テラーノベル
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その日の夜。
こさめは眠れなかった。
ベッドに座り込んだまま、ぼんやり床を見つめる。
来週。
あと数日。
それだけで、すちはいなくなる。
🦈「……やだ、だなぁ」
何度呟いても現実は変わらない。
胸が痛い。
息が苦しい。
やっと思い出せたのに。
やっと、“また会えた”のに。
コンコン、と部屋の扉が鳴る。
先輩「……入るぞ」
先輩看守だった。
こさめは顔を上げない。
先輩はしばらく黙ったあと、静かに部屋へ入ってきた。
先輩「泣いたか」
🦈「……うるさいです」
鼻声で返す。
先輩は小さくため息をつき、缶コーヒーを机に置いた。
先輩「飲め」
🦈「苦いから嫌い……」
先輩「ガキか」
🦈「まだ子供だもん‥」
先輩「子供はこんなとこ居てはいけません」
少しだけ空気が緩む。
でも、沈黙はすぐ戻ってきた。
やがて、こさめがぽつりと呟く。
🦈「……なんで、止められないんですか」
先輩は答えない。
🦈「生きててほしいって思うの、そんなにだめなんですか」
震える声。
先輩は静かに目を伏せた。
先輩「……俺たちは、判決を変える立場じゃない」
🦈「でも!」
先輩「こさめ」
低い声。
それだけで、言葉が止まる。
先輩は苦しそうに続けた。
先輩「死刑囚に情を移すなってのはな、自分が壊れるからだ」
静かな部屋に、その声だけが響く。
先輩「助けたいって思っても、届かない時がある」
先輩「どれだけ、いいやつでも‥」
こさめは唇を噛む。
悔しくて。
苦しくて。
涙がまた滲む。
先輩はそんなこさめを見て、小さく息を吐いた。
先輩「……でも」
🦈「……?」
先輩「最後までそばにいてやれ」
こさめが顔を上げる。
先輩は窓の外を見たまま呟いた。
先輩「あいつ、多分それだけで救われる」
翌日。
こさめは朝一番ですちの独房へ向かった。
扉の前に立つだけで胸が痛い。
あと何回、こうして会えるんだろう。
🍵「……おはよ」
すちが先に気づいた。
いつも通りの、穏やかな笑顔。
その普通さが、逆に苦しかった。
こさめは鉄格子の前にしゃがみ込む。
🦈「寝れました?」
🍵「少しだけ」
🦈「こさめは寝れてません」
🍵「知ってる。顔ひどい」
🦈「すちのせいです」
🍵「また俺?」
少し笑う声。
でも、その目元も少し赤かった。
たぶん、寝れてない。
二人とも同じだった。
しばらく沈黙が落ちる。
やがて、すちが静かに口を開いた。
🍵「……怖い?」
🍵「執行の日」
その言葉に、胸がぎゅっとなる。
こさめは小さく頷いた。
🦈「怖いです」
正直に答える。
すると、すちは少しだけ笑った。
🍵「俺も」
🦈「……え」
🍵「ずっと平気だと思ってたんだけどね」
🍵「こさめくんのせいで、怖くなっちゃった」
🍵「こさめくんのせいだよ」
その言葉に、こさめの目が熱くなる。
すちは鉄格子越しに、そっとこちらを見る。
🍵「生きたいって思うの、こんな苦しいんだね」
泣きそうな笑顔だった。
こさめはたまらず鉄格子を握る。
🦈「じゃあ、生きようよ……!」
🦈「こさめと、一緒に……」
その瞬間。
すちの呼吸が止まったみたいに見えた。
でも次に浮かんだ笑顔は、ひどく優しかった。
🍵「……うれしい」
🍵「そんな未来、想像してくれたこと」
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コメント
1件
読ませていただきました…。先輩の「最後までそばにいてやれ」という言葉が、本当に深く響きました。こさめの「生きててほしいって思うの、そんなにだめなんですか」という問いかけに、胸がぎゅっとなりました。そしてすちの「生きたいって思うの、こんな苦しいんだね」という台詞…。二人が同じ怖さを抱えているのに、だからこそ「うれしい」と言えるその切なさに、涙が止まりませんでした。あおい📖