[小さな違和感の積み重ね]
若井side
俺は、涼架との共同生活に慣れてきた。
初めは戸惑うことも多かったが、今はまるで昔からの親友のように感じている。
しかし、ある時から俺は涼架の行動に少しずつ説明のつかない違和感を覚え始めていた。
それは、本当に些細なことだった。
涼架が時々、窓辺の陽だまりでうとうとと居眠りしている。
それは誰にでもあることだが、涼架は陽だまりの温かさを全身で享受するかのように、気持ちよさそうに目を閉じている。
その様子は、まるで春の縁側で昼寝する猫のようだった。
また、涼架は俺がギターを弾いているといつの間にかそばに来て、静かに聴いている。
俺が演奏を止めると、涼架は嬉しそうに目を細めた。
それは、かつて公園で俺のギターを聴いていた、あの猫の反応にそっくりだった。
決定的な違和感は、ある日の朝に訪れた。
俺が朝食の準備をしていると、涼架がキッチンにやってきた。
俺が冷蔵庫から牛乳を取り出すと、涼架はまるで吸い寄せられるかのように近づいてきた。
そして、俺の手元をじっと見つめて、喉を微かにゴロゴロと鳴らしたのだ。
「…おい、どうしたんだ?そんなに牛乳が飲みたいのか?」
俺が冗談交じりに言うと、涼架はハッとしたように口元を押さえ、慌てて咳払いした。
「いや…その、なんだか喉渇いて…」
そう言って、涼架は俺から顔を背けた。
若井は、そんな涼架の様子を見て、ますます首を傾げた。
なぜ、涼架はこんなにも猫に似た行動をするのだろう。
火を怖がる姿も、牛乳を欲しがる仕草も、陽だまりでうとうととする様子も、すべて若井がかつて公園で出会ったあの猫にそっくりだった。
「偶然…だよな…?」
俺は心の中で何度も自問自答した。
もしかして、前に猫を飼っていたことがあるのだろうか。
それで、猫の行動がうつったとか?そんなことあるのだろうか。
しかし、俺の心には、もう一つの大胆な可能性が芽生え始めていた。
あの雨の日、俺が助けた猫。
そして、目の前にいる涼架。
二人の間には、青いバンダナという共通点がある。
そして、涼架のエメラルドグリーンの瞳も、あの猫と全く同じ色をしていた。
俺は、涼架に気づかれないように、じっと彼の瞳を見つめた。
涼架の瞳は、まるで深い森の奥にある湖のように、俺の探るような視線を静かに受け止めていた。
次回予告
[写真立ての中の秘密]
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🎀🫧もっくん誕生日おめでとう🫧🎀
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コメント
1件
気づかれてきちゃってるよ!?おーまいがー!