていたらしかった。
不思議そうに見つめてくるその顔が、いつもなら
「天使だ。可愛い。好き。」
この3つの言葉で頭がいっぱいになってしまうのに、今はなんだかそんな感情も湧かない。寧ろ「なんであんなくそみたいなやつと付き合っているんだ。」
なんて思ってしまっている自分がいる。そんな自分に自嘲混じりな笑いが込み上げてくる。
暫く笑った後、まだ不思議そうにこちらを見据える天使の手を取って、誰もいない空き教室に入った。
「どうしたん?こんな所に連れてきて。」
何も言わずに引っ張ってきて、静かにカギをかけた俺の背中に問いかける天使の声。
『知らないというのは、罪と一緒だ。』
そう言い始めたのは誰だったか。思い出せないが、その通りだと思った。
無言で⚡に近づき、そっと頬を撫でる。
俺は今、どんな顔をしているのだろうか。
「…じゃぱぱ?」
戸惑いながらも受け入れるその姿勢に、少しの憎悪と苛立ちさえ覚える。こんなに純粋で、よく今まで襲われなかったものだ。
普通、彼氏がいるから。と払いのけるはずなのに、それをしなかった。つまり、あいつの悪行を分かっている。もしくは…。
「俺のものになって。」
今まで言えなかったすべての思いを込めて、静かに。でもはっきりと紡いだその言葉は、いったいどう受け取ってくれたんだろうか。
夜の繁華街。色んな店が忙しなく並ぶ一際賑わう風景に、少しだけ若すぎる若者がホテル街に入っていく。
傍から見れば、ただの友達の様にも見えるその光景は、純情とは程遠い。複雑な、歪な形をしたそれは、重すぎた鉛の様で。
それでも、その中に見える微かな光は、果たして「愛」なのか。
すれ違う人なんて、まるで視界に入っていない。見つめる先は、お互いの心の中だ。