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崩壊から数百年。
激動の戦国時代を迎えていた。
かつて初代カイとアギが結んだ双子壺の盟約は、渥美大島の神殿が破壊されたことで引き裂かれ、鹿児島を護る真珠色のバリアは失われたままだった。
本土の鹿児島は「鬼島津」と恐れられる【島津国(薩摩)】が統治し、南の海は【尚寧王(しょうねいおう)】が治める【琉球王国】の支配下にあった。
琉球王国の摂政であり、強硬な反島津派の急先鋒である実力者【謝名親方(じゃなうぇーか)】は、不老不死の力を持つアギを「王権を脅かす危険な巫女」として琉球王国の底に幽閉し、本土との繋がりを完全に遮断していた。
今回の厄災は、乱世の流血と大陸の呪術が引き起こした【怨霊の軍勢】。
黒い霧をまとった怨霊の軍勢が鹿児島の本土を包囲し、上野原の周囲にも火の手が迫る中、滅びゆく祭壇へ駆けつけたのは、一組の双子の兄妹、【兄の邦久(くにひさ)】と【妹のタマ】であった。
この混沌の時代、本土の「神代(みこ)」の力は、この双子の兄妹が【二人で一つ】となって初めて完成する。
彼らの力は、【二人が手をつなぎ、祈った時】に初めて発動する。
迫り来る怨霊の咆哮が響き渡るなか、邦久とタマは互いの手を固く繋ぎ、心を一つにして祈りを捧げた。
その瞬間、眠っていた上野原の壺の中の【星の砂】が、爆発的な輝きを取り戻した。
まばゆい真っ白色の光は双子壺を駆け抜け、遥か南、与論島の牢獄の底で眠っていたアギの首飾りへと直撃する。カチリ、と凍りついていたアギの時間が動き出し、彼女の心に、邦久とタマの熱い叫びが直接響き渡った。
「聴こえるか、南の海の巫女よ! 俺たちは今、手を繋いだ。もうあなたを一人で泣かせはしない!」
神殿を壊され、人間を信じられなくなっていたアギの目から、熱い涙が溢れ出す。
「走って……! 二人の手を、絶対に離さないで!」
邦久とタマが上野原の『星の砂』の壺を抱え、出陣しようとしたその時、目の前に立ち塞がったのは、島津国を率いる絶対的な将・島津義弘であった。
「待て。琉球との間にはお家の大事なる政治の壁がある。勝手な海路は許されん。それに、あの怨霊の包囲を抜けて生きて戻れると思うな」
義弘の鋭い眼光に、邦久とタマは手を繋いだまま、激しく輝く星の砂の壺を示し、真っ直ぐに見返して言い放った。
「義弘様、これは政治の戦ではありません! 琉球の奥底に、俺たちの半身である巫女アギが囚われています! 薩摩の国と、島々の民すべてを護るため、二人の命に代えても壺を届け、アギ様を奪還します!」
政治の壁を越え、手をつなぎ一つとなった二人の並外れた覚悟を見た義弘は、不敵に笑って吼えた。
「……よかろう。天下無双の島津の軍勢、今こそ使い時。正面を堂々と突き破り、その巫女を奪い返すぞ!」
島津義弘は自ら大軍を率い、琉球王国への出兵を決断。
しかし、尚寧王と謝名親方が率いる琉球王国の抵抗は凄まじいものだった。
鉄壁の防衛線と激しい戦火の中、島津軍にも無数の死傷者が出る激烈な大合戦が巻き起こる。
多くの兵たちの流血と尊い犠牲を払いながらも、島津軍はついに琉球の防衛線を突破。
邦久とタマは戦火のなか、牢獄の奥底からついにアギを奪還することに成功した。
アギを救い出した島津軍、そして邦久とタマは、そのまま後退するのではなく、破壊されていた【与論島から本土までの聖杯と神殿の再建】へと乗り出す。
島津の兵たちが泥をすすり、血を流しながら、かつて崩壊した島々の拠点を一つずつ建て直していく。
アギ、邦久、タマの三人は、再建された神殿を巡りながら、各拠点の聖杯へと翡翠色の神の水を注ぎ分けていった。
そして、戦雲が渦巻く【二つの壺が交わる場所(渥美大島)】の再建された神殿で、ついに本当の儀式が執り行われる。
「待たせてすまなかったな、アギ。さあ、この戦乱の嵐を終わらせよう!」
「ええ、あなたたちと共に……!」
邦久とタマが再び固く手をつなぎ、アギと共にそれぞれの壺を掲げ、中央の聖杯へとすべての神の水を同時に傾けた。
北と南の翡翠色の水が、一つの水流となって【混ぜ合わされていく】。
二つの水が完全に一つに混ざり合って調和した瞬間、双子の祈りの共鳴とアギの『星の砂の真珠の宝玉』
が連動し、かつてないほど凄まじい【光の粒子】が爆発的に弾け飛んだ。
再建されたすべての神殿と聖杯がまばゆく起動し、鹿児島全体を包み込む巨大な「真珠色の防衛バリア」を完成させ、押し寄せていた怨霊の軍勢を跡形もなく完全に消滅させたのである。
戦いが終わり、尚寧王は島津家との和睦を受け入れ、政治の境界線は新たな平和の形へと形を変えた(※謝名親方は最後まで妥協せず、その強烈な意志を歴史に残した)。
島津義弘は、国を護り抜いた三人の強い絆に深く感銘を受け、彼らの功績を称えて二人を島津家で手厚く保護した。
アギは再び、再建された美しい『与論の神殿』へと還っていく。
もうその心に、かつての絶望はなかった。
本土側では、共に命の危機を乗り越え、唯一無二の神代の役割を全うした邦久とタマ、二人の間には、完全なる力を受け継いだ【子供】が産まれた。
アギが与論島で静かに祈りを捧げ続ける傍らで、この「二人で一つの神代」の愛の結晶から始まった純粋な守護者の血脈は、歴史の荒波を越えて、裏でひっそりと、しかし確実に未来へと繋がれていく。
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