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行きたくもない所へ行かないといけない時は、朝起きるのも億劫になる。
なんで私が?
どうして私なの?
朝起きてからずっと、その言葉だけを繰り返してる。
「タロウ、おはよう。今日は帰りが遅くなりそうだからご飯たくさん入れとくね。お水もね。トイレの砂もかえて…」
にゃーんとそばに寄って、あたまを擦り付けてくる。
あまり懐いてないかもと思っていたのに、今ではすっかり仲良し。
タロウのお世話なら、なんだって平気なんだけどなあ。
だって、文句言わないし、ひたすら可愛いし。
糖尿のご飯って、どうすればいいんだろ?
Siriに問いかける。
「ヘイ、Siri、糖尿病の食事ってどうすればいいの?」
画面でSiriがクルクル。
あ、料理のサイトが出た。
すごいね。
メニューを見て、簡単なやつをピックアップする。
あー、材料を買って行かないと、なにもないな。
その前に税金納付だった。
銀行に寄って済ませてから行くことにした。
旦那の実家は車で1時間ほどのところ。
そこそこ田舎そこそこ都会のそこそこに暮らせる場所。
すぐ近所に、お義姉さんの家がある。
結婚した時、土地を買ってもらって家を建てたとか。
なんで長男の旦那には、土地がないんだろ?
あ、バツ2だからか。
「こんにちは」
玄関を開けて中へ入った。
「お義父さん?どこですか?」
ダイニングに入る。
人の気配があるけど、いない。
お義母さんがいないわりには、きちんと片付いていた。
旦那よりよっぽどデキる人みたいだ。
ん?
奥の座敷の方で声がした。
「お義父さん、ここでしたか」
襖を開けると同時に声をかけた。
「きゃっ!」
女?
一瞬だったけど、見た。
お義父さんがその女の人の手を握っていた。
慌てて2人が離れる。
「あぁ、未希さんか」
「すみません、声をかけたんですけど」
「すまん、耳が遠くなってきてるから」
「いいですけど、こちらは?」
慌てたようにタオルで顔を拭いてる女の人。
年齢はお義父さんより一回りくらい若いのか。
「あ、近所に住む森さん、回覧板を持ってきてくれて…」
「そうでしたか、いつも父がお世話になっております」
不穏な空気をわざと知らないフリで挨拶をする。
「そんな、お世話だなんて」
「いや、たしかに世話になってるな、食器も洗ってもらったし、ご飯も作ってもらったから」
なぁんだ
私が来なくても大丈夫じゃん。
「そうですか、じゃあ、私は用事があるのでこれで帰りますね。食材は買ってきたので森さん、よろしくお願いしますね」
「え?あ、はい、わかりました」
もう帰ろう。
私が出る幕、ない。
それにしてもお義父さんもやるなあ、なんて感心した。
森さんに任せて、帰ろうっと。
帰り道、ちょっと鼻歌が出てしまった。
お義母さんとお義姉さんに、反撃できた気がして笑えた。