その日、アフレコスタジオでの収録中。入野自由はいつも通り真剣にセリフをこなしていた。周りの雑音も気にせず、彼の集中力は高まっていた。だが、隣に座っている宮野真守の気配が、どうしても気になる。
宮野真守は、いつもおおらかな性格で、仲良くなると少し意地悪な一面を見せることが多かった。そんな彼が、入野自由の隣で何かを調整している。その距離の近さに、入野自由は少し戸惑いを感じていた。
「じゃあ、次のセリフ、自由。」宮野の声に、入野自由は少しだけ顔を上げた。
「うん…」入野自由は静かに答え、マイクに向かってセリフを発した。だが、次の瞬間、宮野真守の手が軽く入野自由の腕に触れる。
「…っ!」入野自由は驚いて反応したが、すぐに周りのスタッフが気づかないようにしていることを察する。宮野真守の手は、あまりにも自然に、あまりにも意図的に触れられた。
「セリフ、もう一度お願い。」宮野は意図的に少しだけ指先を入野自由の腕に滑らせ、そのまま手を少しだけ押し当ててきた。まるで何もないかのように、気づかれないように触れているその手に、入野自由は一瞬息を呑む。
「…マモ…」入野自由は、声を漏らさないようにしながらも、その反応が体に出てしまう。触れられるたびに、彼の敏感な肌は強く反応してしまう。
宮野真守はその変化に気づき、顔を合わせずにニヤリと笑みを浮かべた。「自由、どうしたの? セリフがうまく言えない?」
「ちょっと…手が…っ、マモ!」入野自由はセリフの途中で詰まってしまった。顔を赤くして、何とか自分を取り戻そうと必死だが、宮野の手はもう一度、今度は少し強めに、彼の肩に触れる。
「なんだ、自由ってこんなに繊細だったんだな。」宮野は、入野自由の動揺を楽しむように、さらなるスキンシップを強化していく。手は今度は、入野自由の背中に触れ、軽く撫でるように動かした。
「マモ、やめてよ…」入野自由は、必死にその手を振りほどこうとするが、宮野の腕にしっかりと捕まれている。彼の体がまた反応してしまうのを抑えきれない。
「でも、自由…」宮野は甘い声で、まるで何も考えていないかのように言った。「お前が反応するから、どうしても止められないんだよ。」
その言葉に、入野自由はますます顔を赤くしてしまった。彼は何とかその手を振りほどこうと試みたが、うまくいかない。さらに、周りのスタッフが気づかないように静かにしていることが、逆に彼の恥ずかしさを倍増させる。
「マモ…お願い…」入野自由は、声を出さないように、必死に宮野から離れようとする。だが、宮野はその反応が楽しそうで、ますます距離を縮めていった。
「何をそんなに照れてるんだよ。」宮野真守は言いながら、もう一度肩に手を回してきた。入野自由の心臓がドキドキと速くなり、その度に甘い声が漏れそうになる。
「…っ、も…っ、やめて…!」入野自由は声を必死で抑え込んだが、その小さな声すらも宮野には気づかれていた。
「自由、いい声だよ。」宮野は満足そうに言い、やっと手を離すように見せかけたが、入野自由はその後も警戒していた。アフレコの間、彼の心はどうしても宮野真守から離れられず、どこか集中できていない自分に気づき始める。