テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
続いて第三話
888888👏
ではでは、いっきまーす!
放課後。
「冴。」
「……なに。」
「今日、部活ない?」
「ない。」
「じゃあ帰ろ。」
「なんで一緒に帰る前提なの。」
「だって方向一緒じゃん。」
「……。」
「嫌?」
「……別に。」
「よし。」
「勝手に解釈するな。」
二人は昇降口を出る。
夕日が長い影を作っていた。
しばらく無言で歩いていると、奏斗がぽつりとつぶやく。
「冴ってさ。」
「なに。」
「笑うとかわいいよね。」
「……。」
「だからもっと笑えばいいのに。」
「嫌。」
「なんで?」
「恥ずかしい。」
その一言に、奏斗の足が止まる。
「……え?」
「なに。」
「今、自分で『恥ずかしい』って言った?」
「言ったけど。」
「やば。」
「何が。」
「かわい。」
「……帰る。」
歩く速度が急に速くなる。
「待って待って!」
「来るな。」
「いや、無理。」
「無理じゃない。」
「無理。」
「なんで。」
「冴がいるから。」
「意味わかんない。」
さむこ
1,368
さむこ
88
152
「俺も。」
「……。」
思わず吹き出しそうになる。
でも笑ったら負けな気がして、必死に口元を押さえた。
「今笑った。」
「笑ってない。」
「絶対笑った。」
「証拠。」
「目。」
「……。」
「目が笑ってた。」
冴はふいっと顔を背ける。
耳だけが赤い。
(まただ。)
奏斗は最近、何度も思う。
“この子、かわいい自覚ないんだ。”
だから困る。
照れた顔も。
小さく笑う顔も。
素直じゃない返事も。
全部、自分だけが知っている気がして。
「……。」
(だめだ。)
(好きになったかもしれない。)
その瞬間だった。
「奏斗。」
「ん?」
「電柱。」
「え?」
ゴン。
「いっっっ……!」
考えごとをしていた奏斗は、見事に電柱へぶつかった。
数秒の沈黙。
「……。」
冴はじっと見つめる。
「大丈夫……?」
心配そうな声。
その一言だけで。
奏斗の心臓は、さっきぶつけた額より痛かった。
(やっぱり。)
(好きだ。)
-–
「……痛い?」
冴はポケットから小さな保冷剤を取り出した。
「コンビニでもらったやつだけど。」
「使う?」
「……え。」
「冷やした方がいい。」
奏斗は保冷剤を受け取ろうとして、動きを止める。
「どうしたの。」
「いや……。」
「?」
「冴って、優しい。」
「……普通。」
「普通じゃないよ。」
「電柱にぶつかった人を放っておけないだけ。」
「じゃあ、誰でも?」
「……。」
少しだけ間が空く。
「……たぶん。」
その”たぶん”を聞いて、奏斗は思わず笑った。
「じゃあ、その”たぶん”が俺だといいな。」
冴は何も答えない。
でも帰り道、ほんの少しだけ。
二人の距離は、昨日より近くなっていた。
コメント
1件
うわあ……めっちゃ好きな雰囲気です🥺 奏斗の「好きになったかもしれない」の自覚、めちゃくちゃキュンときました。 電柱にぶつかるところ、思わず笑っちゃったけど、その後冴が保冷剤出してくれたシーンが優しすぎて…「たぶん」って言いながらもちゃんと奏斗のこと気にしてるんだなって伝わってきて、もうだめです。 無自覚なかわいさって罪ですね。続きすごく気になります…!