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🌸side
アイツが風呂に入って数分。
タオル一枚だと足りないかなと気付いた。
🌸「おい、もう一枚タオル、ここ置いとくな。サイズ小さかったら言って……」
言葉が止まった。
シャワーを浴び終え、濡れた髪をタオルで拭いているそいつの背中や肩まわりが露わになっていた。
そこには、そのおっとりした顔立ちからは想像もつかない、赤黒いアザや、刃物で切り裂かれたような鋭い白っぽい古傷が無数に刻まれていた。
「 わッ、らんさん、お洋服ありがとうごさいます…っ…!」
🌸「……!?っ、お前、その体……、」
「…?…ぁ、これですか…?」
🌸「それ、どうしたんだよ。ただ転んだとか、そんなレベルの傷じゃねぇだろ……?」
「分かんないんです……。鏡を見て、俺もびっくりして……。」
「でも、不思議と痛くはないんです。ただ、なんだかすごく……冷たいものを握ってたような感覚だけ、残ってる気がして……」
男は自分の手をじっと見つめる。
一瞬だけ、ほんの一瞬。
その瞳から光が消え、冷徹な「何か」が宿ったように見えた。
🌸「…ゾクッ…」
🌸「………冷たいもの?」
「ぅうん、なんでもないです……ほわぁ、らんさんのお洋服、いい匂いがする…!」
🌸「あ、あぁ……。なら良かった。……とにかく、2時だからもう寝ようぜ」
俺は胸のざわつきを抑え込めないまま、その夜は眠りについた。
翌朝。俺はうるさく何度も鳴るアラームの音で目を覚ます。
🌸「ぅ”…ん”~…ふぅ……。やべ、もうこんな時間か。今日も仕事…。行きたくねぇ……。」
少ししぶり、ようやく体を起こした。
周りの散らかったタオルなどを見て、昨日の出来事を思い出す。
そっか…昨日、男を拾ったんだ…。いや0時回ってたから今日か…?
🌸「……ん? なんか、めっちゃ良い匂いがする……」
リビングへ出ると、キッチンからトントンと小気味よい包丁の音が響いている。
そこには、俺のスウェットの袖をまくり、エプロン姿で楽しそうにフライパンを振るう男の後ろ姿があった。
「ぁ、らんさん…! おはようございます…! 」
「勝手にご飯作っちゃってごめんなさい…、」
「ちょうど今、ご飯ができたところで…」
🌸「おはよ。……って、お前これ、何作ったんだ?」
テーブルの上には、洋食屋顔負けの綺麗な形をしたオムレツ、完璧なキツネ色に焼けたトースト、色鮮やかなサラダに、丁寧に淹れられたコーヒーが並んでいた。
盛り付けもプロ級に美しい。
「あんまりしっかりご飯を食べられてなさそうだったので…、」
「っ…その、っ…冷蔵庫にあるもので作ってみたんですけど…。迷惑、でしたよね…、」
🌸「…いや、めっちゃ嬉しい。ありがとな」
🌸「……すげぇな。お前、記憶ないのに、なんでこんなプロみたいなこと出来んの?」
「… なんか包丁を持ったら身体が勝手に動いちゃって…お野菜を切るのも、お肉の筋を外すのも、なんだかすごく簡単で……。」
「ぁ…冷めないうちに食べてください…!」
🌸「……じゃあ、いただきます。」
そういってオムレツを一口食べる。
🌸「……っ!! うっま!!! なにこれ、お店の味じゃん!!」
「本当ですか…? よかったぁ…! 」
🌸「ほんと美味しかった…」
🌸「こんなうまい飯クソ久しぶりに食べたわ…」
「…迷惑じゃなければこれからご飯、俺が作りましょうか…?」
🌸「まじか……。俺、昨日までコンビニ弁当で生き延びてたから、これ毎日食べられるなら天国だわ……」
「 よかった…!これから毎日作りますね…!」
🌸「……あぁ、ありがとう」
ちゃっかりずっとここにいる宣言したな…?
🌸「はッ…!!ヤバい時間ないっ!!」
俺は急いで家を出た。
……はぁ…疲れた……。
なんとかまだ日越してない…!!
晩飯………さすがにアイツ寝てるよな…。
恐る恐るリビングのドアを開ける。
🌸「ただいまー…」
起こさないように小声で…
部屋はお出汁のいい匂いが漂っている。
「おかえりなさいっ…!」
「お仕事遅くまでお疲れ様です…!」
🌸「うわっ…びっくりした…まだ起きてたん…!?」
「らんさんが帰ってくるまで待ってようかなと思って……」
「…晩ごはん出来てるんですけど…食べ、ます…?」
🌸「っ…!!食べるっ!!✨️」
🌸「めっちゃうまい……身体にしみるわ~…」
「よかったです…!あ、そうだ。らんさんがお仕事に行かれている間、俺の……あ、僕の、昨日持っていたカバンの中身を少し整理したんです。何か手がかりがあるかもしれないと思って……」
🌸「お、マジか? 何か分かったのか?」
「はい、カバンの奥のポケットに、これが…」
少し緊張した面持ちでらんに、免許証や財布に入っていたカードなどを差し出す。
そこには、彼の顔写真と共に、はっきりと名前が印字されていた。
🌸「どれ……。……『すち』。これが、お前の名前か」
すち「すち……。……あ、なんだか、すごくしっくり来ます。俺、すちって言うんですね……!」
すちは自分の名前が分かったことが純粋に嬉しいようで、パッと顔を明るくした。
🌸「そっか、すち、か。苗字とか住所のところは…、擦れてて全然読めないな。…お、えぇっと…20…4才、?え、同い年じゃん!!」
🍵「わ…そうなんだ…!」
「名前と年齢が分かっただけでも大前進じゃん。良かったな、すち」
🍵「はい……! らんさんに名前を呼んでもらえて、すごく嬉しいです……。あの、らんさん」
🌸「ん?」
🍵「名前が分かっても、僕、まだ何も思い出せなくて…その、行くところもないんです。」
🍵「だから……もう少しだけ、ここに置いてもらえませんか……? 俺、らんさんのために、もっと美味しいご飯いっぱい作ります、っ…」
🌸「………はぁ、…」
🌸「分かったよ。お前が記憶戻るまで、ここにいていいよ。その代わり、毎日美味い飯、作れよな?」
🍵「っ…!!はい…ッ!! ありがとうございます、らんさん……!」
🌸「……」
🌸「同い年なんだから敬語外そうぜ」
🍵「っ…!わッ…わかり……った!!」
🌸「っ…、w」
🌸「あとらんさんは硬いから、らんでいいよ」
🍵「ぅえ、…らん…らっ…らんん…?」
🌸「ん、これから慣れるだろ、w」
すちは一安心したように、笑顔を浮かべた。
しかしらんは、そのカードに写っている『すち』の表情が、目の前のほわほわした彼とは違い、どこか冷たく静まり返っているように見えたのが、ほんの少しだけ引っかかっていた。
コメント
1件
うわ、名前が「すち」ってわかってよかったね…! でも免許証の写真のあの冷たい表情、今の彼とは全然違うのがすごく気になる。記憶をなくす前のすちは何者なんだろう。背中の傷も含めて、不穏な空気とあったかい日常のギャップがいいなあ。同い年ってわかって敬語外す流れも自然で、ほっこりした。続きが気になる!
るこら。
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はのん
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