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〈フランス視点〉 xx年前
最近、向かいの家に誰かが引っ越してきた。兄さんが言うには『帰ってきた』らしいけど。
正直、興味の欠片もない。誰かが住んでいた記憶もないし、どうでもいいし。僕には関係ない。
「やあ、いい天気だね。」
ある日、外で絵を描いていたら突然声をかけられた。
兄さんより少し背の高い、知らない男。
「君がフランス帝国くんの弟かな?」
兄さんの知り合いなのか否か。僕には判別がつかない。
「この前帰ってきたんだけど...お兄さんから聞いてない?」
「聞いていますけど、」
「そっかそっか。うーん、僕は彼に随分嫌われているからね。その様子だと君にあまり細かいことを伝えなかったんだろう。」
少し考えるそぶりを見せ、わざとらしくニヤッと口角を持ち上げて見せる。
その動作がとてつもなく気持ち悪かった。
「まあいいか。僕はイタリア王国。よろしくね。」
そう名乗りながら右手を差し出す。
「フランスです。」
僕も一応名乗りはするが、差し出された手を握り返したりはしない。
「…あー、握手を知らない?」
この男は本気でそう思っているのだろうか。僕は作り笑顔を向けながら質問に答える。
「兄様の許可なくできません。」
「オーケーオーケー、そういえばそうだったね。」
あー、そうだすっかり忘れていた。
とでも言うように、ポンっと手を打つ。
その、いかにもわざとな動作に腹が立ってくる。
面倒だ。一刻も早く切り上げたい。
「明日はフランス帝国も君も家にいるかい?」
「え?」
突然投げかけられた質問に、思わず拍子抜けした声が出る。
「明日、フランス帝国も、君も、家に、居るかい?」
ニヤリとした表情のまま、わざとらしい区切りをつけた喋り方をする。嫌悪の表情がでないよう必死に取り繕い、何とか答えた。
「…外出しないよう伝えておきます。」
「そう、よろしく。それじゃあ、また明日。」
殴ってやりたい気持ちを必死にこらえ姿を見送る。
とてつもなく嫌いなタイプの男だ。苛立ちがこみ上げて来て仕方がない。
けれど、兄さんの知り合いならば旧国なのだろう。
大人しくしておくに尽きる。
完全に姿が見えなくなったところで踵を返し、帰路につく。
こうなったら一刻も早く兄さんに伝える他ない。
家に着くや否や、上着を脱ぎもせず兄さんの部屋に駆け込む。
ベッドで寝ている兄さんをたたき起こすと同時に、まくしたてる様に先程のことを伝えた。
「あー、、、ああ、イタリア王国ね、、。」
寝ぼけながらも理解したようで、「来んのかよ。」と小さくつぶやいた。
イライラの収まっていない僕は、八つ当たりでしかないけど兄さんに怒鳴った。
「なんなんだよアイツ!!!」
「うるっさ。」
兄さんは怪訝そうに眉を顰め僕を睨んだ。それでも構わず続ける。
「腹立って仕方ないんだけど!」
「そういう奴なんだよ、あいつはずっと。」
「だからって、」
反論しようとしたところで突然、兄さんの雰囲気が変わっった。
「…喧嘩売ったりしてねえよな。」
「は?当たり前じゃん。」
兄さんは一瞬、探るような目つきで僕を見た。
その目は氷よりも冷たくて、背筋にぞくっとしたものが走る。恐怖から反射的に言葉を紡ぎ出し、一歩後ずさる。
「あっそ。はーめんどくせえ。何しに来るんだよ、、。」
それだけ言い、兄さんは再度ベッドへ潜り込んだ。
まだ冷や汗が止まらない。
ここに居る気も、再び話しかける気も起きなかった僕は静かに部屋を後にした。
翌日、イタリア王国は本当にやってきた。
「朝から何の用だカス。」
兄さんはかなり機嫌が悪い。朝からずっとこの調子だ。余程この男が嫌いなんだろう。
「息子を連れてきたんだ。」
〈息子〉という単語に反応したのか、眉間に皺を寄せる。
「…お前今いくつだよ。」
「27」
「で?」
「君の弟が今いくつか知らないけど、年は近いと思うから。」
「はあ、仲良くさせろと?」
「損はないんじゃないかな?」
「本人に決めさせる。」
「うん。なんでもいいよ。」
そう言うと、イタリア王国は席を立った。
部屋から出て2分半ほどして戻ってくる。その後ろに小さい影。
「いやー、なんだか人見知りが激しくてね。」
「それでうちの弟と馴れ合わせろと?」
「君の弟なら教養もあって優しそうだし、ピッタリかなって。」
「ほーう?」
「イタリア、ちゃんと前出て挨拶しな…ほら。」
そう呼ばれいやいやながら出てきたその少年は、長い白まつ毛に今にも泣きだしそうな潤んだ瞳、小さく華奢な身体。その全てが完璧で可愛らしく僕は一目で心を奪われた。
「あ…えと、、い、いたりあ、イタリア…です、。」
言い終わるや否や、サッと隠れた。どうやら泣いてしまった様だ。
「まあ、考えておいてね。それじゃ。」
そういうと、彼らは踵を返し帰っていった。
「あああもう、アイツは本当に性懲りもなく身勝手極まりないな。」
あからさまに嫌悪をむき出し悪態をつく。心底うんざりしているようだ。
「兄さん」
「大体仲良くするわけないだろう、馬鹿め。」
呼びかけても反応することなく愚痴を吐き続ける。いつもなら早々に退散するところだが、今日は違う。
「兄さん。僕あの子のこと好き。」
「………は?」
僕の突然の告白に兄さんは目を丸くした。
「欲しい。」
「は、何を言っているんだお前。」
かなり困惑した様子の兄を置いて言葉を続ける。
「あの子の全てが欲しい。いいよね?」
「な、、」
「僕のものにする。あの子には僕しかいないように。」
「…お前」
兄さんが何か言いかけたけど、それよりも、彼をどうやって僕だけのものにするかを考えていて何も聞こえなかった。
聞きたくなかった。
2日後、彼を家に招いた。兄さんは嫌な顔をしているが、当然、僕は無視を決め込んでいる。
「おはよう。僕はフランス。よろしくね。」
にこやかに語り掛ける。
今まで無駄だと思いながらも練習してきた笑顔が役に立った。
「う、うん。」
ぎこちなく弱々しい返事。それも可愛らしい。
「じゃあ、僕の部屋で遊ぼう。いい?」
「…うん。」
無理に事を進めるのはよくなさそうだから、ゆっくり丁寧に時間をかける。
「イタリア君は何がしたい?」
この子のしたいことをさせよう。そう思って問うた。
「…おはなし、とか、、」
内向的なのか。解しがいがありそうだ。
「いいよ、どんなお話?」
「お友達…って、どうしたらなれるの?」
「お友達のなり方が知りたいの?」
「うん」
これは好機だ。逃すわけにはかない。
「じゃあ、僕とお友達になってみる?」
「えっ…?あ、あの、違うくて、、」
「?」
違う?何が?
「お友達になりたい子がいて、それで、」
僕の頭はとてつもなく混乱していた。
僕以外にもう知り合っていて友達になりたい相手がいる…?
なんで?僕だけじゃないの?
「その子ね、僕のことお友達じゃないって、だから」
言いかけた言葉を遮る。
「イタリア君。それ、嫌われてるんだよ。」
「…え?」
あえて冷たく言い放った。まずは心を折るのが先らしい。
「その子はイタリア君のこと嫌いなんじゃないかな。」
「な、、なんでそんなこと言うの?」
動揺しているようだ。
「イタリア君、僕は君が好きだよ。」
「え、えっ?どういうこと、わかんないよ」
「イタリア君のこと嫌ってる奴より、僕とお友達になろう?」
「わかんない、なにをいってるの?なんできらいなの?ぼく、」
言いかけて、彼は泣いた。
混乱しているときはひどく優しく接するのがいいらしい。
泣き出したから、決めていた通り優しく慰めた。
けれど彼は帰ると言って泣き止まなかった。
惜しいけれど、まあ仕方がないので家に帰すことにした。
時間さえかければ彼は僕に堕ちてくれる。絶対。
〈イタリア視点〉
お父さんに連れられて、誰かの家に来た。
中から出てきた人とお父さんは仲良しみたい。温かい家の中に招き入れられた。
ホットミルクを一杯もらった。飲んだら二階に上がってすぐ右の部屋へ行きなさいとお父さんは言う。
言われた通り、飲んでから二階へ上がる。
そして言われた通りの部屋に入ると、そこには僕よりちょっと年上に見える男の子がいた。
僕に対して背を向けているため彼の顔はわからない。
とりあえず挨拶をしなければ、と声をかける。
「あ、あの」
「…」
返事がない。聞こえていなかったのかなと思い、再度声をかける。
「あのっ…!」
「聞こえている。うるさいから話しかけないでくれ。」
「ごっ、ごめんなさい」
突然怒られたことに驚いて反射的に謝る。
口調が強くて怖い。泣きたかったけど一生懸命我慢した。
うるさくしなければ良いかなと思って、部屋を探索しようと思い立った。
男の子は何かを組み立てているし、さっきの事もあるからあんまり近づきたくなくて、、、。
部屋には沢山の模型や部品、本がある。でも全体はすっきりと片付いているから、男の子の性格がよく分かる部屋だと思う。
沢山の模型を眺めていると、なんだか宝物を見つけたみたいな気分になってきて、一つ、手に取った。
「きれい…」
つい声を出してしまった自分に驚き、勝手に模型を触っていることも含めてまた怒られるんじゃないかと思い、慌てた瞬間、手を滑らせた。
大きい船の模型。それゆえ怖くてその場で目を瞑ることしかできない。
模型が床に叩きつけられ、一際大きな音が静寂に染まっていた部屋いっぱいに広がる。
しかし、そんな轟音よりも先に温かいものが僕を包んだ。
ほんの少しの静寂。そしてすぐ抱きかかえられ、ベッドに座らせられる。
四角い眼鏡をかけた男の子だった。
「怪我は?痛いところは?」
僕の顔を見るや否やそう質問を投げかけてくる。真剣な表情をしていた。
「あ…あ、ああ…」
震えてうまく声が出せない。自分の頬を涙が伝うのがわかる。
どうしようもなく時間だけが過ぎていく。
少しも動かなかった男の子が突然、僕を抱きしめ優しく背中をさすってくれた。
男の子のことはまだ怖かったけれど、それ以上に温もりを感じられて安心した。
だんだんと呼吸が楽になり、涙も引いてくる。
少しして、やっと言葉を紡ぎだすことができた。
「ご、ごめ…なさ、ごめんなさい、」
たどたどしいけど、今の僕にはこれが精いっぱいで
「こわしちゃ…ごめ、なさいっ」
「あれは、、あれはいい。怪我はないのか。」
本当は大切なものであろうことは僕にも分かった。
「ない、ないよ」
言い終わるか言い終わらないかの内に男の子は僕から離れ、ちらりと大破した模型を見て僕の足に触れた。
「…痛むところはあるか。」
「えっないよ、だいじょ」
『大丈夫』と言いかけた僕の言葉を遮り男の子が言う。
「大丈夫なわけがあるか!!これだけ裂けていて怪我はない、痛みもないなど通じると思っているのか!?」
突然怒鳴られ、ビクッと全身が震えた。
大きく肩を震わせ、涙ぐみだした僕を見て、男の子はハッとしたような顔をした。
「あ…すまない。怖がらせるつもりはなくてだな、その、、、」
言葉に詰まっているようで、それ以上の言葉は出てこない。
「……とりあえず手当をしようか。染みて痛いかもしれないが我慢してくれ。」
男の子は立ち上がり、机の引き出しを開いて何かを探し始めた。
その間に僕は、男の子に触れられていた左足を確認する。
そこには、ふくらはぎの中ほどから足首までぱっくりと裂け真っ赤に染まった、大きな傷があった。
「ひえッ」
思わず声が漏れる。
「見るんじゃない。」
そう男の子に言われ、すぐに目を背けた。
見聞きするだけで痛くなるような大怪我がそこにあった。それなのに痛み一つ感じない。
そんな自分に恐怖を覚えた。
「とりあえず、そのまま安静にしていろ。」
応急処置を済ませ、散らかった模型を片付けながらそう言う。
怒っているのか呆れているのかよく分からなかった。
怖いけど、勇気を出して話しかけてみる。
「…ね、ねえ。」
返答はない。
「あの、お父さんに言いに行ったほうがいいんじゃないかな…。」
男の子は一瞬ピタッと動きを止めたが、またすぐ作業を開始した。
数秒か数分かの沈黙の後
「呼ばれるまで、下に降りちゃだめだ。」
ぽつりとそう言った。
なんでかは聞けなかった。
「そう、なの?やっぱり、お仕事大変だもんね…ごめんね。」
少しして、大方の片づけが終わったようだった。
頃合いを見計らってずっと聞きたかったことを尋ねる。
「ねえ、名前…なんていうの?僕はイタリアだよ。」
男の子は僕に背を向けたまま答えた。
「……ドイツ。」
少々ぶっきらぼうに聞こえるが、今の僕には十分で、
ドイツ。ドイツ…ドイツ君。
心の中で反芻する。
名前を教えてくれた!名前を知れた!
それだけでとても嬉しかった。
「あのっ、ありがとう!名前、教えてくれて!」
彼は振り返り、少し驚いたような顔をしたがすぐ顔を背ける。
「僕、君のお友達になれるかな、?」
正直まだ怖いけど、仲良くなりたいと思った。
「無理だ。一生を懸けても。」
そんな、冷たい返事が返ってきた。でも、僕はもう一つ仲良しの証拠のことばをしってる。
「そっか。じゃあ、’こいびと’は?」
「こ、恋人?…は?」
お父さんが言っていた。こいびとっていうのは一緒に居てうれしかったり楽しかったり、辛いことも乗り越えたりできて、幸せな気分になれる大切な相手なんだよ。って。
それってお友達と一緒だと思う。
…僕にはお友達ができたことないから、完璧にはわからないけど。
「お前、意味わかって言ってんのか?」
本当の意味なんて知らない。誰も教えてくれはしないし、、。
「お友達と一緒でしょ。あと、”イタリア”ね。」
ドイツ君は数回瞬きをすると大きくため息を吐いた。
どうやら僕の考えは間違っていたみたい。彼の反応を見ればわかる。
「…イタリア、1つだけ言うとしたら、お友達と恋人は違う。」
「1つだけじゃなくて、何個でも言っていいよ。」
僕の言葉に出かけた言葉を飲み込んだ彼は、短く息を吐き、
「イタリアはどっちがいい?」
そう尋ねてきた。僕にはお友達とこいびとの違いが分からないから、どっちがいい?なんて答えられるわけない。
ドイツ君は僕とお友達にはなれないって言ってた。
だけど、こいびとにはなれないって言ってない。
それじゃあ、、
「こいびとがいい!」
それを聞いたドイツ君はさっきより目を丸くした。
「いいのか、そっちで」
「だってさっき、お友達にはなれないって。」
「あ、、、いや、そうだが、、」
「だめ?」
「いや、、、構わない。」
「やった!」
「イタリア」
ドイツ君は真っすぐ僕を見ていった。
「君が言葉の意味を理解できたとき、もう一度お友達がいいか恋人がいいか聞く。」
「…?うん。」
こいびとって、何回も確かめるようなものなのかな?
それとも大人になったらわかるんだろうか。
「ねえドイツく」
『イタリアー!』
「あ、お父さんだ!じゃあねドイツ君!!」
「…ああ」
また来るまでに、いろいろお勉強しないと、!