“さのじん”

(おまけのさのside)

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“さのじん”がアツいらしい。

Xを初めてみて気づいたことがある。仁人って想像してた以上に、み！るきーずから「かわいい」と思われているみたいだ。

昔からの付き合いだからもちろん、色んな仁人をたくさん知ってる。かわいい？ところがあるのももちろん…知ってる。

けどXでのみ！るきーずの呟きを見てみると、予想以上だった。

インスタやTikTokをやっているだけじゃ気付けないこともあるなあと思いつつ、色々考えを巡らせる。

(仁人をもっとアピールするならそこか)

最近はyoutubeやTikTokで積極的に仁人に対して「かわいい」なんてちょっかいかけてみたり、観察してみたり、自分と正反対だなんて言われるその存在について改めて考える時間も増えたかもしれない。

いままでふんわりと抱いていた仁人に対する“自分とは価値観が違う分、お互いを補える存在”なんていう、インタビューで答えがちのありきたりな言葉が、まだそれよりぴったりな言葉があるんじゃないかとさえ思えてきている。

俺が関わらせてもらった新曲だって。オレが好きなんでしょ？ってこれから何度もステージで問うたび、自分はみ！るきーずからこんなにも愛されている存在なんだってこと、もっともっと感じてほしい。

リーダーとして頑張ってるお前は本当に凄いってこと。

み！るきーずが“さのじん”って言ってくれる俺らの関係はきっと、仁人からしたらファンサービスに近い感覚なのかもしれないけど、俺がみ！るきーずの幸せのためだと言って仁人にするあれやそれ、全くの冗談だと思われても困る。

時々やりすぎて自分でも恥ずかしいことあるし、いまの仁人ほんとに嫌そうだったな〜なんて反省することも（…凹むことも）あるけど、その度ちゃんと謝るよ。

だから嫌いにはならないでほしい。

「仁ちゃん」

撮影終わり動画も回してないのに、そう呼んでみる。

動画回ってんの？なんて怪訝な顔をしている仁人に「まわってないけど」と答える。

最近はいちいち問い詰めるのすらやめたようで、なに？といつもの調子で言葉少なく返ってきた。飽きてるな？

柔太朗が呼んでるから行こう、とこちらも努めていつも通り伝えて一緒に部屋を出た。

……動画以外のこういうテンション疲れるから嫌？うざかった？

一瞬頭を過ぎる心配事。最近こんなくだらないことでいちいち不安になっている自分に若干引く。

もう何年一緒にいんだよ！今更ッ！！と思いつつ、自分はいつも仁人の心を読み切ることができず苦労しているのもまた事実。

やっとわかってきたと思った矢先、そんなことはなかったと思い知らされるなんてことしょっちゅうだ。

お互いしばらく無言で歩く。

ここで下手に揶揄うのはもうやめとこ……

「勇ちゃん」

後ろからたしかにそう呼ばれた。

仁人が俺のことをそう呼ぶなんて、俺が仁ちゃんと呼ぶより珍しいことだ。しかもこんな謎のタイミングで。

だって今俺以外誰もいないよ！？

驚きを悟られないよう返事をすると、予想に反して頼りない声が返ってくる。

「…いやなんでもなかったわ」

あ。これさっき俺が仁ちゃんて呼んだからその仕返しのつもりなのだろうか。

気づいた途端気が抜けた。なんなんだよ、もう…

身構えていた反動でつい「さっき俺が仁ちゃんて呼んだの気にしてんの？」なんて、揶揄うように口をついてでてしまった言葉に、仁人はあきらか動揺してすっとぼけている。

かわいい

いつからかおそらく本心。

そんなふうに思ってしまっている自分を

こみあげてくるなんともいえない愛しさを

ふっと笑って誤魔化した。