テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「」せりふ()こころ
桃 side .
コンクリートの 冷たさが 制服越しに 体温を 奪っていく 。
膝を 抱えて 、 ただ声を 殺して 泣き続ける 俺の視界は 、 涙で ぐちゃぐちゃに 滲んでいた 。
(もう 、 どこにも 行けない 。 誰のことも 見られない)
学校にも 、 実家にも 、 俺 の 居場所 なんてない 。
俺が そこにいるだけで 、 誰かが 世界から 消されてしまう 。
あの 優しい先生 のように 、 血を流して 倒れてしまう 。
頭を かきむしりたくなるほどの 罪悪感と 孤独に 押しつぶされそうで 、 息も うまく吸えなかった 。
過呼吸で 喉が ヒューヒューと 鳴る 。
そんな 絶望の 暗闇の なかで 、 不意に 、 目の前の 光が 遮られた 。
「 …… らんらん」
聞き間違えるはずの ない 、 世界で一番大好きな声 。
弾かれたように 顔を 上げると 、 そこには 、 いつだって 俺を 救ってくれた あの 優しい恋人 が 立っていた 。
「す 、 ち …… ? 」
すち は いつもと 変わらない 、 穏やかで 綺麗な 笑顔を 浮かべて 俺 を 見下ろしている 。
その手には 、 俺が 置き去りに してきたはずの 、 学校の 指定カバンが 握られていた 。
「やっぱり ここにいた 。 らんらんが 学校を飛び出した って聞いて 、 慌てて 探しに 来たんだよ」
すち は そう言って 俺の前に 屈み込むと 、 大きな 手のひらで 、 俺の涙 に 濡れた頬を 優しく 包み込んだ 。
すちの体温が 、 凍りついていた 俺の肌 に じんわりと 溶け込んでいく 。
「ど 、 うして …… っ 、 すち 、 俺に 近づいちゃ ダメ 、 だ …… ! 」
会いたくて たまらなかったはず なのに 、 俺 は 恐怖で 身体を 強張らせ 、 すちの手 を 振り払おう とした 。
ダメだ 。
すち だけは ダメだ 。
俺 の 『呪い』 が すち にまで 及んだら 、 俺 は 今度こそ 本当に 狂ってしまう 。
「お 、 れ から 離れて …… っ ! 俺 と 一緒に いたら 、 すち まで 消されちゃう …… っ 、 大怪我 しちゃうよ …… ! 」
泣き叫ぶ 俺 の 言葉を 、 すち は 否定も 肯定も しなかった 。
ただ 、 酷く 愛おしそうな 、 どこか トロンとした 甘い瞳で 俺 を 見つめ 、 振り払おうとした 俺の身体 を 、 折れそうなほど 強く 抱きしめた 。
「大丈夫 だよ 、 らんらん」
耳元で 、 すち の 低い呼吸が 響く 。
「俺 は 絶対に 消えないし 、 傷つかない 。だって 、 らんらん を 守るって 約束したでしょ ? だから 、 そんなに 怖がらなくていいんだよ」
「でも 、 先生が …… ! みんな 、 いなくなって …… っ」
「いいんだよ 。 らんらん が 気に病むこと なんて 、 何一つ ない」
すち は 俺の背中を 、 まるで 小さな子供を あやすように ゆっくりと 、 規則的に 撫でる 。
その 手のひらの 温もりが 、 すち の 絶対的な 言葉が 、 パニックに なっていた 俺の脳 を 少しずつ 麻痺 させていく 。
(ああ 、 すち は 大丈夫 なんだ 。 すち は 、 消えない …… っ)
根拠 なんてどこにもない 。
だけど 、 すちの腕の中 にいると 、 あの恐ろしい 呪いすら 届かないような 、 そんな 絶対的な 安心感に 包まれる 。
俺 は すち の 上着に 顔を 埋め 、 子供のように 声を上げて 泣きじゃくった 。
「かわいそうに 。 こんなに 怯えるまで 、 あの 学校の奴らは らんらん を 追い詰めたんだね」
すち は 俺の髪 を 愛おしげに 何度も 撫でながら 、 静かに 、 けれど 狂気を 孕んだ声で 囁いた 。
「もういいよ 、 らんらん 。 あんな場所 、 もう 行かなくていい 。 俺が 、 らんらん を 傷つけるもの 全部から 守ってあげる」
すち は 俺の身体 を 軽々と 抱き上げると 、 路地の 入り口に 停めてあった 黒いセダンの 助手席へと 乗せた 。
いつも通り 、 俺 の ために 用意された 柔らかい クッション 。
車内には 、 すち の 部屋と 同じ 、 甘くて 落ち着く 香りが 満ちている 。
パタン 、 と 助手席の ドアが 閉まった 。
すち が 運転席に 乗り込み 、 ロックが 静かに かかる 。
車の外は 、 相変わらず 冷たい風が 吹き 、 人々が 不穏に 消えていく 恐ろしい 世界のままだ 。
けれど 、 この 密閉された 車内だけは 、 世界で一番安全 な 、 俺を愛してくれるすち と 二人だけ の 楽園のように 思えた 。
「さあ 、 お家に 帰ろうね 、 らんらん」
すち が 優しく 微笑み 、 アクセルを 踏み込む 。
俺 は すち への 絶対的な 信頼と 安堵に 身を委ね 、 涙を 拭った 。
自分 の 周りから ノイズを 排除していた 張本人が 、 今 隣で ハンドルを 握っている 愛しい恋人 だと いうことも 、 この車が 、 二度と 出られない 甘い檻への 入り口だ ということも 、 今の 俺 は まだ 、 何も 知らなかった 。
【っ】
episode 5 . fin_
コメント
3件
🌾失っ.ᐟ.ᐟ んーとね、まず口角がなくなったよね。 その次にスマホぶん投げたよね。良すぎて。 二人の間でなんかが微妙にズレてる気がしてふぉうってなった(?) 伏線のまき方が上手すぎるぜ…
うわ……この話、めちゃくちゃ胸にくる……。らんらんが自分を呪いだと思いこんで追い詰められてるのが痛いほど伝わってきた。すちの「大丈夫」があまりにも優しすぎて、逆にその裏にある狂気がゾッとする。最後の「甘い檻」の一文で、今までの安心が全部ひっくり返る感じがたまらなかった。設定の伏線の効かせ方が本当に巧いなあ…。
現世くるり ◤ ペア画なう ◢
3,249
524
93,647