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☆☆☆
宮本がゴールした瞬間に、盛大なファンファーレが場内に鳴り響いた。ヘルメットをかぶっていてもハッキリわかるくらいのボリュームは、相当なものだと思われる。
「ゴーカートを自分の手足のように操り、安定感のある走りで圧倒的な勝利!! トップは一番後方を走っていた宮本さんです! タイムは今までのコースレコード! 8秒も縮んでます!」
うるさいくらいに盛り上がるサーキット場を尻目に、静かにゴールした橋本は、晴れやかな気持ちでゴーカートを降り、ヘルメットを外した。先にゴールしていた笑顔の宮本に、榊と和臣が興奮を隠しきれない様子で話しかけているので、どうにも中に入りにくく、足が重たくなる。
「陽さん、お疲れ様でしたっ!」
3人の輪に入りにくそうに近づく橋本にいち早く気づいた宮本が、両手を左右に大きく振ってアピールする。誰よりも先に自分の存在を察知した恋人に、橋本は少しだけ照れながら声をかける。
「ぉ、おう。雅輝すごいな! あの走りは後ろで見ていても、驚きしかなかったぞ」
苦笑いした橋本が話に加わると同時に、テントで放送していた佐々木も、走ってやってきた。
「宮本さん、本当に素晴らしい走りでした! 僕の出した記録を、簡単に超えちゃうなんて」
「えっと…あのすみません。皆で走るのが楽しくて、つい暴走しちゃいました」
暴走という言葉で自分の走りを表現した宮本に、橋本をはじめ榊や和臣までもが、意味ありげな微笑みを絶やさなかった。
「宮本さんは、なにかやっていたんですか?」
なにも知らない佐々木の問いかけに、宮本は呆けた顔を見せる。
「へっ?」
「僕はゴーカートの全国大会に何度か出ているんですけど、宮本さんのような走り方を見たことがありません。なんていうか、独特のリズムがある感じですよね」
「あ、その……むぅ」
「雅輝は公道で走り屋をしていた。ただそれだけだ」
宮本が口ごもると、橋本が代わりに真実を告げた。
「公道で走り屋……。それであんな走りができたんですね」
佐々木は瞳をキラキラさせながら、宮本の右手を両手に取り、ぎゅっと握りしめる。すぐ傍でそれを見ていた橋本は、黙ったまま繋がれた手を眺めた。