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矢太郎は汽車に乗っていた、まもなくトンネルに入る時隣に誰か腰かけた。甘く芳醇な香りだった、隣に座った人を横目で見るとスカーフを被った中年女性だった。よく見ると葡萄をもぎ取り口に放り込んだ、艶のある大粒な葡萄だった。視線に気付いたのか、女性は葡萄を差し出してきた。矢太郎はお礼を伝え、受け取った。
汽車の景色はトンネルから抜け、雪溶け畑を写していた。矢太郎は編集社の都合で出張にきていた。記事にする内容は葡萄酒の酒蔵を取材するというものだ。目的の駅に着くとそこで隣に座っていた女性も一緒に降りた、どうやら同じ駅に乗り合わせたらしい。無人の駅に着いた、時代を感じる木造の建物がこじんまりとたたずんでいた。矢太郎が道を進んでいると、先程の女性も同じ道のりらしい。矢太郎が葡萄酒の酒蔵に着くと、酒蔵のお偉いさんらしき人が出迎えてくれた。
順調に取材を終わらせ、宿に一泊した。特に気になることもなかったので、そのまま酒蔵に挨拶に行き帰ろうと思ったが少し考えた。そよにこの葡萄酒をお土産に買って行こうかと、ついでにこの酒に合うとすすめられチーズと言う乳製品も買って帰った。帰路に着く頃にはもう日暮れで星がちらりと見えていた、そよに電話し探偵事務所で待ち合わせする事にした。そよは葡萄酒は初めてとのことだった、買った葡萄酒は飲みやすく買ったチーズもよく酒に合っていた。二人で外を眺めて月見酒を交わした、たまには平和に飲むのも悪くない。
矢太郎とそよは二人揃って二日酔いになったらしい。