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体を繋げたあとの夜は、やけに静かで、やけにあたたかかった。 右京はぐったりと、布団の中に横たわりながら、ぼんやりと天井を見上げていた。
……ちょっと恥ずかしい。
少し、痛かった。でも――それ以上に。
「……はぁ。なんで、あんな顔、君にだけ……」
ぽつりとつぶやいた声は、ほとんど空気に溶けていった。
すぐ隣で、毛布の中からぬっと顔を出した龍水が、くしゃっとした髪でにやける。
「気持ちよかったか?」
「……そういうの、すぐ言うの、やめなさい……」
「なんでだ? 本当のことだろう?」
やれやれとため息をついて、右京はふわっと目元を覆った。
でも、次の瞬間、そっとその手を取られる。
――ああ、優しい手だった。
先ほどまであんなに熱かったくせに、今は指先まで丁寧で、あたたかくて。
「……涙、出てたぞ。拭かせてくれ」
「えっ、……み、見てたの……?」
「そりゃあ、目の前で泣かれたら、放っておけないだろう?」
茶化して笑うくせに、タオルを手にしたその動作はとても真面目で、
目元をそっと撫でるように拭うその手つきに、右京はくすぐったくて目を細めた。
「……まったく。君は……本当に」
「……好きだぜ、右京」
不意に言われた言葉に、右京のまつ毛がふるえる。
目を合わせたくなくて、顔を背けたその首筋に、そっと唇が触れた。
「やめて、……キスマーク増やさないの」
「はっ、今さらか」
「今さらじゃないよ。……明日スイカに会うのに、気づかれたらどうするつもり……」
「隠してやるさ。首にスカーフでも巻いてやろうか?」
「年上をからかわないで……」
言いながらも、怒ったようには聞こえなかった。
むしろその声には、どこか甘えが滲んでいて。
ゆっくりと指を絡めて、龍水の胸の中に顔を埋める。
温かくて、安心して、――ああ、やっぱり泣きたくなってきた。
「……ねえ、龍水。……今夜だけ、君の胸に甘えてもいい?」
「今夜だけなんて言うな。何度でも甘えればいい」
「……ふふ、ずるいこと言うね。ほんと、君って……」
「どうだ?少しは俺にも頼る気になったか?」
そう言って、龍水は右京の頭をくしゃりと撫でた。
やさしい指だった。少し粗くて、でも、安心する匂いのする手。
「……君に、こんな風に触れられるなら。……初めて、君にあげてよかったって、思えるよ」
「……その言葉、録音しておけばよかったな」
「ばか」
けれど、ふたりの吐息は心地よく絡んで――
夜が更けるほどに、右京のまぶたも重くなっていく。
「おやすみ、龍水」
「ああ。……おやすみ、右京」
優しい腕に包まれながら、右京は静かに夢へと落ちていった。