テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
昭和の太平洋戦争末期。
鹿児島・上野原を中心とする一帯は、先祖たちが遺した神殿のネットワークにより、真珠色の防衛バリアで強固に護られていた。
周囲の海や街が空襲に晒される中、「なぜか鹿児島だけはどれほど爆撃をしても爆撃できない」という異常事態に、連合国・アメリカ軍は強い不審を抱き始める。
その原因が南西諸島を繋ぐ霊脈にあると突き止めたアメリカ軍は、冷徹な奇襲を敢行した。
漆黒の海から浮上した【アメリカ軍の潜水艦】が、与論島へ向けて猛烈な砲撃を開始したのである。
激しい近代兵器の暴力により、ついに与論島の神殿が崩壊。
アギは間一髪のところで神殿から『与論の壺』を救い出し、丸木舟に飛び乗って命がけで北の【渥美大島】へと避難する。
しかし、アメリカ軍の追撃は執拗だった。
霊脈の中心地である渥美大島の本神殿までもが激しい爆撃によって破壊され、鹿児島を護っていた防衛バリアは完全に維持できなくなり、消滅してしまった。
防衛線を失ったアギは、最後の拠り所である鹿児島・【上野原の神殿】へと命からがら避難する。
焼き尽くされる島々。
絶望の淵に立たされた上野原の神殿で、アギは邦久とタマの末裔であり、初代カイの魂を宿した青年──【拓海(たくみ)】と運命の出会いを果たす。
過酷な乱世のなか、アギを護るために真っ直ぐな視線で見つめる拓海。その優しさに、アギは過去の面影ではなく、目の前にいる拓海という一人の男に激しく心を奪われ、二人は深く恋に落ちた。
燃え盛る戦火の合間、二人は結ばれ、アギはそのお腹に【拓海との子供】を身ごもる。
しかし、無情にも運命は二人を引き裂く。
戦況が極限まで悪化した日本国から、拓海へ向けて【特攻(特別攻撃隊)の出撃命令】が下されたのだ。
「アギ、生きてくれ。俺たちの子供を、先祖が繋いできたこの命の結晶を、未来へ繋いでくれ」
生きては戻れない旅路へ向かう拓海。
そして、ついに日本はアメリカに敗れ、終戦を迎えた。
アギは涙を流しながらも、拓海との約束を果たすため、そして神代の力を宿す『双子壺』を敵の手から守り抜くため、破壊された上野原の神殿の【暗い地下の奥底】へと二つの壺を密かに隠し、封印した。
やがて、焦土となった戦後の激動の時代の中、拓海との愛の結晶である【子供】が誕生する。
父親を戦争で失った世界で、アギは一人、我が子を抱きしめて立ち上がった。
物資も食糧もない、混沌とした戦後の荒波のなか、アギは「子供を育て、次の世代へ命を繋ぐ」という拓海との約束だけを胸に、血を吐くような想いで必死に奮闘し続けた。
何世代もの生と死を見送ってきたアギにとって、我が子の成長と、その子がさらに次の世代へ命を繋いでいく姿だけが、暗闇を照らす唯一の光だった。
だが、アギの身体からは、病も、老いも、死すらもが排除されたままだった。
子供が大人になり、孫が生まれ、愛する我が子たちが自分を追い抜いて老いていき、やがて寿命を迎えて死んでいく。
そのすべての哀しみと、命が繋がっていく歓びを、アギは不老不死の身体でその身に刻み続けながら、ただ一人、激動の昭和、そして平成の時代を駆け抜けていく。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
49