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なんかその男の子が亡くなっちゃって、若井がバンダナを大事に持ってるのかなぁ〜って思いました…
初コメ失礼します! 全部の作品一気見したんですが、主様の語彙力に毎回感動してます…。今回も素敵なお話ありがとうございます!
[写真立ての中の秘密]
涼架side
若井が学校にいる間、僕は部屋の掃除をしていた。
若井から『好きなように使っていいから』と言われてはいるものの、秘密を抱えている僕は、若井のプライベートな空間に触れることに、少しだけ躊躇いがあった。
(…少しだけなら)
僕は若井の机の上にある写真立てに目が留まった。
それは、若井が大切にしているであろう一枚の写真だった。
写真の中には、若井ともう一人、男の子が写っている。
二人は、若井の部屋にも飾ってあるギターを手に肩を組み満面の笑みを浮かべていた。
僕は、その写真に写る若井の姿に初めてみる表情を見つけた。
それは、僕が知っている若井の優しくて少し寂しそうな笑顔とは違う、もっと明るく無邪気な笑顔だった。
まるで、太陽が燦々と降り注ぐ真夏の空のような、輝く笑顔だった。
そして、涼架の視線は写真の中の二人の手首に向けられた。
若井の右腕には、いつも身につけている、あの青いバンダナが巻かれている。
そして、隣の男の子の左腕にも全く同じバンダナが巻かれていた。
僕の心臓が、ドクンと大きく跳ねた。
若井が**「大切なものなんだ」**と言っていたあの青いバンダナ。
僕が腕に巻いているものと同じバンダナ。
それは、二人にとってお揃いのものだった。
僕は、写真立てをそっと手に取り、指で写真の中の男の子をなぞった。
彼の笑顔は、若井の笑顔と重なる。
そして、彼らが同じバンダナを身につけている事実に僕は、若井の心の中にまだ自分の知らない大切な存在がいることを知った。
(若井が、あの雨の日に僕に巻いてくれたバンダナはこの写真に写る男の子のものなのだろうか…)
(あの男の子は…)
僕の胸に、若井の過去への興味とわずかな嫉妬のような感情が芽生えて始めた。
若井が、僕の知らない場所で誰かと深く繋がっていた。
その事実は、僕の心をざわつかせた。
そのとき、玄関の鍵が開く音が聞こえた。
若井が帰って来たのだ。
僕は慌てて写真立てを元に戻し、何事もなかったように掃除を再開した。
しかし、僕の頭の中は写真の中の二人の笑顔のお揃いの青のバンダナのことでいっぱいだった
若井が、なぜあのバンダナを大切にしているのか。
写真の男の子は、一体誰なのか。
僕は、若井の過去に踏み込むことへの新たな一歩を踏み出した。
それは、僕が人間として若井と向き合うために避けては通れない道のように思えた。
次回予告
[写真と語られる過去]
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