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「誰かを愛することは、その人に
幸福になってもらいたいと願うことである」
-トマス・アクィナス
ザー………キュッ
京蔵のお兄さんの言葉に甘えて、シャワーを借りる。水を浴びると言う観点では雨を浴びたところで一緒だと思っていたが全然違った。、何と言うかシャワーの方がすごくスッキリする。
俺に助けを求める京蔵の顔は、あの時の泣き顔と近しいものがあった。私はあなたより下の立場ですと言わんばかりの目元、あの状況でなら何でも言うことを聞いてくれそうで興奮する…
…あまり人の家でこーゆう妄想はやめよう。友達で、ましてや本人の家の風呂で抜くなんて行為、社会的に終わる。もしそんなのバレたら友達でいれなくなる、それだけは嫌だ。
「シャワーありがとうございます。」
「いーのよいーのよ!うん、俺の服ぴったりだな。かんじくんの体格に合う服俺のしかなかったから、あってよかった〜!」
「………ようやく出てきたか…もう限界だ、俺はもう入るぞ」
俺の脇元をすっと横切っていった京蔵は小走りで風呂場に向かっていく。兄に躾けられ、疲れ切ったであろう目つきが全てを物語っている。ゆっくりしてねと言われたとはいえ、ゆっくり入りすぎたか…?ごめん…京蔵…。
「お風呂ありがとうございます…じゃあ俺家の家事とかあるんで、」
「あぁー!そっかそっか、かんじくん忙しかったよね〜。ごめんねー引き止めちゃって………きょーちゃぁーん!かんじくんに挨拶しなよー!」
「じゃあなぁっ!以上!」
京蔵は風呂場から乱暴に言葉を吐き捨て、ガタガタと風呂に入る準備をする音がなる。その後京蔵のお兄さんの車に揺られながら自宅へと向かってゆく。なんて事のない世間話が飛び交う車内で、莞爾はここまでに起こった急展開の雰囲気に酔う。好きになってまだ数日の出来事、これがあまりに日常に溶け込みすぎて毎度京蔵の一挙一動に戸惑いを隠せない。
「…かんじくん、なんか前会ったときとなんか変わった感じするねぇ」
「………へ」
「なんか満足そうだ、……もしかして忙しくて風呂入れてなかったとか? 」
「いや、ちゃんと入ってます」
「えー…なんだろ。好きなことできたとか?」
「っえ…特に…は」
「え、今のマジの反応じゃん。かんじくん図星?」
「まぁ、嘘ではないです……あんまり他の人にこの話題言わないで欲しいです」
「いーじゃぁん!甘酸っぱいねぇー!俺ら男ってさぁ、やっぱ好きな子って守ってあげたくなっちゃうじゃん?」
「守ってあげる…」
俺は普段、守られる側だった。両親が世界から守ってくれて、その両親を亡くした俺を友達や周りの人なんかが守ってくれて。…ずっと俺は守られてきた、守るものがもうないから。
でも、今は守りたい人がいる。守りたいほど好きな人がいる。
「………そうですね、すごく守りたいです。」
「素直だねぇ〜うまくいくことを願うよ!」
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